お役所的な規制強化の発想で「第2、第3のAIJ出現」を阻止できるのか

「88万人に影響が及ぶということで決して無視できない」

AIJ投資顧問の問題を受け、民主党が1日に設置した「年金積立金運用のあり方およびAIJ問題等検証ワーキングチーム(WT)」の座長に就任し、久しぶりに表舞台に出た蓮舫前行政刷新担当相はこの様に強調した。WTは、AIJと同様の問題の再発防止に向けた制度の見直しや年金運用の検証などで提言をまとめる。

WTの事務局長に就任した民主党の大久保政調副会長は「第2、第3のAIJが出てくる可能性もある」として早期に対応する必要性を強調するとともに、「問題は私募だ。実質的にアマチュアの投資家にリスクの高い商品を売っていたことが問題だ」と指摘。私募ファンドの開示強化を図ることで、情報開示の信頼性を高め、再発防止を図っていく考えを示した。

当然と言えば当然であるが、如何にもお役所的な発想と対応。

「情報開示」自体は「ソフトの入っていないパソコン」の様なもので、開示された「情報を有効に使える体制」が整わなければ何の意味もない。

2009年に、AIJの運用利回りは不自然に安定していると警告し、「日本版マドフ」と報じた「年金情報」編集長は、編集部関係者が日本の金融当局者ともこの懸念について議論したと述べている。つまり、監督官庁に「情報を有効に使える体制」が整っていれば、AIJのような悪徳業者が多額の資産を集め、ここまで事態を悪化させることは避けられたはずである。

投資顧問会社に情報開示を迫るよりも、監督官庁に「情報を有効に使える体制」を作ることの方が「第2、第3のAIJ」の出現を防ぐためにより効果的である。

同時に、AIJに資金を預ける年金基金側が「実質的にアマチュアの投資家」である状況を放置すれば、「第2、第3のAIJ」の出現を阻止することは難しい。これは、玄関先に財布をおいて玄関のドアを開け放ちながら空き巣防止の防犯パトロールをするようなもの。まずは、財布をしまい、玄関のドアを閉めて鍵をかける習慣を身につけることが防犯の第一歩である。

監督官庁が「情報を有効に使える体制」を整え、年金基金側が「実質的にアマチュアの投資家」を卒業すれば、AIJのような悪徳業者が付け入る隙は自然となくなって行く。

これまで開示されているAIJの情報は、いろいろな想像を湧き立たせる内容である。

AIJ投資顧問が当局に届けている第22期事業報告書(2010年1月1日から2010年12月31日まで)に掲載されている「契約件数等」と、投資顧問協会の投資運用会社要覧に掲載されている平成23年3月末現在の「契約資産状況」を比較すると、大きな変化がある。

それは、2010年12月末時点で2件、206,007百万円あった海外の契約資産が、3カ月後の2011年(平成23年)3月末時点では1件、23,095百万円へと激減していること。そしてその減少額は182,912百万円と、奇しくも2011年3月末時点での国内私的年金との契約金額186,133百万円とほぼ同額である。

AIJに資金を預けていた外国人投資家も「実質的にアマチュアの投資家」で、虚偽の情報を信じて1,800億円もの大金をAIJに預け、多額の損失を被っても「自己責任原則」に基づいて納得したのだろうか。「最近3年間の損失は1,000億円」と浅川AIJ投資顧問社長の証言からすると、外人投資家も多額の損失を被っているはずである。「マクドナルドのハンバーガーを食べ過ぎて肥満になった。肥満になったのは企業側の説明不足だ」という日本では信じられないような集団訴訟が起きる国があることを考えると、これまで訴訟も何も起きていないことは奇跡に近い。

もしかすると、多額の外国人投資家の資金が解約(資金回収)された時点で、AIJの役割は終わっていたのかもしれない。内外の投資家から4,000億円もの資産を預かり、高い利回りを達成して成功報酬も得ていたはずにも関わらず、AIJ投資顧問の2010年12月期の「投資顧問部門収益」が僅か79百万円と異様に低い水準に留まっていることに、なぜ監督官庁は疑問を抱かなかったのだろうか。

民主党のWTは「実質的にアマチュアの投資家にリスクの高い商品を売っていたことが問題だ」という認識を持っているようであるが、「リスクの高い商品を売っていた」という証拠はどこにもない。開示されている資料は、「商品を売ること」よりも、「資金を集めること」が目的であった可能性を示している。こうした既に開示されている情報が全く活かされなかったのは、監督官庁の目的が「書類を提出させること」にあり「受け取った情報を有効に利用する」ではなかったからである。

「第2、第3のAIJ」の出現を阻止するためには、政治的パフォーマンスを使って私募ファンドの情報開示に関する規制強化を叫ぶよりも、「情報を有効利用する体制」を構築することの方が有効かつ効率的である。前行政刷新相がお得意の「襟を立てるファッション」よりも、監督官庁の「襟を正す」ことを優先出来るか。日本の年金の将来がかかっている。
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