国難~日本市場はTPP参加国の草刈り場になる

「国益を損ねてまで交渉参加することはない」と野田総理が国会で答弁する中、日本経済新聞は「TPP 攻めの開国」という特集記事で「日本の交渉参加表明を呼び水に、カナダ、メキシコも協議入りに動き出した。世界経済の4割を占める巨大経済連携が実現すれば、世界の自由貿易体制は新段階に入る、日本は後戻りできない」と、国益に関係なく参加すべきというようなお得意の高飛車扇動記事の連載を開始した。

「日本の交渉参加表明を呼び水に、カナダ、メキシコも協議入りに動き出した」というが、米国、カナダ、メキシコは「大部分の北米産品の関税を協定発効後直ちに撤廃」している北米自由貿易協定(NAFTA)構成国。

カナダはかつて乳製品、鶏肉の貿易に障壁があるとして、米国にTPP参加を拒否した経緯がある。しかし、米国と異なり乳製品や鶏肉の輸出国でない日本のTPP参加は、米国製、メキシコ製の日本車など工業製品に既に関税がかかっていないカナダにとっては、TPPに参加した場合の輸入増によるデメリットよりも、対日輸出拡大によるメリットの方が明らかに高い。

「日本の交渉参加表明を呼び水としたカナダ、メキシコの協議入り」は、TPP参加国が日本を「市場を提供する国」と見做されていることを象徴する動きであると考えるべきである。国益を守る交渉力が乏しい「市場を提供する国」のTPP交渉参加表明が、カナダ、メキシコの目に「カモがネギをしょって来た」ような千載一遇のチャンスに映ったとしても不思議ではない。

野田総理はTPPのルール構築に向けて「主導的な役割を果たしたい」と意気込んでいるようだ。しかし、日米首脳会談後、米国が「首相はすべての物品とサービスを交渉のテーブルにのせると説明した」と発表したことについて、発言を否定して米国に訂正を求めながらも、米国が発表を訂正しないとの姿勢をとり続けることが分かると「訂正までは求めるものではない」とトーンダウンしてしまうような「へっぴり腰内閣」に、各国の国益が交錯するTPP交渉で「主導的な役割」など担えるはずはない。

日本経済新聞は「TPPは日本の思惑を超えて重みを増しつつある」と根拠不明の結論を導いているが、「へっぴり腰内閣」が交渉に当る限り「日本の思惑を超えて重みをます」ことよりも、「日本の思惑とは異なり、日本市場はTPP参加国の草刈り場になる」可能性の方が明らかに高い。

さらに野田総理は、米国以外のTPP交渉参加国と連携出来ることを前提に「米国のルールだけが押しつけられる環境ではない」という夢物語を繰り返している。しかし、夢と現実の区別がつかないリーダーが交渉責任者では「米国を含む日本以外の参加国全てに連携されて日本の国益を損なうようなルール作りが進められる」事態に追い込まれるリスクを強く意識せざるを得ない。

日本のマスコミは、TPPが将来的に広域の貿易協定に発展する可能性を口にしている。しかし、TPPのような地域限定の貿易交渉が行われるようになったのは、WTO(世界貿易機関)の加盟国拡大により、合意形成が困難になったからである。 こうした現実からを考えると、TPPのような地域限定的な貿易協定が、広域協定に拡大するという主張に説得力があるとはとても思えない。地域を限定する「排他的貿易協定」への参加が、果たして「開国」と言えるのだろうか。

野田総理は16日、「国難とも言うべき時に、民意をしっかり踏まえた十分な議論をしながら、与野党で合意形成することがまずは大事だ」と発言し、TPP参加交渉を争点とする解散・総選挙には反対する姿勢を示した。
野田総理が何を「国難」と定義しているかは不明だが、ビジョンなき「へっぴり腰内閣」がTPP交渉に前のめりになっていることは、明らかに「国難」である。
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