「視野狭窄総理」が導く「視界不良経済」

15日夜、暗闇で(首相公邸内の)柱にぶつけた「事故」に遭遇したという野田総理は、16日、2007年7月に白い巨大なガーゼと絆創膏を額と頬に貼った状態で登場した赤城農林大臣を髣髴させる眼帯姿で現れた。

どうでもいいことではあるが、夜の首相公邸内で、暗闇では手を前に出す習性を持つ人間が、暗闇の中といえども目を柱にぶつけたという説明は、額面通り受け取りにくいもの。首相公邸内に目をぶつけるような物を配置しておくというのは、「危機対応」が出来ていないことの証であり、一国の総理として恥ずかしい限り。

しかし、ご本人はそんなことなどどこ吹く風。眼帯姿で民主党の党大会に出席した野田総理は、来賓を紹介後「今日は『視界不良』なので、ご紹介漏れがあったら困るが」とお得意の「自虐ネタ」でおどけてみせた。

野田総理は「 視界が悪い」という意味で「視界不良」という言葉を使ったようだが、「視界不良」には「(将来・成り行きなどについて)展望が開けない・ 五里霧中 ・ 暗中(模索) 」という意味もある。 眼帯姿の野田総理の「視界不良=視界が悪い」は時間の経過によって自然回復するだろうが、多くの国民が抱える「視界不良=(将来・成り行きなどについて)展望が開けない」は、時間の経過とともに悪化する可能性を秘めている。

眼帯姿の野田総理は、党大会で「今、崖っぷちに立っているのは民主党ではない。日本と国民だ」とのたまわった。

全くその通り。至極ごもっともな指摘である。

しかし、その理由は、野田総理が考える消費増税を中心とした「財政再建原理主義」の教義が総理が期待するように国民に浸透しないことではない。消費増税慎重論やTPP参加慎重論など、自らの主張に沿わない意見を「不毛な政局談義」と決め付けてしまう視野の狭い、柔軟性を欠いた人物が日本のリーダーになってしまったからだ。

眼帯姿の野田総理の困ったところは、「事故」による一時的な「視界不良」ではなく、「視野狭窄」であることである。

ちなみに「視野狭窄」の意味は、「視野が狭い/(周囲を見る)余裕が無い/(他のことは)眼中に無い/硬直した(考え)/(強い)思い込み(から~)/(自分の殻に)閉じこもる/柔軟性の欠如/教条主義的(見方)/(一つのことに)とらわれすぎる」というものである。

自らの主張に沿わない意見を「不毛な政局談義」と決め付けてしまう野田総理。「視野狭窄」総理が「社会保障と税の一体改革をやり切ることなくして日本と国民の将来はない」という掛け声とともに「将来の世代に増税社会を引き渡す」ことに邁進する限り、国民は「視界不良」に追いやられる運命にある。

それにしても野田総理の「視野狭窄」は、日を追うごとに目に余るものになっている。

解散総選挙を求めている野党に対しても「101回でもプロポーズしたい」という謙虚な姿勢は捨て、「やるべきことはやって、やり抜いて民意を問うことをはっきり宣言したい」と応じ、消費税引き上げへ強い意志を示した。こちらは「君子豹変す」を有言実行した格好。

国会議員定数の削減や公務員人件費の削減、国会議員の歳費や政党交付金の削減などは、「やるべきこと」である。そして、重要なことは「やるべきこと」は消費増税の「条件」ではないということ。「やるべきこと」をやることと、「歳入の増加」は独立したものだからである。

「やるべきこと」は企業財務に例えれば、収入に頼らず「キャッシュフローを確保する」ものである。なぜ「キャッシュフローを確保する」かというと、確保した資金を「歳入の増加/将来の成長」の原資にするためである。仮に、向けるべく「将来の成長の糧」がないのであれば、確保された資金は「負債の返済」に使うことになる。

もし、「視界不良」の野田総理が日本の「将来の成長の糧」を見出せないのであれば、「負債の返済」に振り向けるのは至極当然のことである。しかし同時に、「将来の成長の糧」を見出せないのであれば、速やかに政権の座を見出せる人間に譲るべきである。

