中国は高成長国家であり続けられるのか~歴史は繰り返さない

「日本の最大の輸出先がほぼ4年ぶりに中国から米国に交代する可能性が出てきた。日中関係の悪化という足元の事情にとどまらず、中国の成長力の低下というより根深い要因を挙げる声が目立つ。輸出の勢いで浮かぶ『米中再逆転』の様相は日本の政策や企業の戦略を再考する機会になる」

5日付日本経済新聞は「エコノフォーカス 中国 根深い成長鈍化」という記事を掲載。このなかで、7四半期連続で実質経済成長率が低下した中国経済の減速要因として、景気循環や日中関係の悪化という短期的要因だけではなく、農村から都市への労働力の供給が底をつき、人手不足に陥る「ルイスの転換点」を迎えた可能性や、2010年代に生産年齢人口がその他の年齢層を上回る状態である「人口ボーナス」のピークを過ぎるという、構造的な変化が原因となっている可能性を指摘している。

確かに中国での「ルイスの転換点」や「人口ボーナス」など、社会構造の変化が経済に大きな影響を及ぼしていることは間違いない。しかし、今の日本で繰り返されている「成長する中国」という議論の中で欠けているのは、「時間軸」の概念である。

「高度成長局面では、農村からの労働供給が一つの大きな鍵を握ります。この観点から、日本と中国の都市人口比率を比較しますと、現在の中国の水準は概ね日本の高度成長期にあたる1960 年代頃に相当しています。所得水準の向上に伴う消費ブームという観点から自動車の普及率を比較すると、やはり中国は日本の1960 年代に相当しています。このような単純な比較論だけからすると、中国経済は今後とも高成長を続ける可能性が高いと思います」

白川日銀総裁のこうした発言(2011年5月5日「フィンランド中央銀行創立200周年記念. 会議における発言」)に代表されるように、日本における議論の思考回路は、中国経済は日本が10%前後の高度成長を達成した1960年代に相当する、従って「今後とも高成長を続ける可能性が高い」という、ある意味短絡的なものになっている。これは、日本が1960年代からバブル崩壊により「失われた20年」に直面する1990年まで30年近く経済成長が続いた「過去の実績」に基づいた論理にすぎない。

中国人事社会保障省などが先日発表した2011年統計調査で、中国の産業分野別就業人口で、サービス業や小売業などの第3次産業の割合が35.7%と、農林水産業などの第1次産業の34.8%を初めて上回り、最大となったことが明らかになった。ちなみに第2次産業の割合は29.5%。

日本で第3次産業の割合が第1次産業の割合を上回ったのは1956年。さらに、第2次産業が第1次産業を上回ったのは1962年である。こうした産業分野別就業人口の動向も、現在の中国が日本の1960年代に相当するという指摘を裏付けるものである。

日中産業別人口比率推移


しかし、中国経済の状況が、日本の1960年代に類似しているということを以て、中国が日本と同様に高度成長を達成すると結論付けるのは、危険なものである。

問題は「時間軸」。日本の産業別就業人口の推移をみると、1962年に第1次産業の比率を超えた後、2001年まで、ほぼ40年に渡って第2次産業の比率が30%を上回って推移した。そして、バブル崩壊後の2001年に29.9%と30%を割込んで以降は、ほぼ一貫して第2次産業の比率は低下し続け、2011年には24.7%迄低下して来ている。

こうした事実から、一つの仮説を導くことが出来る。それは、野田総理の大好きな「分厚い中間層」は、日本が40年近く「世界の生産基地」としての立場を維持して来たことで構築されたというものである。この仮説は、第2次産業の比率が低下し、「世界の生産基地」としての立場を失うと共に、日本で「分厚い中間層」に綻びが出始めて来ていることとも符合するものである。

この仮定が正しいとしたら、中国に今後「分厚い中間層」が構築され、日本が期待している「世界最大の消費地」としての地位を得られるか否かは、中国がこの先どの位長期間に渡って「世界の工場」という地位を保てるかに掛っていると言える。

では、中国は日本のように長期間に渡って「世界の工場」としての地位を維持出来るのか。それは必ずしも簡単なことではない。何故ならば、「世界の工場」としての地位を維持するためには、幾つかの条件が必要であるが、日本が「世界の生産基地」として立場を固めて行った1960年代の状況と、現在の中国を取り巻く環境との間に幾つも相違点があるからである。

⇒ 続きは次回
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近藤駿介

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