「一票の格差是正」か「身を切る改革」か~「国民の信」が結果に反映され難い選挙制度

「選挙制度は議員の地位に関わる問題であり、もっとハイレベルで政党間の協議をすべきだ」

思わず本音が出た、ということなのだろう。21日から衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で、民主党が提出した衆院選挙制度改革関連法案の質疑が始まったが、野党側はこのような主張をして委員会を欠席。民主党のみでの審議入りとなった。

民主党の提案する衆議院選挙制度改革法案の良し悪しはともかく、国民の基本的な権利であり民主主義の根幹をなす「一票の格差」を、「議員の地位に関わる問題」だと捉えているような議員達に、選挙制度を議論してもらいたくはない、というのが国民の本音ではないだろうか。

「一票の格差」を「国会の地位に関わる問題」としか認識できない議員達と、「国民の声」を「大きな音」としてしか認識できない総理に、「希望と誇りある国・日本」の夢を託さなくてはならないところが今の日本の不幸なところ。

「近いうちに国民に信を問う」発言もあり、永田町では選挙モードが強まって来ているようだ。そうした中、民主党は小選挙区を5つ減らす「0増5減」を行うとともに、比例代表の定数を40削減する選挙制度改革法案を審議入りさせることで、「政治家自らが身を切る姿勢」の演出作りと、政権の延命を図っている。

選挙制度の議論は、違憲状態とされる「一票の格差」の是正と、消費増税を正当化するための「歳出削減」の両面からなされている。どちらも重要な要素だが、「国民の信」をより正しく表すという視点からの議論がなされていないことは残念である。

「近いうちに国民の信を問う」機会が訪れたとしても、時事通信の直近の世論調査で、政党支持率で13.3%の自民党と、6.9%の民主党のどちらかが比較第一党になる可能性が極めて高い選挙が「国民の信」を問う選挙と言えるものなのか、甚だ疑問ではある。形として「国民の信を問う」ものであったとしても、結果が「国民の信」を表すものでなかったら意味はない。

「国民の信」をより正確に結果に反映させるという点を重視するのであれば、69.3%に及ぶ「支持政党なし」という民意を選挙結果に反映させる仕組みづくりが必要不可欠である。

そのためには、やや極論ではあるが、選挙において「該当者なし」「支持政党なし」という投票を可能とし、小選挙区では「該当者なし」の投票数を上回る得票を獲得することを当選要件とし、比例代表では「支持政党なし」を一つの政党と同様に扱い各政党に議席を割振るようにすることも検討すべきではないだろうか。

「該当者なし」がトップとなった選挙区では国会に議員を送れなくなるため、「一票の格差」という点では、議員を出した選挙区との格差は名目上無限大ということになる。しかし、有権者から「国政に参加するに値する候補者」と見做されなかった候補者を国政に参加させる愚に比較すれば、「民意の反映」という点では勝っているとも言える。

また、比例代表選挙において「支持政党なし」を投票として求めれば、その得票数が増加すれば、自動的に国民から支持を受けない政党の議席数と、比例代表による当選者数が減ることになる。これにより、国民は「選挙制度は議員の地位に関わる問題」だと認識している現職議員達による議員定数削減議論という、民意を反映した形での結論が出ないことが分かっている空虚な議論に延々と付き合わされる苦痛から解放されることになる。

今のような状況で、「該当者なし」「支持政党なし」という投票を認めれば、国会議員の数は劇的に減ってしまうかもしれない。しかし、メディアで名前を売った有名人を選挙に担ぎ出すという、国会議員の粗製乱造という風潮を食い止めるためには、それも仕方がないことである。国民の政治への信頼が回復すれば、議員数も自然と元に戻るはずであるのだから。

今のような「国民の信」が形となって表れにくい選挙制度を修正して行かなくては、民意を反映した「決められる政治」など望み薄である。そのためには、「該当者なし」「支持政党なし」という投票を認めたり、コストをかけても有権者が陥る「囚人のジレンマ」を解決すべく選挙を2回に分けて実施して国民の理性をより選挙結果に反映させたりする工夫をするなど、思い切った選挙制度改革が必要な時期に来ている。

民意を反映していない政権による「決められる政治」からの決別こそが、「待ったなし」の政治課題である。
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コメント

No title

毎回の素晴らしいエントリに「我が意を得たり」です。

ただ、本エントリ内の “有権者が陥る「囚人のジレンマ」”に関してのみ、上手く把握しきれませんでした。(当方の勉強不足です)
これは後続の文章から読み取れば、有権者が陥りがちな「アナウンスメント効果」に対しての言及なのだろうか?と考えておりますが、如何でしょうか・・・

No title

助左衛門様 ブログを読んで頂き、またコメントをお寄せ頂きありがとうございます。
当り前ですが、有権者は選挙の結果がどうなるかを知らないで投票をします。積極的に支持する政党や政治家が少ない今のような状況下では、相対比較で消極的な支持を表明します。でも多くの有権者が同じような行動をとると、予想以上の議席を与えてしまうことがあるわけです。小泉内閣や政権交代選挙なども、有権者が必要以上に多くの議席を与えてしまった例かもしれません。そうした雪崩現象を恐れて支持しない政党や政治家に投票したり、危険をしたりする行動もとり難い。
こうした有権者のジレンマを防ぐ一つの方法として、選挙を2回に分けて実施するなどの工夫が必要なのではないかと考えている訳です。
こうした有権者のジレンマを「囚人のジレンマ」に例えたのですが、分かり難い表現だったかもしれません。今後はもう少し分かりやすい表現が出来るよう勉強したいと思います。
今後とも宜しくお願いいたします。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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