維新の会「公開討論会」~認識にズレのある参加者達による「ちぐはぐな議論」と「収穫」

9日、国会議員7人が参加して行われた「大阪維新の会」が開催した公開討論会は、議事進行の稚拙さもあり、正直中途半端、ちぐはぐなものとなった。

「われわれはすべてにおいて、方向性を決定するグループの結成を目指しており、本当に価値観が一緒かどうか確かめあう場にしたい」

公開討論のちぐはぐさは、橋下市長のこうした発言で始まった公開討論会が、討論終了後には「みんな価値観は一緒だと思う。最初から一致しているからきょう参加してもらったが、それを発信できた」と変化したところにも十分現れている。

討論会に出席した東国原前宮崎県知事の「そもそも、ここにこられた方は価値観ある程度共有した方が集まってきていると思う。今更『同意しますか』というのはどうなのか」という発言に象徴されるように、もし、維新の会が、報道されていたように、今回の討論会を「国会議員の新党合流の可否を決定するための会」と位置付けていたのだとしたら、出席者との間に認識ギャップがあったことになる。「価値観が一緒であるか確かめ合う場」とした維新の会に対して、参加者は「価値観を共有した人による討論会」と捉えていたのだとしたら、討論会がちぐはぐなものになってしまったのも致し方ないこと。

参加者の間で認識のズレがあったにせよ「価値観の共有」がテーマであったことから、参加した国会議員や現職、元職の首長達の発言は、維新の会が掲げる「道州制」の肯定を前提としたもので、これまで自分(達)がどれだけ「道州制」に尽力して来たかの自己PR的なものが多く、「道州制」が日本再生のあるべき姿であるかは議論の対象にもならなかった。

また、「価値観が一致するかどうかの場にしたいので、有識者のみなさん、ぜひ(国会議員たちを)玉砕させてください」という橋下市長の厳しい言葉とは裏腹に、議論そのものにはさしたる突っ込みもなく、討論というより出席者が持論を披露する展開となった。

議事進行の稚拙さもあり予想外に長い時間が割かれた「教育」に関しての議論では、学校経営に競争原理を持ち込み、ダメな学校は倒産させるというのが「共有された価値観」のようであった。しかし、学校が倒産した場合に影響を受けるのは生徒達である。学校の運営者が「自己責任」で倒産に追い込まれるのは致し方ないとしても、学校運営に直接関わることの出来ない生徒達にまで学校運営のリスクに関して「自己責任」を問うという考えに、全く反論も出なかったことは不思議でもある。

「自立と競争」という原則の下、多くの事業者に参入機会を与え、競争に敗れた駄目なものは淘汰していくという、強い種を残していくための弱肉強食の考え方には一理はある。しかし、年金業界で起きたAIJ事件をみても明らかなように、単純に参入障壁を引下げ多くの業者の参画を促し、結果責任で業者を淘汰していくやり方は、必ずしも全ての業界に相応しいものではない。教育委員会という、国民から敵視されている組織を破壊するために、単純に教育分野に競争原理を持ち込むことが、日本のあるべき姿なのだろうか。既に「競争原理の導入」という「価値観を共有している」参加者による討論では、こうした根底の議論はなされなかった。

今回の討論会の特徴は、個別議論を避け全体論を議論するという方針から、教育などを除いて、消費増税やTPP、領土問題、オスプレイ配備など、国民的関心の高い直近の財政・外交に関する課題について殆ど議論らしい議論はされなかった。そこからは、政党要件を満たすために5人以上の国会議員を確保する必要のある維新の会と、沈みゆく既成政党からの脱出先を確保したい国会議員の双方が、「価値観の共有」の演出を優先しなくてはならないという「共有する事情」を抱えていたことが透けて見えるようであった。

公開討論自体のちぐはぐ感は強かったものの、維新の会の政調会長で、政治塾の運営委員長でもある浅田均・大阪府議会議長の議事進行の稚拙さや、大阪府知事・松井幹事長のプレゼンテーション能力の低さなどが十分に伝わったことは、有権者にとっては大きな収穫でもあった。幹事長、政調会長の発信力の乏しさを目の当たりにすると、維新の会の弱点が巷間指摘されている通り、橋下知事以外は烏合の衆になりかねないという点にあることは明らかになった。

内容の是非はともかくとして、橋下知事と松井幹事長、浅田政調会長との間に「発信力格差」があり過ぎることを見せつけられると、今後、維新の会の人気にあやかって来る議員や候補者に多くを期待することは難しいだろうというのが素直な感想。維新の会が第三局として政治の主役になれるかどうかは、橋下市長がこの弱点をどのようにして補っていくかにかかっている。幹事長、政調会長という幹部の実態を見ると、これはかなり大変な作業であることは間違いない。

維新の会が試みた公開討論会は、「価値観の共有」を演出するために、「総論賛成」の段階までしか踏み込まず、内容的には期待外れの感は否めなかった。しかし、政治家による政治・社会改革の難しさを改めて知らしめるという点において、有意義な試みであった。今後毎週実施される討論会では、議事進行の技術を高めてもらい、もう少し「各論」に迫って貰いたいものである。今回の公開討論会で、国会議員5人以上という政党要件が満たされることは確実になったのだから。
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コメント

目的と手段

橋下氏の「国家経営は会社経営と同じ」という様な、散見されるこうした発言・認識等々。
また、『維新八策』の中身を鑑みても、
現段階で彼らが一致団結、どこまで大所帯の国政政党と成り得るのかは疑問。
詳しくは伏せますが、やはり党内部でかなりの温度差があるとの事です。
無党派層は維新の会をどのように俯瞰しているのでしょうね・・・
私自身は「基本的に不支持でありつつ、各論冷静に検討」のスタンスです。

No title

助左衛門様 コメントをありがとうございます。維新の会が日本を変える国政政党になるのは、現時点では期待薄だと思います。ただ既成政党中心の日本の政治からの脱却という過渡期において一定の役割を果たすかもしれないとは考えています。既成政党の余りの体たらくの状況を見ると、選択肢の一つになり得るのではないでしょうか。
個人的には、個別の企業(ミクロ)ベースの勝ち負けは重要かもしれませんが、マクロ経済や教育などに勝ち負けを持ち込むところに無理があるように思います。橋下市長は弁護士ですから勝ち負けに拘るのでしょうが、世の中の価値観は勝ち負けだけではありません。勝ち負けの価値観を最重要視して来た金融業界の現状を見れば、勝ち負けに拘り過ぎる社会の行き着く先が見えるのではないでしょうか。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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