2011/09/14
「僅か2日で選出された首相」が、「僅か4日の臨時国会」で行った「僅かな内容」の所信表明演説
「僅か2日で選出された首相」の決断は、「僅か4日の臨時国会」というものであった。その「僅か4日の臨時国会」で行われた野田首相の所信表明演説は、「所信表明演説」というよりも「立候補者の立会演説会」のような、言葉だけが踊る「僅かな内容」であった。
「国家の危機」を力説しながら、その「国難」を乗り越えるためのビジョンは示さず、勝海舟の言葉も借り「正心誠意」を強調することで野党に「低姿勢」を貫き、ただただ野党に「逆転国会」での協力を呼びかける首相の姿は、一種異様な光景。「国難」を、「強いリーダーシップ」ではなく、「低姿勢」による「妥協」で乗り切ろうとする姿勢は、国民の期待からは大きくかけ離れたもの。
野田首相は「政治に求められるのは正心誠意の4文字があるのみ」と力説して「善人」ぶりをアピールしたかったようたが、「正心誠意」が求められるのは「政治」にではなく「政治家」個人に対してである。「政治」、特に「内閣総理大臣」に求められるのは、「ビジョン」であり、それを実現するための「リーダーシップ」以外にない。
全体として「僅かな内容」であった所信表明演説の中でも内容が寂しいのは、「大胆な円高・空洞化対策の実施」の部分。「わが国が産業の空洞化を防ぎ、国内雇用を維持していくためには、金融政策を行う日銀と連携し、あらゆる政策手段を講じていく必要があります。まずは、予備費や第3次補正予算を活用し、思い切って立地補助金を拡充するなどの緊急経済対策を実施します」と高らかに謳っているが、「思い切って立地補助金を拡充する」という「補助金政策」が、本当に日本の産業の成長戦略の要なのだろうか。
「農業」に関しては、国が行って来た長年の「補助金政策」によって国際競争力が失われたという指摘が一般的になされている。「農業」分野で国際競争力を失う要因だと指摘されている「補助金政策」が、「産業」分野で国際競争力を保つ重要な政策であるとするところに違和感を感じずにはいられない。
「補助金から規制緩和」に軸足を移して行くことを求められている「農業」と、「規制緩和から補助金」に軸足を移す「産業」。このような一貫性のない政策で、本当に日本の国際競争力が高まり、産業の空洞化を防げるのだろうか。
そもそも産業の空洞化が喫緊の課題となっているのは、無策な政府と日銀が、円高を放置して来たからである。「金融政策を行う日銀と連携し、あらゆる政策手段を講じていく必要があります」という認識を持ち合わせているのであれば、金融緩和が足りないとの批判について「マネタリーベースの対GDP比」などという無意味な指標を持ちだして「明らかに事実に反している」などという「不毛な議論」を吹っ掛けるのではなく、直ぐにでも「相対的に大規模な量的緩和」を実施し、資金供給面からの円高圧力をまず抑制するべきである。円高を放置すればするほど、「補助金政策」の規模も拡大してしまい、税金を無駄に使う破目に陥ることになるのだから。
「経済成長と財政健全化の両立」においては、「声なき未来の世代に、これ以上の借金を押し付けてよいのでしょうか」と如何にも演説上手を自負する首相らしい表現を用いて「財政再建原理主義」の本性を剥き出しにしている。
「声なき未来の世代にこれ以上の借金を押し付けてよいのでしょうか」と強調する野田首相は、「現世代にある『反財政再建原理主義』という『声なき声(サイレントマジョリティー)』を無視し、マスコミを駆使して『財政再建原理主義』の教義の浸透を図り、現世代に増税を押し付けてよいのだろうか」ということには思いが巡らないようである。
復興財源は「次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う」と力説し、改めて「財源論=責任ある政治」かのような歪んだ思想の浸透を図っているが、「復興ビジョン提示なき財源論」ほど無責任な議論はないはずである。
そもそも、復興によって生み出される新たな社会インフラは、「声なき未来の世代の資産」でもある。「声なき未来の世代」と「今を生きる世代」両世代の「資産」に対する財政的負担を、「声なき未来の世代」と「今を生きる世代」両世代で公平に分担するのは至極当たり前の考え方ではないだろうか。
「次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う」という主張を繰り返して聞けば聞くほど、野田内閣は「声なき未来の世代の資産」にならないような無駄な箱モノに税金を投入しようと考えているのではないかという疑念も高まって来る。
日本が国内でこうした「不毛な議論」に時間を費やしている間に、日本の国際的地位は大きく揺らいで来ている。
週明け12日の米国金融市場は、イタリア当局が中国の政府系ファンドにイタリア国債の売却などを打診しているとの英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道を受け株式市場は反発。NYダウは引け前の45分間で200ドル以上上昇するとともに、為替市場ではユーロが下げ渋り、「世界同時株安の連鎖」「ユーロ急落」に一旦はブレーキが掛かった格好。
「世界同時株安」「ユーロ急落」にブレーキを掛けたのは「中国」。
今年1月に欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の初回発行債(50億ユーロ)の20%以上を買い入れたことに加え、「重要かつ安定的投資家」 としてEFSFが発行する債券を今後も購入する計画を表明した日本が、「為替市場の投機的な動きには、今後も介入を含めた『断固たる措置』を取る方針を欧米当局に伝える」ことに固執し、ガイトナー米財務長官の失笑をかっている間に、中国は国際社会にその存在を強く印象付けた。
中国国家発展改革委員会の張燕生研究員は、「中国の政策担当者は債務危機の『ドミノ効果』を阻止する必要性について『国際的な文脈』で考えている」と説明。「イタリアが破綻すれば、欧州全体が倒れ、ひいては世界と中国経済が打撃を受ける恐れがある」と述べた。
「国際的な文脈」の中で国家戦略を描き、「世界同時株安」と「ユーロ急落」が進む局面で国際社会に「救世主」として現れ自国の存在を強烈に印象付けた中国と、「欧州財務危機」に対して中国と同様の貢献を表明しているにも関わらず、「内向きの思考」で自国の円高懸念だけを国際社会に訴え続け失笑をかった日本。
「世界第2位の経済大国」と「世界第3位の経済大国」の経済規模の差はまだ僅かではあるが、「政治面でのしたたかさ」に関しては、既に大きな差が付いてしまったことを印象付ける出来事であった。
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