因みに、年金を中心とした社会保障費は、国にとって「国民に対する(将来の)負債」である。それ故、「やるべきこと」をやることで確保した資金を、単純に「負債の返済」に注ぎ込むだけでは日本経済の将来の成長には繋がらない。また、「国民の対する(将来の)負債」を返済するために、その国民から税を徴収(先取り)することが日本経済を発展させるなどという理屈が成り立たないことは、経済の専門家でなくても分かることである。

「財政再建原理主義者」の教義は、「社会保障の安定財源として消費税増税を実施」することである。消費税が「安定財源」として狙われるのは、消費税が「利益」に課税される税金ではなく、(消費額に基づいた)一種の外形標準課税であるからである。「利益」に課税する税金を財源にするならば、「経済成長」が極めて重要な要素となるが、(生きるために誰もが避けて通れない)消費額に基づいて課税するならば、「税率」を上げるだけで、少なくとも一時的にはた易く「安定財源化」出来るのだから。

本来、将来にわたって日本の財政を安定させるためには、「我が国の法人(261万社)のうち、利益を計上し法人税を納めている法人は3割程度であり、残りの7割の法人は欠損法人になっています」(財務省HP)という現状を変えていくのが本筋のはずである。

日本の財政を安定化させるために必要なことは、増え続けている「法人税を納めている法人は3割程度で、7割の法人は欠損法人」という状態を改善することのはずである。そのためには「日本の経済成長」が必要不可欠であり、これこそ「断固たる決意」で臨むべく政治課題である。

「日本の7割の法人が欠損法人」という「直ちに」解決が出来ない本質的な問題に目を逸らし、「直ちに」「容易に」「安定財源化」出来る消費増税に走る「財政再建原理主義者」の姿が、「責任ある政治」だとは思えない。

「7割の法人は欠損法人」という状況を放置し、「利益」に課税しない一種の外形標準課税である消費税を「安定財源」にするために税率を引き上げ続けるという「国の形」で、民主党がマニフェストで掲げる「元気な日本を復活させる」ことができるのだろうか。

民主党大会で「視野狭窄総理」は、大手格付け会社S&Pがユーロ圏の9か国の国債の格付けを一気に引き下げたことを受け「年末から欧州で不気味な風が吹いている。対岸の火事ではない。風と炎は日本列島にも届きかねない」と無用な「国債危機」を煽り、一層「財政再建原理主義」色を強めていく姿勢をしめした。

さらに、「日本の(長期)金利は今1%を割れているが、3%になったら予算は組めない、というくらい厳しい状況だ。そういうことを肝に銘じてやり抜く。一体改革をやらなければならない。私の政治生命をかけて、この国を守るため、未来に残すために、一体改革は貫いてやり抜く」と発言、「視野狭窄」症状がかなり進行していることを露わにした。

しかしS&P社によるユーロ圏一斉格付下げを受けた16日の債券市場は、リスク回避の動きから日本国債に資金が流れ込み、長期金利は一時2010年11月以来1年2か月ぶりの水準まで低下。「視野狭窄総理」の懸念が杞憂であるかのような反応を見せた。もちろん「財政再建原理主義者」の解釈は、「一体改革をやり抜く覚悟」を市場が評価した結果というものだろうが。

そもそも「3%になったら予算は組めない」のであれば、「1%を割れている」今この時期に必要な長期資金を調達しておくのが「賢明な財務戦略」のはずである。「1%を割れている」金利水準で資金調達をして財政赤字が増加するのだとしたら、それは「財務戦略が間違っている」のではなく「成長戦略が間違っている」ということである。

日本が目指すべき姿は、「負債を返済するための安易な増税で経済成長を犠牲にする」ことではなく、「必要な経済成長を達成するための知恵を絞り、実行することで財政再建を図る」というもののはずである。

日本経済が「視界不良」の中、「増税による財政再建」に邁進する「視野狭窄総理」。こうした「狂気の沙汰」が続けられる限り、「日本と国民の将来はない」。日本と国民は、「視界不良」のなか、まだまだ崖っぷちに立たされ続けることを覚悟しなくてはならないようだ。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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