「カバの口」「ドジョウの口」~現状を打破できない政治に将来を語る資格はあるのか

「政局よりも大局」「決断する政治」等々、空虚なキャッチフレーズでマスコミに持ち上げられて来た野田内閣の命運が尽きる瞬間が近付いているのかもしれない。マスコミがどんなに持ち上げようとも、国民の審判を受けていない野田政権による、民意を無視した「決断する政治」は、結局のところ「政局」を生むだけで終わろうとしている。毎年総理大臣が変わるという事態を重く見る向きもあるが、国民の審判を受けない政権による、「民意に反するオママゴト政治」を長期間継続させるリスクに比較すれば、日本にとってはずっと賢明な選択である。

野田内閣継続に黄色信号が点りはじめたことに対して、日本経済新聞は5日付朝刊に「風見鶏~『カバの口』閉じるには」と題する未練がましいコラムを掲載した。

「この2ヶ月で永田町の空気は一変した。けん引役は紛れもなく野田佳彦首相だ。『先送りしないで決める時に決める政治を行う。それが最大の政治改革だと思う』。首相は消費増税に道筋をつけるため自民、公明両党との連携にカジを切り、原子力発電所の再稼働への批判にも淡々とした口調で反論している」

「この2ヶ月で永田町の空気は一変した。けん引役は紛れもなく野田佳彦首相だ」と日本経済新聞は消費増税法案成立に突き進んだ野田総理を英雄視しているが、それはあくまで「永田町の住人の論理」でしかない。

この2ヶ月、野田内閣の支持率は軒並み発足以来最低、調査によっては支持率が一桁まで下がって来ている。さらには、毎週金曜日首相官邸周辺で行われている「反原発」集会の参加者は、回数を重ねるごとに増えて来ている。「永田町の住民」達の目には、この2ヶ月で、「国民の空気も一変した」ことが映らないのだろうか。「永田町の住民」にとっての「英雄」は、もはや「日本の国民」にとって「戦犯」でしかない。

「今国会はずっと先送りしてきた消費増税などの懸案に、民自公3党が共同で取り組む姿勢を見せただけでも画期的だ」

日本を代表する経済紙は、マニフェストに謳われていない消費増税法案を、民自公による政治的談合で衆議院可決に持ち込んだことを「画期的」と高い評価を下している。しかし、「民自公3党が共同で取り組む姿勢を見せた」という政治手法は、「議会制民主主義の冒涜」でしかない。

「批判勢力が言う『まず景気回復を』『まず行政のムダ排除を』『まず議員定数の削減を』という主張一つ一つは正しくとも、『これから生まれてくる世代に借金だけを残す政治でいいのか』との首相の問いかけへの答えにはならない」

日本経済新聞は「景気回復」や「行政改革」「議員定数削減」等を「『これから生まれてくる世代に借金だけを残す政治でいいのか』という問いかけの答えになっていない」と断じている。しかし、この問いかけ自体、間違っている。

前日の4日付の紙面では「円高倒産 中小で急増 上期、負債総額最大に」という見出しで、帝国データバンクの特別調査結果を報じられている。

「円高による減収や特別損失で倒産する中小企業が急増している。今年上半期(1~6月)の負債総額は上半期としては過去最大の700億円に膨らんだ。輸出企業は価格競争力が落ちたうえ、輸入企業も円安を見込んで金融機関と結んでいた為替デリバティブ取引の損失が響いた。欧州債務危機を背景に円高が長引けば、資金繰りが逼迫する年末に向けて倒産の増加が懸念されそうだ」

こうした調査から明らかなことは、「今を生きる世代が借金に繰り死んでいる」現状であり、今の政権が最優先に克服しなければならない課題は、「今の経済状況を改善することだ」ということである。

「今を生きる世代が借金に苦しんでいる」ことを無視して、「これから生まれてくる世代に借金だけを残す政治でいいのか」などと問いかけをすることは、「政治の先送り」以外の何物でもない。「現状」を打破出来ない政治が、どのようにして「夢のある将来」を構築できるというのだろうか。

日本経済新聞は、「『これから生まれてくる世代に借金だけを残す政治でいいのか』との首相の問いかけへの答えにはならない」と主張するが、マスコミが批判すべきは、「デフレと円高に苦しむ経済状況下での消費増税で、財政再建が出来るのか」という国民の問いかけに対して、野田政権は「待ったなし」という無意味な言葉を繰り返すだけで全く何も答えていないことのはずである。

「このままならワニの口はさらに開いてカバの口になる。そのうちアゴが外れて国家財政が破綻しかねない」

このコラムの中では、経済同友会の長谷川代表幹事の発言が引用されている。しかし、多くの国民の生活破綻という代償を払うことで国家財政の破綻を防ぐ考え方が、果たして政治のあるべき姿なものなのだろうか。

財界や、財界をスポンサーとする主要メディアは、「カバの口」を塞げと主張するが、多くの国民が塞ぎたいのは「カバの口」ではなく、詭弁と無意味なキャッチフレーズを繰り返す「ドジョウの口」のはずである。
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近藤駿介

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