日本経済失速~「今を生きる皆さんに明日の責任を果たすことができない」経済

「内閣府が12日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、年率換算では3.5%減だった。マイナスに転じたのは3四半期ぶり。2011年10~12月期を前期比0.3%減に下方修正した。海外経済の景気減速が響き外需が落ち込んだほか、エコカー補助金の打ち切りが響き個人消費が振るわなかった。企業の設備投資も落ち込んだ」

国内景気の失速が明らかになって来た。日本経済新聞はデフレが統計上GDPを嵩上する「実質」だけを取り上げて「マイナスに転じたのは3四半期ぶり」と報じているが、デフレをそのまま反映する「名目」ベースのGDPが「2四半期連続のマイナス」になっていることについては殆ど触れていない。

それでも「言うだけ番長」経済財政相のコメントは「事後的にみて景気後退局面に入っていたことになる可能性も否定はできない」というノー天気なもの。

12日に発表された2012年7-9月期の名目GDPは、時々増加を挟みながらも、直近の名目GDPのピーク2007年1-3月期の514兆272億円から、金額にして44兆2337億円、率にして▲8.6%も減少している。日本経済の現状は「事後的にみて景気後退局面に入っていたことになる可能性も否定できない」などという悠長なことが言える状況にない。

経済音痴内閣は「世界経済が減速していることが背景」だと、景気減速の原因を海外要因に求めようと躍起になっているが、問題は「海外経済の景気減速が響き外需が落ち込んだ」ことよりも、「個人消費」が「2四半期連続の減少」となったこと。内閣府は個人消費の減少に関して「エコカー補助金終了に伴って自動車が減少した」と説明しているが、これだけでは2四半期連続で個人消費が減少したことを説明するには無理がある。日本経済の実態は、国民が忌み嫌う「公的需要」以外に需要がないと言える惨憺たる状況にある。

「『強い経済』の実現を図り、2020 年度までの年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長を目指す」

6月に閣議決定された「新成長戦略」で、野田内閣はこのような目標を掲げている。しかし、その進捗状況は散々なものだ。

2010年10-12月期の名目GDP480兆9988億円を基準とすると、2012年7-9月期の名目GDP469兆7935億円は、額にして11兆2053億円、率にして▲2.3%の減少となっている。政府が「新成長戦略」で掲げている「2020年度までの年平均で名目3%」という目標を達成するならば、四半期平均で0.74%成長をしていなければならない。しかし、この期間の実績は、四半期平均で▲0.34%と、目標ペースから1%以上も足りない状況にある。

政府「新成長戦略」進捗

政府の計画通りに経済が成長していれば、12日発表された2012年7-9月期の名目GDPは、計算上506兆5300億円強に達していなければならない。しかし、12日に発表された実績値は、この計画値に対して36兆7000億円も足りない水準にある。

勿論途中ラップであるから2020年には目標である646兆4000億円に達する可能性はあるが、そのためには、残された8年間、四半期ベースで0.97%、年率3.94%という高い成長を達成する必要がある。▲0.34%というここまでの実績を考えると、これはとても難しい話。

この▲0.34%というマイナス成長が続いてしまうと、2020年の名目GDPは計算上420兆4000億円程度となる。これは、政府が掲げる目標である646兆4000億円に226兆円も届かないとんでもないものである。

野田内閣が「内需主導の景気後退」を認めないのは、2014年度に消費増税を実施する必要があるからである。

「消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」

法律では、2014年度からの消費増税を実施するか否かの判断は、来年2013年の9月時点での経済状況を見て判断することになっている。しかし、政府の掲げた「2020 年度までの年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長」から大きく逸脱している状況で、この「(消費税率の引上げに当たっての措置)附則 第十八条」を素直に読めば、2014年度からの消費増税などとても実施出来る状況にはない。 

要するに、消費増税を実施するためには、この「附則第十八条」を素直に読まないことが必要になってくる。そこで消費増税原理主義者が次に繰り出しそうなペテンは、「2020 年度までの年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長」という中期的な経済情勢を、消費増税の判定時期の9月に発表される予定の2013年4-6月期2次速報を、「年率で名目3%、実質2%程度の経済成長」と「瞬間風速」に読み替えること。

そのためには、2013年度予算を2012年度内に成立させ、公共事業等を4-6月期に前倒しで集中して執行する必要がある。GDPの3%に相当する14兆円程度の所謂「真水」を追加支出することが出来れば、「瞬間風速」での「年率で名目3%、実質2%程度の経済成長」を作り上げることは可能である。恐ろしいことは、「瞬間風速」を大きくするためには、直前の2013年1-3月期のGDPは低ければ低いほど好都合だということ。主要マスコミが全て消費増税原理主義者で固められているなかでは、こうした国民不在のペテンがまかり通ってしまう可能性は否定できない。

「嘘つき追込まれ解散」を避けるため、第三局の足並みが整う前に…、等々の理由から、永田町はここ数日間で急速に「年内解散総選挙」に動き始めているが、消費増税実施に向けて必要なお化粧を施すために、来年度予算の年度内成立が必要不可欠であることも一つの要因となっているのかもしれない。

「議員辞職するつもりだった」「(成立しなければ)将来の国民に申し訳ない。今を生きる皆さんに明日の責任を果たすことができない」

12日の衆院予算委員会で、政治生命をかけるとした消費増税関連法が成立しなかった場合の覚悟について問われた野田総理は、「議員辞職するつもりだった」ことを明らかにした。

ここまでの強い覚悟を持っている総理は、四半期平均の名目経済成長率が▲0.34%と、政府が掲げた目標ペースから1%以上も足りない状況にあることについて「今を生きる皆さんに明日の責任を果たしている」と思っているのだろうか。「議員辞職をするつもりだった」野田総理にとって、「今を生きる皆さんに明日の責任を果たすことができない」経済状況の中で「国民の信を問う」ことを躊躇する理由などないはずである。もう、野田総理のペテンには辟易である。
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まとめ【日本経済失速〜「今を】

「内閣府が12日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、

近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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