年金基金のずさんな運用(続)~「世界で最も早く高齢化が進む国」が盲目的に取り入れた「高齢化後進国」のルール

長野県建設業厚生年金基金の未公開株式投資に係る「投資詐欺」事件が、AIJ事件と大きく異なる点は、AIJ事件においては「詐欺の被害者」であった年金基金が、今回の未公開株式投資に関しては、年金基金の事務長(業務上横領容疑で指名手配中)が「詐欺的行為の首謀者」として加担していた可能性があることである。

未公開株式ファンドを運用していたRB社は、「適格機関投資家等特例業者」という届出でファンドの運用を行っており、年金基金と投資一任契約を締結するのに必要な「投資運用業」の登録業者ではなかった。RB社は、年金基金と直接投資一任契約を締結出来ないため、投資一任業務が出来るソシエテジェネラル信託銀行や、「投資運用業」の登録業者であるユナイテッド投信投資顧問、スタッツインベストメントマネジメントという「箱」が必要だったのである。

こうした「投資一任業者」をダミーに利用するスキームは、年金基金がそれを了解していないと成立しないものである。

長野県建設業厚生年金基金が投資した未公開株ファンドを通して、基金の運用資産がRB社が香港で実質的に支配するベンチャーファンドに流れた(そのファンドが保有していた実態の定かでない企業の株式を買取った)という憶測も報じられているが、これが事実なら、このスキームはそれを目的に構築されたものであると考えるのが普通である。

今回の事件を「運用難に陥った年金基金がリスクの高い未公開株に投資して多額の損失を出した」と論じるむきもあるが、このスキームは「運用収益」を狙った投資ではなく、始めから「運用資金を特定のところに流すための詐欺的行為」として仕組まれたものであったことは、報道等から推察されるスキームを見る限りほぼ確実である。

未公開株投資スキーム

1990年のバブル崩壊後、日本の政策当局は、株価を下支えするために長期投資が可能な年金資金を株式市場に投入して来た。さらには、外国からの強い要請もあり、「規制緩和」という錦の御旗を掲げて投資顧問の年金参入、さらには登録制へと突き進んで来た。しかし、金商法等の法整備に盲点があったこともあり、日本国民の大切な資産の一部は「詐欺的行為」によって失われてしまった。

「世界で最も早く高齢化が進む国」が、「高齢化後進国」である欧米流の投資ルールを盲目的に取り入れて来たことのツケが回ってきた格好である。「世界で最も早く高齢化が進む国」には、「高齢化後進国」にはない独自の投資ルールを世界に先駆けて設ける必要がある。「高齢化後進国」のルールを盲目的に取り入れるのは、老人に過酷な筋トレを課すようなものである。求められるものは、「高齢化後進国」向けの過酷なルールを「規制緩和」と称して取り入れることではなく、「世界で最も早く高齢化が進む国」にあったルールである。
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