「成長重視」へ明確に方向転換したIMFと、大スポンサーである「変われない国、日本」

「この問題は成長なしに解決できない」

IMFのラガルド専務理事は12日、IMF・世銀年次総会での挨拶で、最大の問題は公的債務だと指摘する一方で、その解決は「成長なしに解決出来ない」と発言。共同声明にも、先進国には「財政政策はできる限り成長に資するように、適切に行われるべきだ」とし、「行き過ぎた緊縮財政に対する警鐘」を盛り込み、IMFが先進国の財政再建に軸足を置いていた姿勢を修正し、世界経済を成長軌道に戻すための「成長重視」に軸足を移したことを明確にした。

「財政再建と経済成長の両立」というここ数年間の議論に一定の結論が出たと言える。「財政再建」と「経済成長」のどちらが大事かということではなく、緊縮財政による「直接的財政再建」を優先しても、「財政再建」という目標に到達出来る可能性が低いという事実が世界の共通認識になったということ。方向性として、世界は「経済成長」を通して「財政再建」を図る、「間接的財政再建」に舵を切ろうとしている。

こうした中、12日に、IMFのラガルド専務理事と会談した野田総理。会談については、野田総理が「日本経済が欧州債務危機と円高のリスクに直面していると指摘し、懸念を表明。また、消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革を進めることで財政健全化に取り組む姿勢も強調した」ことは報じられているが、不思議なことにラガルド専務理事の反応については、「同専務理事からは今回の総会ホスト役への謝辞とIMFへの協力に感謝の発言があった」ということ以外、殆ど報じられていない。

IMFが明確に「成長重視」の姿勢を明確に表明したなかで、ホスト国の総理から「緊縮財政による財政健全化に取り組む姿勢」を強調する姿を見せられ、呆れてものも言えなかったのかもしれない。

こうした「国際音痴総理」に任命された城島「ド素人財務相」も、国際通貨金融委員会(IMFC)が声明で、日本に赤字国債発行法案の早期成立を促したことについて、「しっかり受けとめ、財政の信認が揺るがないように財政健全化と赤字国債発行法案の成立を速やかに進める努力をする」との考えを明らかにした。

IMFが今回、日本に赤字国債発行法案の速やかな成立を促したのは、「財政健全化」を求めてのものではない。これは、予算執行に支障を来すことで、意図せざる「財政の崖」が生じてしまうことを回避するためである。

IMFが日本の赤字国債発行法案の早期成立を期待するというのは、日本の財政支出が滞ることで日本の「成長」が損なわれるからである。「成長重視」路線に転換したIMFが、政府の財政支出による復興需要以外に成長のエンジンのない日本で、必要な財政支出が止まることは避けたいと考えるのは、筋の通った話。「消費増税原理主義」に洗脳されてしまっている「国際音痴総理」と「ド素人財務相」には、赤字国債発行法案の問題が予算執行の問題であり、「財政健全化」ではないことを理解させるのは、「財政再建と経済成長の両立」以上に難しいことなのかもしれない。

ラガルド専務理事が、IMFの方針を無視するかのような主張をするホスト国の総理に、政策に対する発言を避け、「ホスト役への謝意とIMFへの協力に感謝」という差しさわりのないものにとどめたのは、日本が今回もIMFに多額の出資をすることを表明したからである。

欧州債務危機を受けて、今回IMFは4,560億ドル(約35兆6000億円)の資金基盤強化を実施した。その中で日本は600億ドル(約4兆7000億円)の拠出に応じ、最大の拠出国となっている。

ラガルド専務理事が、国際通貨金融委員会(IMFC)終了後の記者会見で、日本で消費増税法が成立したことに関して「正しい道を歩んでいる」と評価する発言をしたのも、大スポンサーに配慮したもの。「緊縮財政」自体は「経済重視」により「間接的財政再建」に舵を切ったIMFとは意見は異なるが、「財政再建」という目的自体は「正しい」という大人の対応と言える。

「東京で48年ぶりに開いた総会は、東日本大震災からの復興をアピールする格好の機会となった」

14日付の日本経済新聞は、「世界経済の負の連鎖を確実に断ち切れ」という題名の社説の中でこのように主張している。確かに、「東日本大震災からの復興」については、多少なりともアピールが出来たかもしれない。被災地の復興はまだまだだが、IMF総会が開かれた東京国際フォーラム周辺は、新しい東京駅舎がお目見えするなど、震災の影響を感じられない大規模なビル建設も続いているのだから。

今回世界にアピール出来た(してしまった)のは、未だに「失われた20年」から脱却できない日本であり、その原因にもなっている国際社会、国際経済の変化に対応出来ない「変われない政治」、そして、何代も続けて素人財務大臣を生み出す「無責任な政治」である。

「日本が直面する円高やデフレ、少子高齢化などの懸案についても、ある程度は理解を深めてもらえたのではないか。こうした経験を主要国に共有してもらう努力は、今後も続けた方がいい」

この社説は、こうした文言で結ばれている。しかし、「円高やデフレ」は、日本の政策的無策の結果でしかない。「こうした経験を主要国に共有してもらう努力」というのは、自らの失政を、世界からの同情で乗り切ろうとする受け身の思想でしかない。

20年以上、何の問題も解決出来ていない今の日本には、「他山の石」として以上に主要国に共有してもらえる経験はない、というのが現実である。日本政府が努力するべきものは、「他山の石」として「こうした(失政の連続という)経験を主要国に共有化してもらう努力」ではなく、困難な経済問題を世界に先駆けて解決した国として、「その経験を主要国に共有してもらえるようになる努力」である。
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