フェイスブック上場~「使い古されたビジネスモデル」上の巨人に背負わされた株式市場の大きな期待

世界の注目を集めたフェイスブックが米ナスダック市場に上場した。注目された株価は、初値こそ42.05ドルとIPO価格の38ドルを約11%上回りまずまずの滑り出しとなったが、ユーザーから150億ドル(約1兆1900億円)の賠償を求める集団訴訟を起こされたことや、システム障害に水を差されたのか、その後株価は失速。終値は、引受幹事のモルガン・スタンレーによる買い支えにも助けられ、IPO価格を僅か23セント上回る38ドル23セントに留まり、残念ながら株式市場の起爆剤にはならなかったようだ。

それでも、終値で計算した時価総額は約1046億ドル(約8兆2700億円)と、米アマゾン・ドット・コム(約960億ドル)やマクドナルドの920億ドルを上回り、日本の時価総額トップのトヨタ(10兆4400億円)に迫る驚異的な規模となった。参考までに、日本を代表するSNS企業の時価総額は、DeNAが約3,000億円、グリーは約3,400億円と、フェイスブックと比較すると大人と子供である。

時価総額でみると、フェイスブックは年間利益の約107倍と、S&P500種株価指数の採用企業のうちアマゾン・ドット・コムとエクイティ・レジデンシャルの2社に次ぐ高い評価となっている。こうしたところにも、市場が9億人超のユーザーを持つSNS、フェイスブックに強い期待を抱いていることが表れている。

10年足らずで9億人を超えるユーザーを抱えるまでに成長したフェイスブックに市場が大きな期待を寄せるのは当然のことかもしれない。しかし、一方ではフェイスブックを通して透けて見えてくるものは、SNSが抱えるビジネスモデル面での限界である。

日米で成長を続けるSNSのビジネスモデル上の問題点は、現時点でマネタイズ(monetize) の方法が、「広告収入」と「アイテム課金」しかないことに加え、「アイテム課金」には様々な問題があることである。

日本で2,648万人の登録会員を誇るニコニコ動画を運営するドワンゴ。2010年9月期に有料会員の増加で黒字転換を果たしものの、月額525円のプレミアム会員(有料会員)は僅か159万人と、登録会員の6%に留まっており、定額料金の「有料会員」を収益の柱に育てるのは容易ではないことを証明している。

定額料金の「有料会員」が収益の柱に育ち難いこと、「広告収入」にはスペース上の制約等一定の限界があることから、SNSが収益拡大を「アイテム課金」に求めるのは必然の流れでもある。

「アイテム課金」の問題は、収益を極大化するためには、程度の差はあれ、「コンプリートガチャ」のように「射幸心をあおる」ことを避けては通れないことである。そしてこの「射幸心をあおる」ビジネスモデルの恐ろしいところは、一部の熱狂的なユーザーが売り上げの大半を占めるようになり、企業は売り上げを伸ばすために、熱狂的なユーザーにさらに多くのお金を使わせようと、どんどん「射幸心をあおる」仕組みに傾斜していくという点である。

熱狂的なユーザーが購入資金を大幅に増やすことで見かけ上の売り上げは急速に増えるが、その一方でユーザーの裾野の広がりは失われてしまう。結果的に一部の熱狂的なユーザーに頼るビジネスモデルになってしまうことが、ビジネスとしての弱さを増していくことになる。

こうした「射幸心をあおる」ビジネスモデルを武器に成長してきたのが、かつてのパチスロやゲームセンターである。一時成長著しかったこれらの業界も、「射幸心をあおる」機器の規制などを受けて、現在では一時の勢いを失ってしまっていることは、見ての通りである。

「日本でも『新たな産業、新たな企業の創出が課題』と長年言われながら、なかなか果たせない」

フェイスブックが米ナスダック市場に上場する18日、日本経済新聞は、「フェイスブック上場と新産業創出の道筋」と題した社説の中でこのように指摘、日本でフェイスブックのような新産業が創出されないことへの懸念を示した。

しかし、日本でも2004年にグリーやミクシイがSNSを開始しており、フェイスブックが「新たな産業」を創出したわけではなく、日本経済新聞の主張はやや自虐的過ぎる。

見誤ってはならないことは、フェイスブックは新興成長企業であるが、現時点ではまだ「新たなビジネスモデルを確立した企業」ではないということである。フェイスブックの昨年の売上高は37億ドルだったが、このうち85%を「広告収入」が占めている。つまり、SNS分野では旋風を起こし圧倒的な強さを見せるフェイスブックも、ビジネスモデルという面では「使い古されたビジネスモデル」の上で戦っているのである。

ビジネスモデルという観点から極論すれば、現時点でのフェイスブックの躍進は、ヤマダ電機が家電量販店業界で他を圧倒したのと大同小異とも言える。

年間利益の約107倍という、極めて高い評価を受けてスタートしたフェイスブック。今後も株式市場の期待に応えられるかは、フェイスブックがユーザー数をさらに増やしていけるかということよりも、「広告収入」と「アイテム課金」という「使い古されたビジネスモデル」から脱却し、SNSとしての「斬新的なビジネスモデル」を構築出来るか否かにかかっている。SNSの将来は、フェイスブックが「使い古されたビジネスモデル」上の巨人に留まるか、SNSとしての「斬新的なビジネスモデル」を築けるかにかかっていると言っても過言ではない。
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