マスコミが悪役に仕立て上げる、かつての「上げ潮派」

財政再建において、増税に頼らず、イノベーションや金融緩和などによる経済成長に伴う税の自然増収によってプライマリーバランスの黒字化の達成を目指す「上げ潮派」。少し前までは、増税によって財政再建を目指す「財政再建派(財政タカ派)」の対抗勢力だった。しかし、「上げ潮派」は国内ではいまや死語と化し、「増税反対派」という新たなレッテルの下、今ではマスコミの批判の対象となっている。

28日付日本経済新聞の「復興財源 民主で異論噴出」という記事では、菅首相が目指す今後5年間で10兆円の臨時増税論に民主党内で反対論と反発が相次いでいることを、「『ポスト管』をにらむ勢力と、次期衆院選を懸念する議員たちの声が大きく、欧米では世界的な問題となっている財政赤字の観点からの議論はなかった」と「増税反対論」に批判的な論調で報じている。そして、「日本の民主党は増税に反対し、歳出増には積極的だ。金融市場や世界経済への影響には無頓着な議論に、経済官庁では『かつての責任政党では考えられない姿だ』との諦観が漂う」と厳しく論評をしている。
ご丁寧にこれまで批判の標的にしてきた官僚の言葉まで持ち出して来たところをみると、日本経済新聞は「増税反対論=落選に怯える議員による無責任論」という世論を煽ろうとしているかのようである。

「増税反対論」を悪玉に仕立て上げ、持論の「増税による財政再建=善」を際立たせる演出の仕方は、市民運動家のやり方そのものである。こうした手法は市民活動家出身の首相の専売特許でもあり、既に国民の支持を失った手法である。

また、「増税反対論=悪」「増税による財政再建=善」と白黒を決め付けるようなデジタル論争は、小泉政権時の郵政選挙や、「小沢=悪、菅=善」とした民主党総裁選挙を通して、日本社会に無用な損失を与える不毛の論争であることは明白になっている。日本を代表するマスコミは、こうしたデジタル論争の不毛さを忘れてしまっているのだろうか。

そもそも、「増税反対論」と「増税による財政再建派」では、その目標が微妙に異なっている。「増税反対論」の目標が「デフレなき景気回復」という「景気」であるのに対して、「増税による財政再建派」の目標は「財政再建」そのものである。こうした目的が必ずしも一致していない議論を、「善、悪」でデジタルに区切ることは出来るはずもない。「増税による財政再建派」の目的が「デフレ経済下の景気低迷」と「景気」そのものであるのであれば話しは別であるが…。

日本経済新聞はこの記事の中で「執行部が党内の反乱にあう構図は債務上限引上げで揺れる米共和党も同じだが、共和党は『小さな政府』を標榜し、増税と歳出増には慎重なのが伝統的な方針である」と指摘している。
「増税による財政再建派」で占められた政府によって、「政府主導」で出された復興基本方針に対して、与党内から反対論が出るのは「民主主義」なら当然のこと。それを「反乱にあう」と表現するこのマスコミに、中国の言論統制や、原子力分野の御用学者を批判する資格があるのか疑わしい限りである。

また、確かに米国の共和党は「小さな政府」を標榜しているが、米国は金融面では「大きな中央銀行」を容認している。つまり、米国は「小さな政府+大きな中央銀行」という構図で「財政」と「金融」のバランスがとられ、曲がりなりにも「デフレなき景気回復」を果たしている。

これに対して、「金融」面で「小さな中央銀行」に固執する中央銀行を抱え「デフレと景気低迷」に喘ぐ日本。「財政」の面でも「小さな政府」を目指したら、「小さな政府+小さな中央銀行」という「最強の縮小均衡シフト」が完成することになる。

政府(財政)と中央銀行(金融)の組合せは、その国の置かれた状況や、政治経済情勢によって変わって来るもので、どれが絶対的に正しいというものではない。平時であるならば「小さな政府+小さな中央銀行」は望ましい姿かもしれないが、長期のデフレ経済で疲弊した現状の日本にとって最適な姿だとは言い切れない。民主主義であれば、「財政」と「金融」のバランスに対して様々な意見が出てくるのは当然のことなのである。この民主主義においての当然の行為を、自らの持論と異なるという理由でマスコミが「悪」と決めつけるのは、あってはならないことだ。




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近藤駿介

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