日本株、バブル崩壊後の安値~不透明な足元の世界経済の中で数少ない「尤もらしいこと」

「社会保障と税の一体改革を含めた諸懸案を前進させる環境整備をするため、内閣の機能強化の視点で内閣改造を行った」

野田総理が、高揚した表情で社会保障と税の一体改革などの懸案に取り組む環境を整備するために内閣改造に踏み切ったその日、それを待っていたかのように、東証株価指数(TOPIX)は前週末比1.9%下落の695.51と、バブル経済崩壊後の最安値を下回り、1983年12月以来、28年半ぶりの安値を記録した。

こうした市場の動きに対して安住財務相は、「日本経済の実態を全く反映しておらず、残念に思っている」と語ったうえで、景気認識に関しては「日本は内需も堅調で、消費も良い。実態は全く悪くない」と指摘した。

財務相の発言は、2012年1-3月期の実質GDP速報値が前期比年率で4.1%増と、3四半期連続でプラス成長となったことを指したもの。東日本大震災後によって大幅に落ち込んだ後の3四半期連続プラス成長を以て「日本は内需も堅調で、消費も良い。実態は全く悪くない」だと臆面もなく発言するところが、素人財務相の素人たるゆえん。

2012年1-3月期の名目GDP(季節調整系列)は474兆6,169億円と、震災前の2010年10-12月期の481兆2,190億円と比較すると金額ベースで6兆6,021億円、率にして1.4%減少しており、「日本は内需も堅調で、消費も良い。実態は全く悪くない」という状況にはない。

四半期ベースでの名目GDPのピークは、消費税が5%に引き上げられた2007年の10-12月期の524兆5,528億円である。このピークと比較すると、名目GDPは金額で49兆9,359億円、率にして9.5%減少している。こうした厳しい経済状況を、政府が「内需も堅調で、消費も良い。実態は全く悪くない」とみなし、総理が「政治生命を賭けて」消費増税に突き進む国の株式市場が、28年半ぶりの安値を記録したとしても、それは「政府による自殺テロ」でしかない。

金融市場では、米国の「財政の壁」が注目されている。「財政の壁」とは、今年11月の大統領選挙後直ちに政治的対応が図られなければ、ブッシュ政権から続いてきた大型減税が失効することに加え、超党派委員会で今後の財政再建策を具体的に作成できなければ、2013年から歳出が自動的に削減されること、さらには、オバマ政権の医療改革により医療保険税の増税がスタートすることで、米国が自然と「緊縮財政」に向かってしまうことである。

金融市場は、この「財政の壁」による、米国の景気失速もリスク要因として懸念している。つまりは、「緊縮財政」が経済に悪影響をもたらすことは、今や世界の共通認識となっている。ソブリン危機で始まった欧州の経済危機も、徐々に「緊縮財政」を強いられることで、景気回復手段を失ってしまったという、景気崩壊懸念に変化しつつある。

こうした中、名目GDPがピークから10%近くも減少し続けている国で、総理が消費増税というでっち上げ「国際公約」に「政治生命を賭ける」となれば、世界中の投資家が「日本の景気悪化に賭ける」のは自然の成り行きである。「景気対策の財源のない南欧」と、「総理が緊縮財政に政治生命を賭ける日本」で景気低迷が続くということは、不透明な足元の世界経済の中で数少ない「尤もらしいこと」である。

「欧州の国々にさらなる努力を促したい」

安住財務相は、日本の株安が欧州の金融不安などが原因になっているとの見方を示したうえで、このように発言した。財源の手当が出来ず、景気回復の努力の限界が見えている南欧諸国の耳に、財源の手当に問題のないにも関わらず景気鈍化に努力している日本の財務相の言葉はどのように響くのだろうか。

「中銀による流動性供給で時間を買っている間に欧州は持続的な成長と安定にむかって着実に対応を進めることが不可欠だ」

「言うだけ日銀総裁」も、東京都内での講演でこのように発言。欧州各国政府に対して「持続的な成長と安定にむかって着実に対応を進めること」を求めた。しかし、消費増税を中心とした緊縮財政で、着実に持続的な成長と安定の芽を摘み取ることに「政治生命を賭ける」国の、「流動性供給で時間を買う」ことに消極的な中央銀行総裁の発言に、誰が説得力を感じるのだろうか。

4日の東京株式市場では、日本を代表する企業である「ソニー」が1,000円を、「パナソニック」が500円を割り込み、32年ぶり安値を記録した。野田総理が「待ったなし」「待ったなし」と連呼し続ける間に、株式市場は「失われた20年」を通り過ぎ、「失われた32年」に突き進んでしまった。

野田総理も、安住財務相も、日銀総裁も、そして彼らのシンパである日本のマスコミも、こぞって円高、株安の原因は全て「欧州財政問題」と「米国の景気鈍化懸念」「中国景気鈍化」という海外要因にあるとしている。しかし、円高、株安の根本的原因は、消費増税法案の成立に「政治生命を賭ける」ことを正当化するために、「日本は内需も堅調で、消費も良い。実態は全く悪くない」とごまかし続ける野田政権の歪んだ姿勢にある。
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「社会保障と税の一体改革を含めた諸懸案を前進させる環境整備をするため、内閣の機能強化の視点で内閣改造を行った」野田総理が、高揚した表情で社会保障と税の一体改革などの懸案...

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