ギリシャ「ユーロ離脱回避」~国際社会を欺いた政党に政権を委ねなければならない「苦渋の選択」

注目されたギリシャの再投票結果は、旧与党で緊縮策を訴えた新民主主義党(ND)が、反緊縮派の急進左派連合を破り第1党となり、同じ旧与党で第3党となった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)との合計議席で議会定数の過半を占めることが確実になった。これにより、ギリシャのユーロ離脱は、ひとまず回避されることとなった。日本のメディアの中には、「緊縮派勝利」と報じているところもあるが、ギリシャ国民は緊縮、反緊縮というよりも、ユーロ離脱回避という現実的な選択をした格好。

ひとまずギリシャのユーロ離脱という、未知のリスクは回避された格好だが、ギリシャが国際社会からの信頼を取り戻すまでの道のりは険しいと言わざるを得ない。

今回選挙で勝利した新民主主義党(ND)は、与党時代に、実際にはGDPの13%を上回っていた財政赤字を4%程度だと偽り続け、ギリシャ危機の原因を作った政党である。ユーロ離脱を避けるという現実があるにせよ、国際社会を欺いてきた政党に再度政権を託さなくてはならなかったギリシャ国民は、苦渋の選択をせまられたとも言える。

日本の素人財務相は、ギリシャ議会の再選挙で緊縮策の維持を掲げる政党が勝利したことについて、「大きな山を一つ越えることができた」と述べ、ひとまずはヨーロッパの信用不安の拡大を防ぐことにつながるという認識を示した。しかし、市場が、目の前の危機であったギリシャのユーロ離脱が避けられたことを一旦好感したとしても、長年国際社会と市場を欺いてきた政党による財政再建を、市場が何時までも好意的に受け止めることを期待するのは虫の良過ぎる話。

ギリシャ同様、巨額の財政赤字問題を抱える日本。マニフェスト違反を繰り返す与党を政権の座から引きずり降ろしても、その後政権を担う可能性が高いのが、与党時代の2004年に「年金100年安心プラン」なるものを掲げて、日本の年金制度が持続可能なものであるかのように吹聴していた政党であるという現実は、政治面での「日本のギリシャ化リスク」を示唆するもの。

ギリシャの選挙結果が明らかになった18日、日本では衆議院の選挙制度改革を巡り、与野党の幹事長・書記局長会談が行われた。しかし、民主党が先に示した、比例代表の定数を40削減し、比例代表の一部に「小選挙区比例代表連用制」を導入するなどとした案に対し、各党から異論が相次ぎ、結局、民主党は単独で法案を衆議院に提出した。

民主党が単独で法案を提出したことについての輿石幹事長の説明は、「公の場で議論し、私どもの案をつぶすなり、成立させるなり、修正するなり、やってほしい」というもの。

消費増税については「公の場での議論」を避け、「談合」と批判を受けるような自民、公明との3党による修正協議を続けてきた民主党が、選挙制度改革に関しては「公の場での議論」を主張するのは、違和感を禁じ得ないもの。この一貫性のないやり方は、民主党お得意の詭弁なのか、はたまた野田総理が拘る消費増税法案の21日採決の先送りを画策しているとされる輿石幹事長のあてつけなのか。

一方、民主党の提示した改革案に対する自民党の反応は、「政権党の独断で比例代表の定数を削減し、数の力で押し切るのは横暴だ」という、これまた消費増税法案を民主党の消費増税原理主義者との「談合」による「数の力」で押し切ろうとしている政党の発言とは思えない、違和感を覚えるもの。「単独による数の力」は悪で、「談合による数の力」は正義と言わんばかりの主張に正当性はあるのだろうか。

「社会保障と税の一体改革」と言いながら、消費増税のみ合意し、社会保障については「国民会議」なるものに議論を委ね、事実上棚上げすることを決めた自民党。「1票の格差を是正するため、小選挙区を5つ減らす『0増5減』を先行して行ったうえで、選挙制度の抜本改革を検討すべきだ」と主張するのであれば、まずは一票の格差を解消する「0増5減」で先行合意し、「国民会議」で身の切り方について議論するよう民主党と「談合」をするのが一貫性のあるやり方ではないか。

日本にとって「待ったなし」なのは、「消費増税」ではなく、「一票の格差」を是正することである。まずは「一票の格差」を是正し、違憲状態にあるとされる今の衆議院をいつでも解散して国民の信を問える環境を早急に整備することこそ、「責任ある政治」が行うべきことである。

財政面での「ギリシャ化リスク」が顕在化するまでには時間的余裕があるが、政治面での「ギリシャ化リスク」は目の前に迫っている。
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注目されたギリシャの再投票結果は、旧与党で緊縮策を訴えた新民主主義党(ND)が、反緊縮派の急進左派連合を破り第1党となり、同じ旧与党で第3党となった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)...

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