日本経済新聞が歪めて報じる、G20「雇用と成長のためのカンヌ行動計画」

G20も雇用統計も、ギリシャの「信任投票」によって、すっかり霞んでしまう格好となった。

ギリシャでは何とかパパンドレウ内閣が信任され、不信任で解散・総選挙に追い込まれ、金融市場の大混乱を招くという最悪の事態は免れた。まだ、パパンドレウ首相の去就等ギリシャの政局は今後も混迷が続くと思われるが、世界経済にとっての関心は、「包括戦略的合意」が反故にされる可能性の多寡であり、ギリシャの政局自体は大きな問題ではない。パパンドレウ首相の辞任といった条件付きながらも、与野党が「包括戦略的合意」を受け入れる方向にあることを考えると、ギリシャ問題は大きな山を越えたと言える。

問題は、今回のギリシャのドタバタ劇によって、G20の最重要課題でもあった欧州金融安定ファシリティー(EFSF)拡充問題が進展しなかったこと。ドイツのメルケル首相によると「EFSFに協力する用意を表明した国はほとんどなかった」。欧州の「白馬の騎士」になると目されていた中国も、「具体的な計画はまだなく、こうしたツールへの追加投資について話すのは時期尚早だ」と、現段階でのEFSF拡充に協力する姿勢は見せなかった。

EFSFの拡充が進まなければ、債務危機がギリシャ以外に波及した場合、資金的な面で公的支援が不可能となる。欧州の債務危機に特効薬が存在しない中でEFSFの拡充が進まないということは、若い女性が無法地帯を丸腰で歩くようなもの。何時マーケットの標的にされてもおかしくない。

独仏に次ぐユーロ圏3位の経済力を持ち、ギリシャの約7倍の経済規模があるイタリアが、財政再建を確実に実施するため、IMFとEUの監視という主要先進国としては極めて異例な措置の受入れに追い込まれたのも、EFSF拡充策が実現するまでの間、債務危機がイタリアに波及するのを絶対に阻止する必要があったため。イタリアにとって、ギリシャのドタバタ劇の代償は、とても高いものとなった。

今回のG20で異例であったのは、「2016年までに世界のGDPを1.5%上積みし、2000万~4000万人の雇用を生み出すことが可能だ」とIMFが試算をしたとされるG20各国が提示した「行動計画」の中身が殆ど報道されていないこと。

日本経済新聞は、「成長と雇用のためのカンヌ行動計画」の中身を、世界経済の成長持続のための「財政再建策」であるかのような報道をして、「日本は2010年代半ばまでに段階的に消費税を10%まで引き上げる」ことを明言し、これを「国際公約」とした、等と大騒ぎしている。しかし、「日本は近年は民間需要が相対的に弱い」と指摘しているとされる「成長と雇用のためのカンヌ行動計画」の合意内容が、「消費税を10%まで引き上げる」という成長を妨げる政策である筈がない。

日本経済新聞は「米国が今後10年間で合計4兆ドルの財政赤字削減を事実上の国際公約として位置づけた」としているが、CNNは「米国は、政府投資、税制改革、雇用創出計画を通じて景気の下支えをすることで合意。同時に、米政府は『中期的財政再建』計画の下、財政赤字と政府債務の削減にも取り組む」と、米国が「合意」したのは「政府投資、税制改革、雇用創出計画を通じて景気の下支えをすること」だと報じている。CNNの報道を読む限り、「財政赤字と政府債務の削減」が「事実上の国際公約」である、という日本経済新聞の見解はかなり飛躍したもの。

「財政再建原理主義者」である日本経済新聞は、何としても「財政再建」が国際社会の流れであるというように、国民を洗脳したいのだろう。しかし、ECBの利下げや、FRBが更なる「量的緩和」の可能性を示唆するなど、ここに来て国際社会は欧州の一部の国を除いて、明らかに「景気重視」に軸足を移して来ている。

こうした国際社会の流れなど目を向けず、盲目的に「増税路線」を突き進む野田内閣。こうした「KY国家」が要求する「協調介入」などに理解を示してくれる国などあろうはずもない。

前回、9月にマルセイユでガイトナー財務長官と会談し介入への理解を求めた際に、「(ガイトナー財務長官は)笑ってました」と発言した「素人財務相」。今回の日米財務相会談でのガイトナー財務長官の反応については明言を避けた。明言を避けたのは、ガイトナー財務長官の反応が「笑ってました」以下だったことを感じさせるもの。

世界が「成長と雇用」に向けて国際協調を模索するなかで、我関せず「成長を犠牲にしてまで増税による財政再建」を目指す日本。「外需拡大」による成長を目指す世界各国の目に、「国際協調の出来ない国」と映ったとしても不思議ではない。野田内閣の「KY政策」によって、「日本のガラパゴス化」は加速しているようだ。
【参考】⇒「景気下振れリスク」に政策の軸足を移す国際社会に「ドジョウ総理」が示す「景気下振れリスク」を強める「国際公約」
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