「決めつける政治」が招いた、意図せざる「コンクリートから人へ」

「野田佳彦首相の考え方についてこられないなら公認できない。党で決めたら反対していても守ると誓約書を書いてもらう」と述べ、衆院選にあたって、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加推進や消費増税に反対する候補者を公認しない考えを明らかにした。

民主党は消費増税に反対する候補者を公認しない方針を明確にした。「政治生命を賭け」「うそつき」呼ばわりする屈辱を味わってまで成立させた消費増税法案を、いまさらちゃぶ台返しされたら困るのだろう。

ところで、民自公の3党談合によって成立した消費増税法案には景気条項(附則18条)が付いているが、民主党執行部はこの扱いをどのように考えているのだろうか。「努力目標」とはいえ、附則18条には「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため」、「平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長」と明記されている。

景気後退局面に入ったと言われる日本の景気は、景気条項に掲げた「平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長」という軌道から大きく外れてしまっており、消費増税の判断を下す来年の10月頃には、景気条項の解釈が大きな問題となることは想像に難くない。

民主党は、この景気条項を逸脱した経済状況であっても、「野田佳彦首相の考え方」が「望ましい経済成長」だと、「黒いものでも白だ」というものであったとしても、所属議員が消費増税に反対することを許さないのだろうか。あるいは、始めから経済状況に関わらず消費増税をする「野田佳彦首相の考え方」を隠すために附則をつけたのだろうか。

もしそうだとしたら、景気条項などを附則に付けた時点で「うそつき」であるし、3党合意で確認した「努力目標」を無視して消費増税実施に賛成することを求めるとしたら、それは強権政治でしかない。

衆議院の解散に打って出た野田総理は、「前に進むのか、後ろに戻るのか」という題名のブログを更新した。

「前に進むのか、後ろに戻るのか」…。如何にも街頭演説好きの総理らしい空虚な表現である。この無意味な質問に対する答えは、少なくとも経済に関しては、国民の多くが出来ることならば「後ろに戻りたい」と思っているということである。

野田総理が日本国のリーダーとして考えなくてはならない問題は、「前に進むのか、後ろの戻るのか」という無意味なことではなく、「正しい方向に進むのか、間違った方向に進むのか」ということのはずである。こうしたところに、総理の資質の欠如が滲み出ている。

ブログの中で、野田総理は「5つの政策分野での方向感が問われています」と指摘している。その2番目に挙げているのが、「経済政策:『人への投資』や『世界と共に成長する』という路線に軸足を置くのか。再び無駄な公共事業のバラマキを繰り返すのか」という、所謂「コンクリートから人へ」ということである。

「コンクリートから人へ」。耳触りのいいフレーズであるが、これまた空虚なキャッチコピーである。確かに、無駄な公共事業は慎むべきであるが、「公共事業=悪」と決めつける短絡的思考は総理の資質に欠けるものである。実際、足下、民間消費が全滅する日本経済の底抜けを防いでいるのは、復興に伴う公共事業である。

日本はこれまで公共事業を悪の象徴として削減して来た。しかし、その結果、国の支出は「コンクリートから人へ」となってしまった。直接的な因果関係はないかもしれないが、公共事業を必要以上に削減することによって、結果的に生活保護費が増大する社会に向かってしまったのである。これが今の日本の「コンクリートから人へ」の実態である。

(チャートは、「公的固定資本形成」と「生活保護費」の関係を示したものであるが、傾向を鮮明に表すために両者のスケールが10倍、10分の1になっている点に注意)
コンクリートから人へ

総理に求められる資質は、自らの結論を決めつけたり、無意味なキャッチコピーを考えたりすることではなく、事実を客観的に把握し、「より正しい方向に進む」ために何をなすべきかを考え、示すことである。「より正しい方向に進む」ために、社会情勢や、国際金融情勢に応じて「君子豹変する」ことは、「決めつける政治」によって奈落の底に向かうよりずっと賢明な政治である。
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