宝くじ当選金高額化~「3億円」が「高額当選金」に見えない官僚が考える庶民離れした「宝くじ売上げ回復策」

2010年5月21日、当時民主党の看板事業であったの事業仕分けにより、「当該事業については廃止とする」とされた宝くじが、「さらに高額な賞金」にバージョンアップするようだ。

低迷する宝くじの売り上げ回復に向け総務省は、21日、くじ1枚当たりの金額の100万倍までと定められている1等賞金の上限を250万倍に引き上げる方針を決めた。総務省は当せん金付証票法改正案を通常国会に提出、3月末までの成立を目指す。これにより、2013年度以降、一般的な1枚300円のくじで1等賞金が7億5千万円、前後賞も合わせればさらに高額な賞金が実現する可能性が出て来た。

事業仕分けにおける「とりまとめコメント」には、「地方財政の一層の拡充のために、また宝くじに夢を持って楽しみに購入される方々の利益のために、天下りの方々の高額給与の問題、過度に豪華なオフィス、複雑な交付形態、無駄な宣伝広報事業、これらの問題が解決されるまでは、宝くじの認可権限者である総務大臣は宝くじの販売を認めるべきではないこととする。もしこのことを放置したまま宝くじの販売を認めるのであれば、政府として総務大臣としてしっかり無駄がないことをご証明いただきたい」と記載されている。

「仕分けの女王」も既に仕分けられ、殆ど国民の記憶に残ってはいないことではあるが、川端総務大臣に宝くじ事業に「無駄がないことを証明する」コメントを出す考えはあるのだろうか。

事業仕分けでは、宝くじの売上金1兆420億円(2008年度実績、以下同様)のうち、当選金4,762億円とほぼ同額4,178億円の「収益金」が都道府県と政令指定都市に渡っていることが明らかにされた。今回、総務省が「低迷する宝くじの売り上げ回復」に力を入れるのは、「収益金」を地方自治体、最終的には「天下りの温床」と批判される100以上の「国所管公益法人」に流すためであることは想像に難くない。

税金を直接「天下り先」に流すことに対する監視の目が厳しくなって来たことで、「庶民の夢」を拡げるかのように装うことで、「天下り先」の財源を確保しようとしているようである。国民受けするような耳触りのいいフレーズを使って国民の関心を逸らし、そのすきに裏で姑息な政策を実行する、如何にも野田政権らしいやり方である。

事業仕分けの際に投げかけられた疑問に全く答えずに宝くじ事業をバージョンアップさせるやり方もそうだが、「当選金の引上げ」が「宝くじの売上回復」に繋がると考える総務省の短絡的な考え方にも疑問を感じてしまう。

総務省が「当選金の引上げ」が「宝くじの売上回復」に繋がると考えているのは、宝くじの売り上げ低迷が、「低額な当選金」にあると判断している証左である。

しかし、「2011年のマンション分譲価格は首都圏平均で4,578万円、東京都区部で5,339万円」ということから考えると、マンションを5戸も購入可能な、現在の1等賞金の上限3億円は、「庶民」からしたら十分「高額当選金」だと言える。

東京都内にマンションを5戸も購入可能な「高額な当選金」の宝くじの売上が低迷しているのは、「当選金の多寡」以外に原因があると考えるのが「庶民感覚」である。

「当選金の多寡」以外の原因として考えられるのは、「確率的に期待し難い」という「論理的判断」と、「確率的に有り得ない3億円の夢よりも、目先の3,000円(10枚分)の節約が重要」という「切実かつ現実的判断」である。要するに、「現実」の前に、「夢を買う購買力」が失われたということ。

もしそうであるならば、「宝くじの売上回復」を図るためには、1等当選金を都内でマンションを1戸買える程度に落とす代わりに、販売価格を引き下げ、当選確率を2倍、3倍(1等当選金を5,000万円とすれば、1枚100円で、理屈上当選確率は2倍、1枚300円ならば6倍に出来る計算)にすることが賢明な策ということになる。

事業仕分けでは、「総務省OBらの天下り役員が2,000万円前後の年収を受けている」ことが批判の対象となった。OBですら2,000万円前後の年収を受けている総務省の現役官僚たちの目には、今の「1等当選金3億円」はそれほど「高額当選金」に映らないのかもしれない。しかし、「庶民の感覚」からは「1等当選金3億円」は十分「高額当選金」のはずである。

宝くじの売上が低迷している根本的な原因は、デフレの長期化によって国民の購買力が落ちていることの証明でもある。こうした経済状況を無視し、「当選金の高額化」によって「宝くじの売上回復」を図ろうとする総務省。総務省のこうした動きは、キャリア官僚には「デフレ経済の深刻さ」が伝わっていないことを明らかにするものである。

「デフレ経済の深刻さ」とは別世界に棲息する、「庶民感覚」からずれたキャリア官僚と、その神輿に乗るだけの野田政権に、「デフレ経済からの脱却」を期待するのは無理のようである。「デフレ経済からの脱却」を図るための第一歩は、野田政権の退陣、「隗より始めよ」である。
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