でっち上げ国際公約「TPP交渉参加加速」~「投棄的水準」に達した松下政経塾政治

20日カンボジアのプノンペンで行われた日米首脳会談は、今月6日の大統領選挙で次期4年の任期を担うことになったオバマ大統領と、16日に「自爆解散」に打って出て、余命1ヶ月の野田総理の会談という、何とも不思議な組合せの会談となった。

「環太平洋連携協定(TPP) 交渉参加に向けて(関係国と)協議することを決定した当時と決意は変わらない。日米間の課題を乗り越えるべく、協議を加速させよう」

余命1ヶ月の野田首相は、この会談でTPPについて参加表明は見送ったものの、交渉参加への意欲を示し、協議を「加速させていく」ことを確認し、オバマ大統領も理解を示したと報じられている。

余命1ヶ月の総理が、次期4年の政権を担うオバマ大統領に対して、TPP参加交渉を「加速させていく」と表明し、理解が示されたことで、「TPP交渉参加加速」は、またまた「国際公約」にでっち上げられた格好。オバマ大統領に対する「でっち上げ国際公約」は、場合によっては次期内閣の足枷になりかねないもので、通常の神経の持ち主であれば避けるもの。

「消費増税」といい、「TPP交渉参加」といい、国内世論を纏める能力も国民からの支持も得られない総理の常套手段は、「でっち上げ国際公約」を作り上げ、「決められる政治」という無意味なキャッチフレーズを振り回して強引に国内世論を形成していくこと。国内向けの説明を省略して「でっち上げ国際公約」を作り出す総理が、いくら国民に「丁寧な説明」と叫んだところで、もう誰も相手にはしない。

「マニフェスト(政権公約)で打ち出す政策を死に物狂いで国民に訴える同志でなければならない」

海外に出かけると饒舌になる総理は、次期衆院選での民主党候補の公認条件についてこのように述べた。しかし、ただでさえ離党者が相次ぎ、300小選挙区のうち約70選挙区が空白区となっていて勢力大幅縮小が避けられない民主党が、「野田佳彦首相の考え方についてこられないなら公認できない」と「野田一神教」へ傾斜を強めるのは、「政権維持能力」はおろか、政権を維持する「意思」をも失ったことの証左である。内部分裂を繰り返し、「野田一神教」のもとに、「一糸乱れぬ結束の強い集団」を作り上げることが出来れば、次期政権与党に集団移転の可能性が残る、というのが、今の「野田一神教」の教義のようである。

「国際通貨基金(IMF)の財政モニター最新版によると、日本の債務残高は国内総生産(GDP)比で12年末に236%に達する。民主党への政権交代前の08年末(191%)からさらに悪化。欧州債務危機の震源となったギリシャの水準(12年末、170%)を大きく上回る」

「野田一神教」と大同小異である「財政再建原理主義者」の日本経済新聞は、20日付で「債務残高 GDP比236% データでみる論点(2) 国債発行枠、守れるか」という「らしい記事」を掲載している。この記事の主旨は「足元では景気対策として公共事業費の増額圧力がくすぶる。新政権の枠組みが複雑になればなるほど『配慮する政策が増えて歳出は膨らむ』(自民党の閣僚経験者)。財政再建は剣が峰に立つ」という、公共事業増額によって財政再建が遠のくことへの警鐘である。

「債務残高GDP比236%」。こうした指摘は統計的には「事実」かもしれないが、片手落ちの指摘である。それは、「債務残高GDP比236%」に膨れ上がった原因が、「債務残高」と「名目GDP」どちらにあるのかが分からないからである。

消費税が3%から5%に引き上げられた1997年の名目GDPは約523兆円、公的債務残高は約552兆円、公的債務残高対名目GDP比は約106%であった(全てIMF World Economic Outlook October 2012)。

その後日本の名目GDPは減少傾向を辿り、2012年の推計値は名目GDPが約475兆円に、一方公的債務残高は増え続けて約1,123兆円へ。その結果、公的債務残高対名目GDP比が約237%へと膨れ上がってしまったのである。

公的債務残高対名目GDP比(実績)

「たられば」ではあるが、もし仮に、1997年以降、消費増税法案で民自公3党が合意した「名目で3%程度の成長」という目標が達成されていたとしたら、2012年の名目GDPは約815兆円になっていた計算になる。したがって、公的債務残高が現状と同じ約1,123兆円まで増加していたとしても、公的債務残高対名目GDP比は約138%に留まっていたことになる。

さらに、「名目で3%程度の成長」を達成することで、公的債務残高が1997年当時の約552兆円から増えなかったとしたら、2012年の公的債務残高名目GDP比は約68%まで低下していた計算になる。

公的債務残高対名目GDP比(推計)

要するに、公的債務残高対名目GDP比が約236%にまで拡大したのは、名目GDPが伸びなかったからであり、公的債務残高が増大したのは、その結果であると言えるのである。名目GDP3%を達成出来ていれば、公的債務残高名目GDP比237%という問題は起きなかった。

一方で債務残高だけが積み上がったのは、社会保障費の増加だけでなく、公共投資の投資効率が低下したことも影響しているはずである。「社会保障費が増え続けるから消費増税」という発想は「金の卵を生む鶏を殺す」ようなものだ。「社会保障費が増え続けるから公共投資の効率性を上げる」という発想が不可欠であるが、乱立する政党のなかで、こうした主張をするところは残念ながら1党もない。

名目GDPの成長がなかったことによって積み上がってしまった公的債務残高を、名目GDPに下方圧力を加える消費増税で減らそうとする「野田一神教」の教義は、果たして正しいものなのだろうか。「(このまま名目GDPが減少する道を)前に進むのか、後ろ(名目GDPが高かった時代)に戻るのか」。この質問に対する国民の回答は、聞くまでもないことである。

米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンは20日、パナソニックの長期発行体格付けを、これまでの「Baa1」から2段階引き下げ「Baa3」にしたと発表した。あと1段階下がると「投機的」とされる水準に転落する。格付けの見通しは「ネガティブ(格下げ方向)」とした。

日本を代表する企業であるパナソニックの格付けが、ついに「投機的」一歩手前まで引き下げられた。

パナソニックの創業者である松下幸之助翁の教えを受け継いでいるはずの松下政経塾出身の政治家は、これをどう受け止めているのだろうか。金融市場でパナソニックの格付けは「投機的」水準寸前まで下落しだが、政治の政界で松下政経塾出身の政治家の格付けは、野田総理を筆頭に、すでに「投棄的」水準に達していることに、果たして気付いているのだろうか。
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