党議拘束~「自民党化」を目指す野田政権と、「脱自民党」を目指す新党「国民の生活が第一」

「民主党が政策決定過程の見直しに着手した。法案などを『党議』として決定する仕組みが曖昧で、消費増税関連法案などを巡る党内手続きの混乱が収まらなかったからだ。党で決めたことを何度も蒸し返して議論する慣習を断ち切ろうと、自民党の政策決定を参考にしようとの声もあがる。党の決定に従って投票行動を義務付ける『党議拘束』の規定を設けることも検討する」

11日付の日本経済新聞は、「民主、明確な政策決定を模索 党議拘束の規定を検討」という見出しで、民主党の「自民党化」を象徴するような動きを報じている。

民主党が政策決定過程を「自民党化」させるのは、「野田政権の政策決定の手順では、重要政策の『党議』は政府・民主三役会議で最終的に決める。執行部は増税法案もこの手続きを踏んでおり、党議拘束がかかったと判断した」ことが民主党内の混乱と分裂を生んだからである。

「自民党の総務会では、政府が提出する法案は閣議決定前に党の事前審査にかけ、形式的には全会一致で了承を取り付ける慣行が定着している。反対者は総務会を欠席したり、採決前に席を立ったりすることで党の分裂を回避してきた知恵が長期政権を支えてきた。総務会決定には党議拘束がかかるが、これも規約などで明文化はしていない」

こうした報道から言えることは、野田政権が「党議拘束」の規定を設ける本音は、「長期政権を支えて来た」「党の分裂を回避してきた悪知恵」を移植することで政権の長期化を図ろうという猿知恵でしかないということ。

野田民主党が「党の決定に従って投票行動を義務付ける『党議拘束』の規定を設けることも検討」していることが報じられた11日、同日に結成された「国民の生活が第一」の小沢代表は、結党大会で「国民の負託を受けた議員が自立と共生という理念の下に集った信義に判断を委ねる」という理由から、「衆参両院での法案などの採決に当たっては、所属議員の投票行動を党が決める党議拘束は設けない方針」を明らかにし、民主党と「党議拘束」に対する認識の違いを見せた。

こうした認識の違いが生じるのは、野田政権が「党議拘束」を「政策推進」を目的に据えて捉えているのに対して、「国民の生活が第一」は「党議拘束」を「国民の意思を反映する」ことを目的として認識していることに起因しているともいえる。

「政策推進」を目的とするなら「党議拘束」は重要な手段だが、「国民の意思を反映する」ことを目的とすれば、「党議拘束」は「国民の負託を受けた議員の判断」に基づく行動の「障害」となる。

野田政権は「党議拘束」をかけることによって「決められる政治」の実現化を図っている。しかし、その代償は、自らの信義に従った判断が出来ない「決められない政治家」を増殖させることである。

一方、「国民の意思を反映する」ことを目的に「党議拘束」を設けず、政策決定を「国民の負託を受けた議員の判断」に委ねる方法には、「決められる政治家」を増やす効果は期待できるが、政党として意見集約に時間がかかることや混乱する懸念も含んでいる。

しかし、「党議拘束」をかけず、「国民の負託を受けた議員が自立と共生という理念の下に集った信義に判断を委ねる」方が、本来政治のあるべき姿に近いものである。自分の信義に基づいた判断を下せる「決められる政治家」が議論を尽くした上で、民主主義の原則である「多数決」によって政党としての意見集約を図れば、「決められる政治」を実現することは十分に可能なはずである。

少なくとも、国民にとっては、「反対者は総務会を欠席したり、採決前に席を立ったりすることで党の分裂を回避してきた知恵」を前提に「党議拘束」の規定を設ける「自民党回帰」によって進められる「決められる政治」に比べたら、ずっとマシな選択のはずである。

日本の選挙制度に関しては「一票の格差」が大きな問題になっている。しかし、「一票の格差」と同様に大きな問題である「候補者格差」については殆ど問題視されていない。

「候補者格差」とは、野田総理や前原政調会長など、「決められる政治」の(暴走)機関車になれる候補者を選択できる国民と、「党議拘束」を受けて自らの意見を国政に反映出来ない候補者しか選べない国民との間に横たわる「数値化出来ない格差」である。

例え「一票の格差」が解消されたとしても、「党議拘束」を強いる立場にある候補者を選べる有権者と、「党議拘束」を強いられる候補者しか選べない有権者の間にある「候補者格差」は解消することは出来ない。「党議拘束」を強いる立場にある候補者は、「党議拘束」を強いられる立場にある候補者に比較して、その政党内で数倍の発言力を有しており、政党内での「一票の格差」があるからである。

「一票の格差」の解消とともに、「党議拘束」をかけず「国民の負託を受けた議員が自立と共生という理念の下に集った信義に判断を委ねる」ことで「候補者格差、政党内における候補者の一票の格差」を解消して、初めて「公平な選挙制度」が達成されるようになる。

民主党内の政策決定プロセスを「自民党化」することによって「決められる政治」を目指す野田総理。しかし、国民が求めているのは、党内で民主主義の原則である採決を避けた「執行部一任」で強行突破し、国会の場で3党合意による「数の力」で多数決に持ち込むという、「似非決められる政治」ではない。

衆議院の第3党に過ぎない新党「国民の生活が第一」が標榜する、「党議拘束」を設けず「国民の負託を受けた議員が自立と共生という理念の下に集った信義に判断を委ねる」という政党としての試みは、直ちに国会の政策決定に影響を及ぼすものではない。

しかし、こうした「脱自民党化」する試みは、「決められる政治家」による「決められる政治」という、政治のあるべき姿を目指すうえで、小さくとも大きな一歩になるはずである。
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