領有権問題~「近いうちに国民の信を問う」政権の目の前に現れた「不退転の覚悟で臨む」課題

「国家が果たすべき最大の責任、それは平和を守り、国民の安全を保障することです。国の主権を守り、故郷の領土、領海を守ることです。私は、国政全体を預かる内閣総理大臣として、この重大な務めを毅然とした態度で冷静沈着に果たし、不退転の覚悟で臨む決意であります」

延長戦狙いの「9回裏最後の捨身の攻撃」といったところなのだろうか。24日、野田総理は領有権問題について、首相官邸での臨時の記者会見でこのように述べた。

「首相が領土問題について記者会見を行うのは異例のこと」と報じられているが、「近いうちに国民の信を問う」と明言している総理が、主要テレビ局全てで放映された臨時記者会見で「国政全体を預かる内閣総理大臣として、この重大な務めを毅然とした態度で冷静沈着に果たし、不退転の覚悟で臨む決意」を示すのも異様な印象を与えるもの。

「不退転の決意」で成立を図った社会保障と税の一体改革関連法案を、自民党をたぶらかした3党合意によって可決した野田総理の目の前に、新たに「不退転の覚悟で臨む」対象が出て来てしまったことは、延命第一の総理にとっては絶好の機会、国民にとっては最悪の事態。

「近いうちに国民の信を問う」ことを約束し、その退陣時期が焦点となっていたところに、ナショナリズムに火をつけるような事態が続発したのは、果たして偶然だったのか、筋書き通りだったのか。

穿った見方であるかもしれないが、オスプレイの安全性とその配備を巡り大きな議論が起きている中で、本土から離れた島で領土問題が発生したのは、タイミングが良過ぎる偶然。オスプレイ自体の安全性よりも、国の安全性の方が重要度としては高いのは当然で、安全性に多少の懸念があったとしても、日本領土の安全を守るためにオスプレイの配備も止む無しという方向に世論が向かうとしても不思議なことではない。

真偽のほどは定かではないが、レームダックになっている野田政権にとっては、米国に借りを返した上に、「政治の空白は許されない」というお得意の我田引水論理を展開する最大のチャンスが訪れた格好。「政権維持が第一」の野田政権が、その目的のために国民を不必要なリスクに晒せたということがないことを祈るばかり。

野田総理の緊急記者会見に先立って、衆議院は24日の本会議で、島根県の竹島に韓国のイ・ミョンバク大統領が上陸したことと、沖縄県の尖閣諸島に香港の活動家らが上陸したことに抗議する決議を、それぞれ民主党や自民党などの賛成多数で採択した。

驚いたことは、「全会一致」ではなく、「賛成多数で採択した」ところ。共産党、社民党、新党大地・真民主などは反対に回った。共産党と社民党が決議案への反対した理由は、「尖閣の領有権は鮮明に日本にあるが、民主、自民両党ともきちんと主張してこなかった。竹島も交渉のテーブルを作ることが大事だ」「尖閣や竹島の問題を政局的に利用しようとしている」「ちょっと刺激的過ぎる内容」という「政局的」な理由だったことが、非常に小さな扱いで報じられている。

決議に反対した政党の支持率は、合計しても2%に届かない程度であり、「政局的」にはほとんど影響もなく、報道する価値はないかもしれないが、「近いうちに国民の信を問う」という状況下では、各政党の行動ぐらいは報道してもらいたいものである。

今回の領有権問題は、この秋に政権が交代する中韓と、「近いうちに」下野することが確実視されている日本の3国の指導者によるチキンレースとなって来ている。消費増税法案で下らない民自公3党のチキンレースを見せられた日本国民は、今度は日中韓による危険なチキンレースに付き合わされることになってしまった。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR