野田、小沢会談が示した「待ったなし」~「政治的負のスパイラル」からの脱却

悪意による捏造なのか、無知から来る誤りなのか…。

平行線で終わった野田総理と小沢元代表の会談を受け31日付日本経済新聞に掲載された「首相は自公との連携へ踏み出すときだ」と題した社説は、日本を代表する経済紙のものとは思えないお粗末な内容であった。

「野田佳彦首相と民主党の小沢一郎元代表の会談が平行線に終わった。意見が異なる同士がよく話し合うのはよいことだが、堂々巡りを繰り返してもきりがない。野田首相は与党の分裂をおそれることなく、前に踏み出すときだ」

という「消費増税翼賛会」を求めるような書き出しで始まるこの社説は、すぐに「消費増税を巡り、野田政権は民主党の党内議論を経たうえで関連法案を国会提出した。与党議員は一致団結して法案成立を目指すのが筋だ。小沢元代表も例外ではない。どうしても消費増税に反対ならば離党するしかあるまい」というお得意の「消費増税法案に反対なら離党しろ」という乱暴な議論に持ち込んでいる。

「繰り返しますけど、選挙の時の公約は、党で決めたことなんです。質疑を途中で打ち切って決めたことではないですよ。ずーっと何回も何回もやって、そりゃ不満や批判もあったかもしれないけど、党として国民にこう訴えましょうということで決めて、たぶん野田総理もその時にはそういう演説をしてそれでみんなで国民皆さんに訴えた結果、政権を頂いたわけです。ですから、それを全く忘れちゃって、消費税だけは『決めた』『決めた』『従え』というのは、たぶん国民の大多数の人からは理解されないと私は思います」

昨日久々にNHKの夜のニュース番組に出演を許された小沢元代表。野田総理のシンパである大越キャスターの「野田さんは、これは党議決定したことなんだと。つまり、党として決めたことに対してそれに従えないというのは党議に反することになるんですよ、ということを仰っていますが、それも覚悟の上ということですか」という野田総理側に立った質問に対する回答は、このように単純明快であった。

日本を代表する経済紙と公共放送は、民主党総裁選挙という内輪の選挙の際に、「党議」を経て決まっていたマニフェストに反する公約を勝手に掲げ、それを以てしてマニフェストに反する政策を「党で決めたこと」へとすり替える野田総理の「政治的暴挙」を称賛し、奨励するという、議会制民主主義を否定するかのような主張を繰り返している。

国民に提示したマニフェストを、身内の選挙での公約で変更出来るという政治システムでは、議会制民主主義など成り立たない。議会制民主主義を根本から否定するかのようなマスコミを、独禁法や公共放送として守る必要があるのだろうか。

「そもそも小沢元代表は1993年に出版した自著『日本改造計画』で当時3%だった消費税率を10%に引き上げるよう主張した。細川内閣では事実上の消費増税だった国民福祉税構想を推進した。この期に及んでの反対は政策論というよりも与党内での主導権を取り返すための政局論と受け止められても仕方ない」

議会制民主主義を否定に続くこうした主張は、この新聞の経済紙としてのレベルの低さを露呈したもの。

88年~93年の5年間の実質GDP成長率は年平均で+3.0%、名目GDPで年平均+4.9%であった(IMF World Economic Outlook April 2012、以下同じ)。バブル崩壊後の90年~95年の5年間で見ても、GDP成長率は実質で平均年率+2.2%、名目で+1.4%である。これに対して直近の2006年~2011年の5年間はGDPで平均年率▲0.2%、名目GDPで▲1.6%である。

日本経済新聞は、「そもそも小沢元代表は1993年に出版した自著「日本改造計画」で当時3%だった消費税率を10%に引き上げるよう主張」していたことを挙げ、「この期に及んでの反対は政策論というよりも与党内での主導権を取り返すための政局論」だと鬼の首を取ったように断罪しているが、これはこうした景気状況を考慮しない誤った議論である。

途中で打ち切られてしまった消費増税法案の民主党の党内議論において、「実質GDP+2%、名目GDP+3%」という「景気条項」を入れるかも議論の焦点の一つであった。この考えに沿えば、「小沢氏が消費増税を主張していた」という93年当時(過去5年間の平均GDP成長率が実質で+3.0%、名目で+4.9%)の経済状況は「消費増税を実施しうる経済状況」だったのに対して、足元の経済(直近5年間の平均GDP成長率が実質で▲0.2%、名目で▲1.6%)は、「消費増税を実施するには適さない経済状況」だとういうだけである。

ここが、野田総理の言う「元代表は、消費税率引き上げ自体は反対ではない、とおっしゃっていた。時間軸の問題での差だ」ということである。そして、この両者の間に横たわる「時間軸の差」は、「経済に対する認識の深さの差」でもある。

日本を代表する経済紙を自認するのであれば、せめて、この程度の経済統計くらいは確認して報道するべきである。

昨日のNHKのニュース番組で、大越キャスターは小沢氏に最後に次のような質問をしている。

「もっと日頃普段から、そういう話をもっと普段からコミュニケーションを、小沢さん自身の垣根を低くして話を出来ていれば、今ここまで深刻に溝が深くなることはなかったんではないか」

党内亀裂の原因を、検察審査会で強制起訴をされ、党員資格を剥奪された元代表に対して求めるというのは、滅茶苦茶な論法である。さらに、「小沢さん自身の垣根を低くする」必要があると認識しているのであれば、元代表の主張をNHKが取り上げればよかっただけの話である。野田総理をはじめ、消費増税原理主義者の主張ばかりを垂れ流してきた公共放送に、こうした批判をする権利があるのだろうか。

今回の野田総理と小沢元代表の会談は、日本のマスコミのレベルの低さを改めて知らしめる政治イベントとなった。今のような、マスコミと政治の緊張感のなさが、低次元の政治と、政治への関心の低い国民を生み出し、それが新たな低次元の政府誕生の原動力になるという、「政治的負のスパイラル」から一日も早く脱却することこそ「待ったなし」である。
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悪意による捏造なのか、無知から来る誤りなのか…。平行線で終わった野田総理と小沢元代表の会談を受け31日付日本経済新聞に掲載された「首相は自公との連携へ踏み出すときだ」と題

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