現実離れした「名実逆転」~野田流「決められる政治」の神髄

「内閣府は16日、2013年度の経済成長率見通しについて実質1.7%増、名目1.9%増とする方針を固めた。実現すれば、デフレ経済の象徴だった名目が実質を下回る『名実逆転』を、16年ぶりに解消することになる」

内閣府は来年度予算の概算要求基準の前提となる最新の経済見通しを17日の閣議に提出することを決めた。最大のポイントは、総合的な物価動向を示すデフレーターが16年ぶりに上昇に転じることで、デフレ経済の象徴だった名目成長率が実質を下回る「名実逆転」現象が解消されること。日本経済新聞は、「名目成長率の上昇で来年度の税収見積もりが増える可能性もある」と気の早い報道をしている。

「景気は気から」ということなのか、内閣府は13日発表した2012年4-6月期実質GDPが、前期比プラス0.3%、年率換算プラス1.4%と、大震災以降4四半期連続のプラス成長となったものの、消費の予想以上の減速によって、前期比1.3%プラスを記録した1-3月期から減速し、事前予測を大きく下回ったことなど全く意に介していないようだ。

こうした「眉唾見通し」を閣議決定するというのは、「11~20年度の平均GDP成長率が『名目3%程度、(物価変動を除いた)実質2%程度』」という景気条項を消費増税法に明記したからである。

景気条項に明記された「2011~2020年度の平均GDP成長率が名目で3.0%」を達成すると、2020年度の名目GDPは2011年度の約470兆円から613兆円強と、30.5%増加することになる。この名目GDP 613兆円という水準は、過去最高の2007年度の水準を17.6%上回るもの。因みに、2011年度の名目GDPは、1997年度から9.8%低い水準にある。

仮に、政府の今回の見通しが正しく、2013年度に名目ベースで1.9%成長を達成したとしても、2020年度に名目GDP 613兆円超を達成するためには、2014年度以降2020年度まで年平均3.14%の成長を続けなければならず、消費増税法に明記された「名目で3%」という景気条項を上回る経済成長を達成しなくてはならない計算となる。

消費増税は、統計上名目GDPを嵩上げする効果はあるが、名目GDPの最高が、前回消費税が3%から5%に引き上げられた1997年であることを考えると、統計上の嵩上げ効果よりも、実体経済に与える悪影響の方が大きいことは明らかである。

1980年以降のGDP統計をベースに計算すると、10年間の平均成長率が、景気条項に明記された「名目GDP3%、実質GDP2%」という条件を満たしたのは1989年(1980年から1989年のGDPを基にした平均成長率)から1997年迄であり、それ以降の15年間この条件を年度ベースでは満たしていない。

こうした現実を考えると、消費増税原理主義政権は、景気条項に明記された条件を年度ベースではなく、四半期データに基づく「前期比年率」で判断するはずである。「前期比年率」で計算すると、1994年度以降、景気条項をクリアしたのは、全73期のうち今年の1-3月期も含め15期(確率約20%)ある。

今回の「眉唾見通し」は、野田内閣など消費増税原理主義者の手に掛かってしまえば、実際のGDP成長率が鈍化しようと、事前予想を下回ろうと、国内の景気状況は閣議決定によって簡単に「消費増税に耐え得る」ものにされてしまうリスクが極めて高いことを示唆したものである。閣議決定によって、景気動向さえも事実とはかけ離れたものに決めてしまうのが、野田流の「決められる政治」の神髄である。日本に必要なのは、「詭弁を駆使して決める政治」ではなく、「客観的な事実に目を向ける政治」である。
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