「輸出停滞の長期化が心配だ」と?~「個人消費総崩れ」は心配じゃないんですか?

「日本の輸出が停滞している。この状態が長引き、景気の足を引っ張るのが心配だ。…(中略)…輸出額は前年同月を10.3%下回り、4カ月連続の減少となった」

23日付日本経済新聞は、「輸出停滞の長期化が心配だ」という題名の社説を掲載。輸出鈍化による日本経済への悪影響を懸念し、「政府・日銀は今後の経済運営に細心の注意を払わねばならない」との主張を展開している。日本経済の先行きに心を砕くとは、さすが、「日本を代表する経済紙」と言いたいところだが、実態はそうではない。

22日には財務省から9月の貿易統計速報が発表され、貿易収支が3カ月連続で5,586億円の赤字となったことが明らかになった。5,586億円という赤字幅は9月としては1979年の統計開始以来過去最大。ちなみに1979年はイラン革命による第二次オイルショックの年。

しかし、22日に発表された経済統計は、貿易統計速報だけではない。「9月のコンビニエンスストア売上高」「9月の全国スーパー売上高」「9月の全国百貨店売上高」「9月の民生用電子機器の国内出荷額」という個人消費の動向を計る経済指標も発表されている。

それぞれの統計の結果は、「9月のコンビニエンスストア売上高」は「既存店ベースで1.6%減となり、4カ月連続の前年実績割れ」。また、「9月の全国スーパー売上高」も「既存店ベースでは前年同月比2.0%減少と、7カ月連続で前年実績割れ」、さらに「9月の全国百貨店売上高」も「既存店ベースで前年同月比0.2%減と、5カ月連続で前年実績割れ」。とどめは「9月の民生用電子機器の国内出荷額」。こちらは「前年同月比37.4%減の1205億円と、14カ月連続前年実績割れ」で「薄型テレビの出荷台数は62.5%減の42万7000台」と、「前年割れ」のオンパレード。

この社説は「外需の低迷に内需の足踏みも重なり、7~9月期の成長率は5四半期ぶりのマイナスに転じたとの見方が多い」と、「輸出の停滞が景気の足を引っ張る」という主張をしているが、もともと日本経済の現状は「個人消費総崩れ」で、「個人消費が景気の足を引っ張っている」と言える状況にある。こうした「個人消費総崩れ」という日本経済の惨状を、「輸出」と「復興需要(公共投資)」が目立たないようにしてくれて来たというのが実態である。

こうした環境下で、ことさら「輸出の停滞」を強調し、「この状態が長引き、景気の足を引っ張るのが心配だ」と嘆いて見せるのは、「個人消費総崩れ」という日本経済の実態から、国民の目を逸らさせるためのもの。

「このまま景気が悪化し、2014年度からの消費増税に支障をきたすのでは困る」。「日本を代表する経済紙」の目的は、この一文に全て集約されている。

消費税増税法に盛り込まれた「景気条項」により、増税実施の判断は2014年4月の最初の税率引き上げの半年前にあたる2013年秋に行うとされている。つまり、それまで「景気が悪い」という事実が国民の共通認識にならないように誘導していくのが、「新聞への課税強化は民主主義の維持・発展を損なうものであり、新聞には軽減税率を適用するよう強く求める」との決議を採択した日本新聞協会の主要メンバーである「日本を代表する経済紙」の重要な使命なのである。

仮に消費増税実施の判断を行う2013年秋の景気状況が、「景気条項」に抵触するような状況であったとしても、「景気の停滞は輸出の停滞という不可抗力によるもの」だという世論さえ作りあげておけば、強行突破出来るという算段なのだろう。

民主、自民、どちらが政権を担っても、「消費増税原理主義者」が政権を維持する限り、消費増税の実施を判断する2013年秋まで「景気条項」に抵触しないように、金融政策と「復興」という名のもとのバラマキも含めた財政政策を総動員することになるのだろう。

その結果、景気が回復すれば大手を振って消費増税が実施可能となるし、万が一景気が思惑通りに回復せず、財政赤字だけがさらに膨らむことになれば、日本のメディアが、「財政再建のために消費増税が必要である」という主張を正当化する大キャンペーンを張ることで消費増税を実現する、という2面作戦が「消費増税原理主義者」が描いているシナリオのはずである。

国民は、消費増税の実施が確実になるまで、「日本を代表する経済紙」を筆頭に、メディアは総力を挙げて「日本経済が堅調である」かのような現状を歪めた報道を繰り返す可能性が高いということを認識しておく必要がありそうだ。
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まとめ【「輸出停滞の長期化が】

「日本の輸出が停滞している。この状態が長引き、景気の足を引っ張るのが心配だ。…(中略)…輸出額は前

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