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「争点」がボケて行く総選挙~「信頼のない政治家の発言」と「政策と価値観の一致なき合流」

「憲法改正は国の形そのものに関わることなので、しっかりとした国民的な議論を経なければならず、やり方が乱暴だ」

野田総理大臣は、自民党が衆議院選挙の政権公約で、憲法を改正して自衛隊を「国防軍」と位置づけるとしたことについて、このように批判した。野田総理の口から、「しっかりとした国民的な議論を経なければならず、やり方が乱暴だ」という言葉が出て来るとは、今さらながら驚きである。

消費増税は、「国の経済の形」「国の行く末」に関わる問題であり、「しっかりとした国民的な議論」を経なければならない課題ではなかったのだろうか。マニフェストにも謳っていなかった消費増税法案を、国民の審判を受けていない総理大臣が、「不退転の決意」「決められる政治」という無意味なキャッチフレーズを繰り返し、自民党、公明党との談合で成立させたやり方が、この御仁にとっては「乱暴」なやり方でも何でもないということのようだ。

こうしたやり方が「乱暴」ではないのだとしたら、単独過半数を確保する可能性は低いと言われている自民党の総裁が「衆議院と参議院で3分の2以上の勢力を確保し環境整備ができれば」という条件付きで提唱する「憲法改正」は、その是非はともかく、やり方としてはかなり「丁寧なやり方」だと言える。

「2世、3世、ルパンじゃありません」と、お得意の駅前演説フレーズで自民党の世襲批判を行った野田総理。確かに、「地盤、看板、鞄」がないと国政に参加出来ないというのは問題である。しかし、野田総理が総理になれたのも、2009年の政権交代選挙で民主党が絶対安定多数を占めたからに他ならない。衆議院での絶対安定多数という「地盤」と、与党という「看板」、さらにはその結果得られた多額の政党助成金という「鞄」を、国民の審判を受けないで獲得した野田総理。政権交代後「世襲総理3世」を生み出して来た民主党の「改革の1丁目1番地は脱世襲だ。世襲政治を認めないことをこの選挙で掲げたい」という主張は、笑い話にもならない。

「デフレ脱却の過程にないと判断すれば、消費税を引き上げない決断を下すだろう」

自民党の安倍総裁は23日付の米ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたインタビューで、デフレ脱却が進まない場合には消費増税を見送る可能性があると言及したことが報じられている。「日本経済の行く末」を考えると、こうした景気条項の順守は、これまで誰も触れて来なかった極めてまっとうな主張である。

しかし、安部総裁の発言もまっとうなものばかりではない。「衆議院選挙で政権を奪還した場合には、日米同盟の強化を図るなど、外交の立て直しに取り組む」という主張はともかく、「国防軍」まで踏み込むというのは、日中、日韓関係が悪化しているこの時期の発言としては、必ずしも感心出来ないもの。小泉総理の靖国神社参拝後によって日中関係が悪化した時期に総理に就任し、中国を刺激しないよう靖国神社参拝を控えることで、日中関係の回復を図った安部元首相の発言としては、やや配慮に欠けた発言という印象は否めない。

また、安部総裁は先日、「日銀が建設国債を『買いオペ』で市場から買っていく。じかに買うと言っていない」と説明し、「建設国債の全額日銀引き受け」発言に対する批判の火消しに追われたばかり。

安部総裁が弁解した「建設国債を『買いオペ』で市場から買っていく」発言。しかし、これも実際には不可能なもの。法律上は「建設国債」と「特例国債」に分かれているが、債券市場では両者が別々に流通している訳ではないからである。「私たちの政権公約を貫くのは『できることしか書かない』ということだ」と表明した安倍総裁。「かつての金融政策と次元が違う」と胸を張った「大胆な金融緩和」で、早々に「できないこと」を口にしてしまった格好。政権奪還に向けて高揚し過ぎているのか、その発言を額面通り信じるわけには行かない、というのが正直なところ。

第一極、第二極の党首の発言があまり信用に値しないとなると、第三極に期待が集まるのは当然だが、この第三極の発言も信用に値しないところが政治の問題点。

「最後はじゃんけんで決めたらいい」

石原新党との合流前の「政策の一致と価値観の一致。そこがないと有権者にそっぽを向かれてしまう」と発言を翻して太陽の党と合流した日本維新の会の橋下代表代行は、みんなの党に合流を呼びかけたうえで、両党の公認候補が競合している選挙区に関して「最後はじゃんけんで決めたらいい」と、国会議員選挙と学級委員選挙とを同次元で考えているかのような信じ難い発言をした。「政策の一致と価値観の一致」なしに太陽の党との合流を強行したうえ、さらに「政策の一致と価値観の一致」を省略してみんなの党に合流を呼びかけるというのは、野田総理も驚く「君子豹変」ぶり。

こうした橋下代表代行の言動は、政治家として成し遂げたい政策があるのではなく、政権獲得が目的であると疑われても仕方がない。「有権者にそっぽを向かれてしまう」リスクを冒してまで、「政策と価値観の一致のなき合流」に突き進もうとするのは、橋下代表代行自身が自らの賞味期限を感じていて、勢いがあるうちに政権を獲得しておかなければならないと考えているからかもしれない。

橋下代表代行は「政界再編」を旗印に掲げ、「政策と価値観の一致なき合流」を正当化しようとしているようである。しかし、「構造改革(郵政民営化)」「政権交代」という、抽象的な甘い言葉に乗せられて痛い目にあって来た国民が、三度「政界再編」という抽象的なキャッチフレーズに踊らされるかは定かではない。

15党が乱立するなか、「好き嫌い」に基づいた「政策と価値観の一致なき合流」が模索されることで、政治家の発言の信頼性は薄れ、総選挙の争点もボケて来てしまっている。このままでは、有権者は「日本の将来をどの政党に託すべきか」ではなく、「どの政党の嘘が最も日本に及ぼす悪影響が軽微で済むか」という、「後ろ向きの選択」を強いられることになりそうだ。
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まとめ【「争点」がボケて行く】

「憲法改正は国の形そのものに関わることなので、しっかりとした国民的な議論を経なければならず、やり方

近藤駿介

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Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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