2011/10/16
世にも恐ろしい組合せ ~「駅前演説」から進歩しない首相と、「国際公約」をでっちあげる「素人財務相」
この方は、全く進歩していないようだ。野田首相は15日、民主党の全国幹事長・選挙責任者会議に出席し、「昨日、資産公開がございました。歴代(首相)で1番少なかったと」、「お金はないけれど、されど志あり。資産はないけれど、全国によき同志あり」と、満面の笑顔でお得意の「駅前演説」を披露した。
「歴代(首相)で(資産が)1番少なかった」という「自虐ネタ」で「庶民派の良い人」を演出し、「お金はないけれど、されど志あり。資産はないけれど、全国によき同志あり」という誰も真剣に耳を傾けない「駅前演説」で培った空虚なフレーズで「弁が立つ」印象を与えようとする構成は、この2カ月足らずの間で聞き飽きたもの。
野田首相は、無名の候補が辻立ちで求められる演説能力と、首相になった後に求められる演説能力とは、全く次元が違うことを自覚していないようだ。
無名の候補に求められるものは有権者に印象を植え付けることであるが、首相に求められる演説能力は、意味のない「フレーズ」ではなく、ビジョンを示し、国民に納得感を与えることである。
「お金はないけれど、されど志あり」というが、野田首相の政治的「志」が何なのか理解している国民は皆無に近い筈である。伝わって来るのは「志なき増税路線」を突っ走っていることだけである。
「資産はないけれど、全国によき同志あり」と言うが、14日に時事通信社が発表した10月の世論調査結果によると、野田内閣の支持率は前月比7.9ポイント減の42.2%、不支持率は同9.5ポイント増の26.8%と、完全に「ドジョウの皮が剥げた」上、政党支持率も自民党15.4%に対して民主党12.1%と、9月(自民党13.6%、民主党12.4%)から差を広げられ、「全国のよき同志」は野田首相を見限り始めていることが明らかになっている。
何の成長戦略も国民に示すことが出来ず、ただ「将来の世代に借金を残すことは避けなくてはならない」と呪文のように繰り返すだけでは、国民を納得させることは難しい。「お金はないけれど、されど志あり。資産はないけれど、全国によき同志あり」という空虚なフレーズを披露して悦に入っていた首相は、民主党の全国幹事長・選挙責任者に地元の有権者に何を伝えて欲しいと思っていたのだろうか。全く「志」が伝わって来ない。
野田政権の懸念材料は、「全く進歩を見せない首相」だけでなく、「暴走する素人財務相」も同じ。
安住「素人財務相」はG20財務相・中央銀行総裁会議で、消費税率を5%引き上げるための関連法案を来年の通常国会に提出すると説明し、日本の財政健全化の取り組みに理解を求めた。増税と同時に社会保障費の抑制を進め、基礎的財政収支の赤字を2015年度に10年度比で半減、20年度に黒字化することも併せて表明し、消費税5%の引き上げを勝手に国際公約にする暴挙に出た。
大体G20各国のどの国が日本の財政健全化の取り組みに不信の念を抱いていたというのだろうか。
IMFによる2011年の日本の公的債務残高対GDP比(gross debt)推計値が233%と世界で突出して高いという異様な状況にあることは確かである(因みに、資産を引いたnet debtの対GDP比は約130%)。しかし、95%が国内で消化されている日本国債が、例えデフォルトしたとしても、それが世界経済に与える直接的影響が限定的である。それ故に日本は世界各国から財政再建を強制されることがないのである。
世界のどの国も日本の財政健全化の取り組みに不信を抱いていないにも拘らず、わざわざG20財務相・中央銀行総裁会議で、消費税率を5%引き上げるための関連法案を来年の通常国会に提出すると説明し、日本の財政健全化の取り組みに理解を求めるなどというのは、信じ難い暴挙である。
勝手に消費税率5%引上げを「国際公約」にでっちあげることで、国内及び与党内の消費税増税反対派を、「国際公約を守らない国賊」に仕立て上げようとしている下心が見え見えである。
民主党は、「民主党の政権政策Manifesto2010」の中で、「名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長」を大々的に掲げている。しかし、実際の日本の名目GDP成長率は、2010年10‐12月期から2011年4‐6月期まで3期連続のマイナス成長であるうえ、マイナス幅も▲3.9%、▲5.8%、▲6.0%と拡大しており、完璧な「Manifesto違反」状況にある。
【参考】⇒ 僅か4年足らずの間に消費税20%強に相当する付加価値を失った日本経済 ~ それでも増税を目指す
「民主党の政権政策Manifesto2010」で「国民の生活が第一」と謳う民主党が、「国際公約」をでっちあげてまで、何故消費税増税をしたいのか。でっちあげられた「国際公約」よりも、国民に約束した「Manifesto」の方を優先するのが「正心誠意」「責任ある態度」のはずである。
国民は野田政権にこう問うべきである。「本当に増税したいのか。本当に増税したいのか。本当に増税したいのか。それなら名目GDP成長率を3%超にした方が良いよ」と。
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