「コバンザメ作戦」と採る日銀が演出する「過剰な景況感回復報道」

世界中で相次いで景況感を示すDI(Diffusion Index)が発表された。

まず日銀が発表した6月の日銀短観。足元で大企業製造業の業況判断指数(DI)が前回3月調査から15ポイント悪化のマイナス9に転落するなど軒並み業況判断DIがマイナスとなる一方、先行きは大企業製造業がプラスを見込むなど企業の景況感は改善方向となっている。

続いて世界第2位の経済大国の中国。中国物流購買連合会が発表した6月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.9と、5月の52.0から低下。景気の拡大・縮小の分岐点である50は28カ月連続で上回ったものの、2009年2月以来の低水準に落ち込んだ。

さらに、マークイットが発表したユーロ圏PMI生産指数は52.0と、前月の54.6から低下。欧州の牽引役である独仏両国でもPMI指数は低下し、ユーロ圏全体としては2009年12月以来の低水準となった。

そしてトリを務めたが米国。米供給管理協会(ISM)が1日発表した6月の製造業景況指数は55.3と、前月の53.5から予想を上回る拡大を示した。

これら一連の景況感指数に対する日本国内での報道は、なかなか興味深いものであった。

まず日本経済に関しては「東日本大震災の影響で足元の企業景況感が悪化する一方で、サプライチェーン(供給網)寸断などを比較的短期間でこなし、秋口にかけて急回復するとの見通しを裏付けた」とポジティブな内容。
一方、中国経済に対しては「年後半にかけて減速が続くとの見方が出て来た」、ユーロ圏経済についても「財政問題を抱える南欧での内需低迷が欧州北部のドイツなどの生産減速につながっている」、米国経済に関しても「4月まで4ヵ月連続で60を超えていたのに比べると、生産はやや勢いを失っている」と、総じて慎重な判断となっている。
これらの判断に基づいて、「景況感が回復に向かう見通しが示された」日本経済回復に関するリスク要因は、「世界経済の減速や電力不足、消費低迷にある」という結論が導かれている。

こうした国内報道は、足下では日本が世界で一番景気回復期待が高いような印象を与えるものである。しかしこれは、先月IMFが発表した「世界経済見通し(改定見通し)」で示された世界経済の構図とは全く正反対のもの。IMFが示した2011年の経済成長率は、米国プラス2.5%、ユーロ圏プラス2.0%成長、中国プラス9.6%に対して、日本はマイナス0.7%と唯一のマイナス成長見通しになっており、全世界が4.3%成長する中で日本が世界経済の足を引っ張る格好になっている。

こうした国内報道と世界経済の実態が大きく乖離しているところに、景気変動の大きさや幅とは直接的には無関係であるDI(Diffusion Index)で議論することの危険性と、日銀の邪な姿勢が現れている。

日本でも景気動向指数による景気判断は、景気変動の大きさやテンポ(量感)を現すCI(Composite Index)を使う様になっている。因みにCIで表された日本の景気動向先行指数(2005年=100)は4月速報値で96.2と、2005年の水準すら回復していないことが示されている。

景気判断をDIからCIに切り替えて来ている中でのこうした日銀短観DIに基づいた「過剰な景況感回復報道」は、先月14日の金融政策決定会合で、景気の現状に対する判断を「持ち直しの動きも見られる」として3か月ぶりに上方修正し、景況感の回復を大きくアピールする必要があった日銀の意向を反映したものなのだろう。
日銀の景気判断の正当性を演出するために、国内報道は「世界で唯一のマイナス成長国である日本のリスクが、9.6%成長が見込まれている中国や米国の景気減速にある」というおかしな構図になってしまった。

確かに、日銀引受けや量的緩和等検討可能な追加金融緩和政策を拒み、世界経済の成長に便乗して景気回復を図る「コバンザメ作戦」をとりたい日銀にとっては、世界経済の減速は最大のリスクなのだろう。しかし、日銀短観のDIに基づいた「過剰な景況感回復報道」を演出し、追加金融緩和政策の必要性の低さをアピールすることで、自らの「コバンザメ作戦」を正当化しようとする中央銀行の姿勢には疑問を抱かずにはいられない。

無責任さと政策対応の遅さで世間から批判を受けている菅内閣の陰に隠れているが、早川総裁率いる日銀の無策と対応の遅さも相当のものがある。政治・経済の両面で無策ぶりと対応の遅さを発揮するリーダーを担いでしまっている日本経済が、本当に「秋口にかけて急回復」を見せることが出来るのだろうか。国内の「過剰な景況感回復報道」は、日本経済のリスクが、世界経済の減速よりも、能力に欠けるリーダーを担いでしまっているところにあることを示唆するものでもあった。



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