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反日デモによる日本企業の被害は、「外交の失敗」ではなく「内政の失敗」である

日本政府が沖縄県尖閣諸島を国有化したことを契機に中国各地で連日繰り返される大規模な反日デモによって、中国各地で日本の有名企業も暴力行為の標的となり、工場の操業停止や店舗の臨時休業に追い込まれる事態となった。

今回の反日デモについて、殆どの日本メディアは「外交の失敗」という表現に代表されるように、日中の外交問題だとして取り扱っている。しかし、見落としてはならないことは、今回の事態は「アジアの成長を取り込む」という日本の成長戦略の危うさが顕在化したという、「内政の失敗」でもあるということである。

人件費の安さなどコスト競争力を高める目的に、実に20,000社を超える日本企業が中国に進出している。そして、日本からの中国への対中直接投資(実行ベース:JETRO調べ)は、2009年900億ドル、2010年1,057億ドル、2011年1,160億ドルと、この3年間で3,000億ドル(約24兆円)を超える巨大なものになっている。

日本経済が円高・デフレから脱却出来ないでいることで、日本の企業は「アジアの成長を取り込む」というお題目を唱え、過去3年間の日本の名目GDPに占める民間設備投資額合計の13.5%に相当する巨額な投資を中国に振り向けて来た。しかし、今回の反日デモによって、工場を放火されたり、店舗を破壊されたり、略奪されたりする想定外のコストを支払うことになった。

今回の反日デモによる金銭的被害は、これまでの投資金額に比較して微々たるものかもしれないが、「アジアの成長を取り込む」ために中国に進出した日本企業が、実際に「アジアの成長を取り込む」ためは、「中国が冷静な対応をし続ける」ということが必要条件あることが明らかになった。

「中国が冷静な対応をし続ける」ために問われるのが日本の「外交力」ではある。しかし、日本政府がコントロール出来ない「中国の冷静な対応」に日本の成長を過度に託すような政策は、「内政の失敗」「政府の責任放棄」でもある。

日本のメディアは、今回の反日デモのような、中国における日本企業に対する破壊行為等を防ぐために、より一層の現地化が必要である、と主張する有識者のコメントを尤もらしく報じている。しかし、中国を筆頭に進出先の「政治リスク」を抑制するための基本的な選択肢は、過度な海外進出を慎むことである。

「原発ゼロを進めれば、電力価格の上昇により企業のコストが圧迫されかねないと懸念している。この結果、企業の海外流出が進み、雇用が維持できなくなる」

18日、経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体のトップは都内で記者会見し、政府の「2030年代原発稼働ゼロ」の方針に揃って異を唱えるという異例の表明をした。また同時に、今回の中国における反日デモに対して「ハイレベルな対話をいくつもパイプを持ちながら進めるべき」と指摘、政府の外交努力を促した。

国内では「脱原発するなら海外進出し、雇用を維持できない」と政府を脅し、同時に政府に海外進出先の「政治リスク」への対応を迫るという経済界の主張は、決して健全なものではない。海外進出は基本企業の「自己責任」でやるものであり、進出先の「政治リスク」を「政府の外交力」によってヘッジをしようというのは、余りに虫の良い主張である。

今回の中国における反日デモによって、海外進出の「政治リスク」の高さが明らかになった。今回の経験を活かし、日本の企業は「政治リスク」に伴う破壊活動等によって生じる損害をコストと認識し、日本に留まった場合に生じる人件費等のコストや円高リスクと、公正に比較するべきである。

一方政府は、「アジアの成長を取り込む」などという尤もらしいキャッチコピーを垂れ流すことに満足せずに、日本企業が過度な海外進出に追い込まれないよう、円高等の対応可能な政策対応に注力するべきである。これまで中国への直接投資に振り向けられて来た日本企業の資金を、国内投資に回せれば、日本経済復興の大きな原動力になるはずである。

政府が認識するべきことは、自らが正しい政策を採れば、企業の過度な海外進出をしなくても「アジアの成長を取り込む」ことは可能である。ということである。自らコントロールすることが不可能な「中国の冷静な対応」を前提とした日本の成長戦略は、政府の「責任放棄」である。
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コメント

No title

こんにちは。

いつも適時適切な、とくに今エントリーはお見事です。
イオンでは買い物客に200円チケットを配っていまして、レジの女性に上の人間にひとりの客の声を、そのお金は従業員の最低賃金の底上げに投じてと伝えて欲しいと申してきました。買い物客のお母さん達も同じなんですから、国内の労働市場を建て直さないといけませんよ。

番外ですが、各人士は拝外思想を煽るのはやめて欲しいものですよね。日中友好のたいまつを日本人は高く掲げて欲しい。

では。

No title

こんにちは。

すみません・・赤面して語句訂正を。
拝外思想は既にご承知の如く「排外思想」の間違いでした。

ここを読むときは結構力を入れてるつもりでしたが・・ついつい。

では。

No title

単純な者様 この度はコメントをお寄せ頂きありがとうございます。小職の拙いブログが、僅かでも何かのお役に立てるのであれば大変嬉しく思います。今後とも宜しくお願いします。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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