支離滅裂な主張~「有罪ありき」の捜査を批判する消費増税原理主義者による「増税ありき」の議論

東京高裁が1997年の東京電力の女性社員殺害事件の再審開始を決めた翌日の8日、日本経済新聞は「『有罪ありき』でなかったか」という、「有罪ありき」のような捜査手法を批判する社説を掲載した。

そして翌9日、「世界経済の安定へ主要国の確かな行動を」という社説で、「欧州不安の再燃や米中景気の減速懸念が重なり、世界経済の先行きに不透明感が広がってきた。金融市場も不安定な状態が続く。主要国は危機回避への結束を固め、具体的な対応に動くべきだ」と、主要国の政策協調の必要性を主張した。

しかし、その中身は、前日の社説の批判を忘れたかのような支離滅裂な低レベルの内容であった。

「欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁と米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、必要に応じて行動する考えを示した。市場の緊張が高まれば、追加金融緩和に動かざるを得まい」

「主要国は危機回避への結束を固め、具体的な対応に動くべきだ」と主張し、欧米の中央銀行にさらなる金融緩和を求め日本経済新聞は、何故か日銀には何の行動も求めていない。

4日の都内で行われた講演で、現在、金融緩和政策を「強力に実施している」と述べた日銀の白川総裁。しかし、6日に日銀が発表した5月末のマネタリーベースは、「強力に(金融緩和を)実施している」という総裁の発言とは裏腹に前月比で7兆3,585億円(▲6.0%)の減少となっている。

このように、「強力に(金融緩和を)実施している」という発言を繰り返している日銀が、円高が進行する中、実際には殆ど金融緩和などせず円高を放置していることを、日本経済新聞は殆ど報じていない。

「財政緊縮一辺倒では欧州経済の本格回復を望めないため、インフラ整備などを柱とする成長戦略の取りまとめを急ぐ必要がある」

「中央銀行の対応は時間稼ぎにすぎない」とする日本経済新聞は、「財政緊縮一辺倒では欧州経済の本格回復を望めない」とし、「成長戦略の取りまとめを急ぐ必要がある」と指摘している。ようやく日本経済新聞も現実に目を向けるようになったかに思いきや、この後その主張はとんでもないところに飛んでいく。

「もちろん日米中の責任も重い。日本は消費増税の実現を目指しつつ、骨太の成長戦略を示さなければならない。米国は大型減税の財源手当てにめどをつけ、国民負担の急増を避けるべきだ。3年半ぶりの利下げに動いた中国も、景気の下支えに努力してほしい」

欧州には「成長戦略の取りまとめを急ぐ」ことを求め、米国には「国民負担の急増を避ける」ことを求める日本経済新聞は、何故か日本にだけは「消費増税の実現」という「国民負担の急増」を招く政策を求めている。

金融危機に見舞われている欧州には財政出動が必要な「成長戦略」を求め、「財政の壁」のリスクが懸念されている米国には「国民負担の急増を避けるべし」とする一方、日本にだけは金融緩和も求めず、「国民負担の急増」を招く消費増税の実現を主張するなど、正常な思考回路では出来ないこと。

東京電力の女性社員殺害事件の捜査について、「『有罪ありき』でなかったか」と批判を加える日本経済新聞は、本業の経済分野では「消費増税ありき」の支離滅裂な主張を繰り返し続けているのである。

「『有罪ありき』でなかったか」という社説は、「再審裁判では『検察が不利な証拠を隠していた』との指摘がたびたびなされている。証拠開示のあり方についても改めて検討する必要があろう」という文章で結ばれている。しかし、日本経済新聞は、日銀がマネタリーベースを殆ど増やしていないということや、日本の名目GDPが、前回消費増税が実施された1997年をピークに減少して来ているというような、日本の経済低迷が「対外要因」だけではなく、政策当局の無策による「国内要因」もあることを物語る「不利な証拠」は殆ど報じず、検察と同じ誤りを犯そうとしている。

東京電力の女性社員殺害事件の捜査からの教訓は、都合の良い証拠に基づいた「結論(有罪あるいは消費増税)ありき」の議論を避けなければならないということのはずである。「有罪ありき」の捜査を続けた結果、東京電力の女性社員殺害事件では、無罪の可能性のある人物から15年という貴重な時間を奪うという、取り返しのつかない失敗を招いてしまった。

もし、今のような、消費増税原理主義に都合の悪い事実を伏せ、「消費増税ありき」の議論を続けたら、1億2千万人の国民がさらなる「失われた20年」に襲われるという取り返しのつかない失敗を招く可能性が高い。その時になって「『消費増税ありき』ではなかったか」と反省しても、それはもう手遅れである。東京電力の女性社員殺害事件を批判の対象にするのではなく、「他山の石」としなくてはならない。
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