「日本社会」は「野田政権の運転停止」を望んでいる~支持率が3割に満たない政権が、消費増税による財政再建に突き進めれば、日本の社会、経済は立ち行かなくなる

民主、自民、公明3党が、消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の修正で正式に合意したことで、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に2段階で引き上げる法案は、成立に向け大きく前進した。

しかし、3党合意の中身は、野田政権の応援団長である日本経済新聞を以てして「複雑な思いが残る3党合意である。消費増税の実施で足並みをそろえた点は評価するが、社会保障の抜本改革を先送りするのは看過できない」(16日付「合意、法案成立につなげ」)と言わしめる程度の代物。こうした消費増税実施を前提とした自虐的記事も、多数を占めている消費増税反対派の読者向けの「ガス抜き記事」であり、消費増税原理主義者にとっては「勝どき記事」である。

ここ連日マスコミが大騒ぎをして報じて来た3党による修正協議も、所詮は「消費増税ありき」を前提にした、民主、自民、公明3党の面子を保つための「文言修正の場」でしかなかった。消費増税法案の今国会での成案に「政治生命を賭ける」と繰り返して来た野田内閣の着地点は、社会保障制度の「事実上の棚上げ」という、「政局より大局」、 「決められない政治からの脱却」という掛け声からかけ離れた醜いものであった。

マニフェストすら平気で反故にする野田総理にとって、「政治より大局」や、「決められない政治からの脱却」などというB級マスコミ向けキャッチコピーなど、初めから守るつもりも、必要もないどうでもいいことだったということ。野田総理は、「政治家としての信念がないから言葉が軽く、言葉が軽いから薄っぺらな政治家に終わる」典型のような人物である。

マニフェストに掲げていない消費増税法案の成立のために、看板政策としてマニフェストに掲げた「最低保障年金の創設」も、「後期高齢者医療制度の廃止」も平気で「事実上棚上げ」してしまう野田政権。「消費増税」「最低保障年金の創設」「後期高齢者医療制度」と次々とマニフェスト違反を繰り返す野田総理を見ていると、「消費増税」という政府の歳入側で犯す重大なマニフェスト違反を、歳出側でもマニフェスト違反を犯すことで、埋め合わせ、バランスを採ろうと歪んだ発想を持っているかのようである。

偉そうに「決められる政治」を標榜しながら、実際に決めたのは、マニフェストに違反する消費増税実施と、マニフェストに掲げた当時の看板政策の旗を事実上下ろしたことだけである。こうした民主主義を冒涜するような政治が、「決められる政治」という無意味なキャッチフレーズを掲げた国民の審判を受けない政権によって推し進められ、それをマスコミがこぞって礼賛するという今の日本の政治の状況は、危機的状況である。

「財政の悪化をいつまでも放置できない。それが欧州危機から得た教訓である。3党が政治対立を乗り越え、2段階の消費増税で折り合った意味は大きい。15年かかってたどり着いたこの合意を無駄にはできない」

「3党が政治対立を乗り越え」という評価は笑い話にもならない。今回の3党合意は、「15年かかってたどり着いた合意」ではなく、消費増税原理主義の教義に憑りつかれた内閣が、消費増税原理主義の教義をマニフェストに掲げた政党に擦り寄り、政治的キャスティングボードを維持しなければ存在価値がなくなってしまう消費増税に消極的な中小政党を巻き込んだという、旧態依然とした「大局よりも政局」によって咲いたアダ花である。

「欧州危機から得た教訓」を、「財政の悪化をいつまでも放置できない」と決めつけるのは、表面の現象論だけに目を奪われるB級マスコミの専売特許である。

「欧州危機が示した教訓」は、「(通貨統合のために)財政政策と金融政策を分離してはならない」ということと、「国の資金調達を過度に海外に依存してはならない」ということである。さらには、国家の財政危機は「増税を伴う緊縮財政」という処方箋では解決出来ないということである。

経済には2面性があることを忘れてはならない。それは、「ある人にとっての『支出』は、ある人にとっては『収入』」であり、「ある人にとっての『借金』は、ある人にとっての『資産』である」という、当たり前のことである。

こうした当たり前のことを考えると、政府が歳入(税金)を増やすという「人為的拡大均衡」で財政再建を図ろうとする中で、民間も財政収支をバランスさせようとすれば、増税による実質所得の減少分を支出の減少で補うという「縮小均衡」を迫られることになるのは、当然のことである。

政府が、民間に「縮小均衡」を迫ることになる、増税という「人為的拡大均衡」で財政再建を目指す政策が「国益」に適うものなのか、増税という「人為的拡大均衡」以外の「経済成長に伴う自然増収による拡大均衡」を目指すことが「国益」なのか、を議論することこそが「政局よりも大局」、「国益」に根差した議論だったはずである。

しかし、凝りもせずに「大局よりも政局」という「劇場型報道」を繰り返して来たB級マスコミには、「大局に根差した議論」を喚起する能力は残っていなかったようである。

「明治大の加藤久和教授が1人あたりの国の長期債務を試算したところ、11年に2歳になった子どもは723万円の借金を背負って生まれてきた計算となる。これに対して65歳の高齢者が生まれた時点で抱えていた借金は15万円にすぎない。 日本はあまりに大きなツケを次の世代に残してきた。与野党が政争に明け暮れ、真の一体改革を滞らせる余裕はない」

