「不退転の決意」で消費増税に邁進する野田政権~「成長と雇用の促進」を掲げたG8の鼻つまみ者

「22日夕方の外国為替市場で円相場が対ドルで急落。18時過ぎに一時1ドル=79円85銭近辺を付け、17時時点(79円55~57銭)から30銭ほど円安・ドル高が進んだ。格付け会社のフィッチ・レーティングスが、日本国債の自国通貨建て格付けを『ダブルAマイナス』から『シングルAプラス』に1段階引き下げたと発表したことが円売りを誘った」

何とも大袈裟な…。衆院の社会保障・税一体改革特別委員会で、消費増税を柱とする一体改革関連法案の審議が続けられる中で、フィッチの日本国債格下げが余程嬉しかったのか、 日経電子版は「日本国債、フィッチが格下げ 円急落」という見出しで、為替市場が円安に反応したことを鬼の首をとったように報じている。

3月中旬の84円台から、2ヶ月ほどの間に79円割れ寸前まで5円も円高が進行した後の「僅か30銭の円安」をことさら強調するというのは、日本を代表する経済紙とは思えないはしゃぎ振りである。因みに、日銀が公表している22日の外国為替市況のレンジは、79円27銭から79円57銭と30銭である。格付け機関の格下げなどなくても市場が30銭ほどの円安・円高に動くのは当然のこと。「僅か30銭」の為替の変動で大騒ぎしていたら、毎日大騒ぎしなくてはならない。

先日のG8は「成長と雇用の促進が必要不可欠だ」という首脳宣言を採択した。これは、世界が発した「過度な緊縮財政からの決別宣言」でもある。ここ数年間、世界は緊縮財政による景気下押し圧力を、大規模な金融緩和で和らげるという政策ミックスを続けてきた。しかし、緊縮財政下での金融緩和では、「成長と雇用の促進」は達成することが不可能なことは、その後の世界経済が証明してしまった。

「成長と雇用の促進が必要不可欠だ」というG8首脳宣言は、「成長と雇用の促進」の主役を、「金融政策」から「財政政策」にシフトさせるということでもある。こうした状況下で、「不退転の決意」で消費増税に突き進む野田政権は、国際協調を乱す存在でしかない。

世界は、限られた財政支出で、如何に効率的に「成長と雇用の促進」を図るかという「知恵比べ」に向かっている。こうした流れに逆らうかのように野田政権は、「知恵が不必要」な消費増税に邁進している。

野田総理は消費増税法案が今国会で成立しなかった場合の経済への影響について「財政再建をやらないというメッセージが出て長期金利が1%上がった時は、資金調達などで企業にもろに影響する」と強調した。

消費増税法案が今国会で成立しなかった場合、野田総理が指摘する通り、長期金利が上昇するリスクは否定できない。しかし、それは「財政破綻懸念」の高まりによる金利上昇ではなく、「緊縮財政先送りによる景気悪化懸念の後退」によるものである。

日本経済新聞は殆ど報じていないが、日本銀行が先週16日実施した日銀資産買い入れ等基金における国債買い入れオペでは、包括的な金融緩和策の一環として10年10月に同基金を導入してから初めて札割れとなった。さらに、18日に実施した輪番オペ(毎月1.8兆円の国債を購入している国債買い入れ)では、残存期間1年以下のオペでは予定額3,100億円に対して応札額が1,747億円にとどまり、応札額が予定額を下回る札割れが6年ぶりに発生(残存期間1年超10年以下のオペでは予定額2,500億円に対して、1兆1920億円の応札)、日本国債の需要の強さが示されている。

消費増税法案の今国会での成立が危ぶまれている現時点でも、日本国債の需要は極めて強いというのが現実である。もし、市場が今国会で消費増税法案が成立しなった場合の財政破たんリスクを考えているのだとしたら、長期金利は上昇し始めていても不思議ではない。要するに、今国会で消費増税法案が成立しなかったからといって、日本国債の需要が突然消滅するかのような野田総理の主張は、非現実的なものでしかない。

野田政権が懸念しなくてはならないことは、日銀が国債を市場から買い上げて資金供給を増やすという量的緩和政策、投資家の日本国債先行によってやり難くなっているということである。もし、相次いだ「札割れ」が、日銀による金融緩和政策の限界の予兆だとしたら、野田内閣は国際社会と同様に財政政策による「成長と雇用の促進」を図るしかない。効果が乏しくなる金融政策と、緊縮財政という恐怖の政策ミックスが誘う先は、「日本のギリシャ化」でしかない。
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