まず「休刊日撤廃」から始めよ~「新聞休刊日」に主張する「規制の撤廃・緩和はとりわけ重要である」

ある意味「新聞休刊日」に相応しい社説だった。

「民主党分裂という代償を払いながらも、消費増税の道筋をつけた野田政権の功績は大きい」

8日付日本経済新聞の「成長の壁破る政策に全力を挙げよ」という社説は、いきなり国民の6割近くから支持を失っている野田内閣が、国民の6割近くが反対する消費増税法案を、自公民の政治的談合によって強行採決したことについて、「野田政権の功績は大きい」という、信じ難い賛辞から始まっている。

「しかし消費増税は日本経済の再生に必要な政策のひとつにすぎない」

この新聞に代表されるように、日本の主要メディアの恐ろしいところは、消費増税がどのようにして「日本経済の再生」に繋がるのか、その根拠を全く示さずに平然と「消費増税は日本経済再生に必要な政策」と決めつけて報じてしまうことである。

日本の財政状態は褒められたものではないし、現状を何時までも放置し続けていいというものでもないかもしれない。しかし、GDPの2倍を超える公的債務残高が、これまで日本経済の成長の足枷になったことはあったのだろうか。

日本は、少なくともこれまでのところ、南欧諸国のように国債利回りの急上昇によって国家運営に必要な「資金調達」に支障を来したり、通貨安によって「景気減速下のインフレ」を懸念したりしなくてはならない状況には一度も陥っていない。

要するに、これまで日本経済を失速させて来たのは「財政問題」ではない。しかるに、日本経済失速の原因となってもいない「財政問題」を解決するために、今「消費増税」に踏み切ったとしても、「日本経済の再生」が図れることはない。誤診に基づいて、「消費増税」という誤った処方箋を渡された日本経済は、有効需要の減少による「副作用」の方を懸念しなくてはならない。

「野田政権は成長力の強化に本腰を入れるべきだ。第1に、海外の需要を取り込む政策を急ぐ必要がある。縮む国内市場だけにとらわれていては、日本経済はいずれ立ちゆかなくなる。海外への輸出や投資で稼ぎ、人材や資金を国内に呼び込む努力が欠かせない」

「海外の需要を取り込む」というのも、「財務原理」の重要な教義の一つである。一見尤もらしく聞こえるこうした主張も、危険な教義である。

日本の政策当局が掲げている日本経済のリスクは、常に海外要因である。足元では、欧州の財政危機であり、米国と中国の景気減速懸念である。

つまり、「海外の需要を取り込む」という「外需依存型経済」は、非常に不安定なものである上に、海外のリスク要因は日本の政策当局が直接解決出来るものではない。日本政府は、欧州財務危機や、米国と中国の景気減速を食い止められるのか。答えは「No」でしかない。自分達でコントロール出来ないものを日本経済の成長の柱に置くのは、政治的に無責任なものである。

「海外の需要を取り込む」ということは、重要な戦略ではあるが、あくまで「内需で成長出来る経済」を存続させることが大前提である。「海外の需要を取り込む」という耳触りの良い方針は、日本経済を「他人任せにする」という無責任極まりないものでもある。

「消費増税」によって内需を抑制し、「海外の需要を取り込む」ことを成長戦略の柱に据えるという考え方は、当面高齢化が進む日本において、政策当局者の責任転嫁でしかない。世界で最も高齢化が進行し、社会保障費が急速に嵩むからこそ、日本は世界で最もコストパフォーマンスの高い内需振興策を生み出すことに英知を注ぐべきなのである。

「高齢化で社会保障費が膨れ上がり財政を圧迫するから消費増税やむなし」と考え、政府に「国民の懐に手を突っ込むのが一番」と言わんばかりの政策を安易に許しては、政策当局の「責任放棄」と「思考停止」を加速させるだけである。その結果、現役世代も、将来世代も、政策当局の「責任放棄」と「思考停止」による高いツケを払わされることになる。

「第2に、内需型産業の活性化にも取り組まなければならない。…(中略)… 企業や消費者の自由な行動を妨げている規制の撤廃・緩和はとりわけ重要である」

「海外の需要を取り込む」政策の中心を「TPP参加」に据えるこの新聞は、内需においてはTPPの副産物でもある「規制の撤廃・緩和はとりわけ重要である」と主張している。

再販規制と宅配制度、記者クラブ制度といった数々の規制によって競争原理に晒されていないうえ、消費増税の軽減税率の適用を目論む新聞業界による「規制の撤廃・緩和はとりわけ重要である」という主張は、悪い冗談を通り越した詐欺的報道である。

身内の日本新聞協会で決めた「新聞休刊日」という「抜け駆けを許さない横並びの規制」すら撤廃出来ない新聞業界を代表する新聞が、選りによって「新聞休刊日」の社説で「規制の撤廃・緩和はとりわけ重要である」などと主張するその厚顔無恥さには呆れるばかりである。

「隗より始めよ」

新聞協会が本当に「規制の撤廃・緩和はとりわけ重要である」と考え、読者に訴えたいのであれば、こよなく愛している野田総理の言葉に従って、まずは「身を切る」「新聞休刊日撤廃」から始めるべきである。新聞業界分裂という代償が生じても、読者に困ることなど何もないのだから。
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