「合意、法案成立につなげ」という16日付日本経済新聞の記事は、消費増税原理主義者の18番である、経済の2面性を無視した議論で結ばれている。

彼らの議論に欠けていることは、まず、日本の国債発行残高の多さを、ソブリン危機に見舞われた欧州各国と同様に、「国債発行残高が大きいこと=国の長期債務が大きいこと」と決めつけている点である。しかし、これは必ずしも正しくない。

金融で大きな問題なのは、借金の規模ではなく、資金をどこから調達しているのかという視点である。

欧州各国がソブリン危機に見舞われているのは、「資金調達を海外に過度に依存し過ぎた」ことが大きな原因であり、これを実現可能にしたのは、共通通貨ユーロの誕生である。欧州各国は、国債の資金調達の半分以上を海外に依存しており、欧州全体としてみると「国債の持ち合い」のような格好になっている。こうした状況では、「国債発行残高が大きい=国の長期債務が大きい」とする指摘は理にかなったものである。

しかし、日本は、国債による資金調達の約94%を国内で調達しており、海外に依存しているのは6%程度に過ぎない。つまり、国全体としてみた場合、「国債発行残高が大きい=国の長期債務が大きい」とはなっていない。

消費増税原理主義者は、国債など「国の借金」が平成23年度末時点で過去最大の959兆9503億円、「国民一人あたりの借金は723万円」だと騒ぎ立てるが、これは完全な詭弁である。

国全体を考えた場合、国の借金というのは、「海外から調達している金額」である。こうした定義に基づけば、消費増税原理主義者が「国の借金」だと騒ぎ立てる約960兆円のうち、本当に「国の借金」と言えるは57.6兆円、名目GDPの約12%程度に過ぎない。

日本の「国の借金」が約57.6兆円、名目GDPの約12%に留まるということは、経済の2面性から言って、残りの900兆円以上が、「国の借金=民間の資産」ということである。「国民一人当たりの借金が723万円」というが、実際の「国の借金」と経済の2面性から言えば、「国民一人あたりの資産が約680万円」というのが今の日本経済の実態である。

日本経済新聞は、「11年に2歳になった子どもは723万円の借金を背負って生まれてきた計算となる。これに対して65歳の高齢者が生まれた時点で抱えていた借金は15万円にすぎない」と指摘するが、見方を変えれば、「11年に2歳になった子どもは680万円の資産を背負って生まれてきた計算となる。これに対して65歳の高齢者が生まれた時点で抱えていた資産は15万円にすぎなかった」ということ。

さらに、消費増税原理主義者は、日本が消費増税を実施し、財政再建に本気度を示さないと、「国際社会からの信頼が失われる」と主張する。しかし、これも完全な屁理屈である。

「日本は2011年末の段階で、253兆円(3兆1900億ドル)の海外純資産を有し、21年連続で世界最大の債権国の地位を守った」

日本の財務省の発表によると、日本は21年連続して世界最大の債権国となっている。経済の2面性から言うと、「国際社会は日本からみれば債務国」であるということである。

「日本からみれば債務国」である国際社会が、「世界一の債権国」である日本に対して、「消費増税による財政再建に本気度を示せ」という要求を突き付けるのは全く可笑しな構図である。

消費増税原理主義者のお得意の「家計に例えれば」、銀行から住宅ローンを借りている家庭が、貸してくれている金融機関に対して「ちゃんとリストラをしろ」と迫っているようなものであり、非現実的な笑い話でしかない。

日本経済新聞などは、IMF高官の発言を繰り返し報道することで、日本の消費増税が国際社会から求められているかのような演出をし続けている。しかし、日本からの多額の拠出金によって運営されているIMFが、景気回復による税収増加の見通しが立たない日本からの安定的な拠出金を確保するために、景気動向に左右され難い消費増税に支持を表明するのは当然のことである。こうした利害関係者の都合のいい発言を、さも国際社会の共通の認識であるかのように報じるところに、日本のマスコミの堕落が表れている。

野田総理を筆頭に、消費増税原理主義者達は、あらゆる詭弁や屁理屈、歪められた報道を駆使して、国民の審判を受けていない政権による、消費増税というマニフェスト違反を正当化しようと画策し続けている。

野田総理は、「国民受けしない消費増税を実行して財政再建の緒を付けた総理」として歴史に名を残したいと思っていると報じられている。しかし、消費増税以外で「ブレまくりの総理」には、「景気低迷下の消費増税で、日本経済に止めを刺した総理」として歴史に汚名を残すのではなく、「日本社会のため消費増税を阻止し身を引いた総理」ということで歴史に名を残す方向に「君子豹変」して貰いたいものである。

野田総理は16日、「全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を止めたままでは日本の社会は立ち行かない」という理由で、大飯原発の運転再開を決断したが、「支持率が3割に満たない政権が、消費増税による財政再建に突き進めれば、日本の社会、経済は立ち行かなくなる」ことに対しても、決断するべきである。

「日本社会」は「野田政権の運転停止」を望んでいる。
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民主、自民、公明3党が、消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の修正で正式に合意したことで、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に2段階で引き上げる法案は、成立

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