日米欧で少しずつ中身の異なる「債務問題」

日米欧で、「国債(債務問題)」が大きな焦点になっている。

欧州での焦点はギリシャ国債の「デフォルト」。先週末のEUサミットでギリシャへの追加支援策が纏まり、ECBがその政治的救済案を受け入れることを示唆したことで、焦点は「デフォルトの定義」に移って来ている。格付け機関は今回の追加支援策が実行されればギリシャを「制限的デフォルト」に格下げする方針を明言しているが、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)が、ギリシャ救済への民間の参加は「明示的に自発的」であるという理由から、民間債券保有者の参加は同国債を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の決済を引き起こすものではないとの見解を示したことで、金融市場への悪影響は限定的なものに留まる方向に向かい始めたようだ。

民間(銀行)が「自発的に」債務再編に応じたのは、2003年にウルグアイがデフォルトする前に債務再編が実施されたケースでは、債権者の損失は8%だったのに対して、デフォルト後に実施されたアルゼンチンの債務再編では、国債の保有者は投資額の約75%を失ったとするIMFの研究結果も考慮したからだろう。
ギリシャ債の交換と買い戻しに応じる銀行は、財政危機の欧州全体への拡大を回避するために「自発的に」ギリシャへの債権を21%減らすことに応じたわけで、実際には「デフォルト」でありながら、金融市場の定義上では「デフォルト回避」というのはその御褒美。

ただし、定義上でのギリシャ「デフォルト回避」が出来たとしても、ギリシャを中心とした国々の資金調達が困難な状況に変わりはなく、欧州の債務問題は中長期的な課題として温存されることとなった。

一方米国では、債務上限引き上げ交渉が難航。25日の東京市場が開くまでに合意が得られるかが最大の焦点となっている。

米国の債務残高は巨額ではあるものの、金融市場での資金調達に全く問題がないところが、同じ「デフォルト」でも欧州と根本的に違うところ。今月実施された米国債の応札倍率は、30年債入札(発行額130億ドル)が2.80倍(過去10回の平均2.64倍)、10年債入札(発行額210億ドル)が3.17倍(過去10回の平均3.11倍)、3年債入札(発行額320億ドル)の応札倍率は3.22倍(過去10回の平均3.14倍)と、いずれも過去10回の平均を上回る好調な結果となっている。

こうした資金調達に支障がない状況下で、政治的駆け引きで自ら「デフォルト」を選択することはない、というのが金融市場での常識的な見方。

しかしながら、WSJは「共和党の各候補者と新人の下院議員が執着しているのは、両党が協力することを希望する一般的な有権者ではなく、予備選で投票してくれる、特定の思想を持つ有権者である。そうした有権者の多くは、債務上限の引き上げを望んでいない。
なぜ望まないのか?ここからは5番目の根拠になるが、妥協不可避論は、有権者が債務上限とは何であるかを理解しているとの想定に基づいている。しかしそのような想定は、ほぼ確実に間違っている。
多くの国民は、債務上限の引き上げとは、現在および以前の議会が既にためてきた請求書の支払いを認めるということではなく、新たな支出を認可することだと誤解している」と、ポピュリズムの台頭が問題を複雑化していることを指摘している。

ポピュリズムが問題となっているのは日本も同様。日本と米国の違いは、日本では首相自らが政権延命を目的にポピュリズムを煽っている点。日本でも「特例公債法」が政治的な焦点となって来ているが、「デフォルト」や「資金調達」の心配がない日本では、菅首相退陣3要件の一つとして注目を浴びているのが実情。従って、金融市場への影響という面では日米欧の中で最も低い。
是非はともかくも、現実として震災復興に必要不可欠な「特例公債法」を自らの延命に使うという首相の非常識が何処まで通じるのかが焦点。ポピュリズム旋風が巻き起こっている日本では、「政治家の常識」が問われている。




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近藤駿介

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