第三極失速、自民党圧勝?~12党乱立選挙で漁夫の利を得る「分かりやすさ」

「政策よりも政局」という国会がようやく解散したと思ったら、「政策よりも非難中傷」という選挙戦が待っていた。

12党乱立総選挙まで、残り1週間を切って来た。2大政党制を目指し、1996年から小選挙区制を採用して来た日本で、12党乱立の小選挙区選挙を余儀なくされたことは、何とも皮肉なことである。

「選挙制度と現実の大きな乖離」が鮮明になる中で行われる12党乱立総選挙。この週末に実施された各社の世論調査で、自民党が単独過半数、場合によっては絶対安定多数を獲得しそうな情勢であることが報じられている。

同じ世論調査で、総選挙後の政権について「民主、自民以外の政党が中心の政権」を望むと回答する有権者がかなりの比率を占める中、政党支持率が概ね20%台前半に留まる自民党が、絶対安定多数を獲得するとなれば、「世論と選挙結果に大きな乖離」が生じることになる。最高裁で「一票の格差」は違憲状態にあると判断された選挙制度で、「世論と選挙結果に大きな乖離」を連想させる自民党圧勝劇は、総選挙後も政治的混乱が続くことを想像させるもの。

12党乱立総選挙のキーワードは「分かり難さ」である。それは「政党」であり、「マニフェスト・政権公約」であり、「候補者」であり、「総裁候補」である。そして、これらは全て第三極の支持拡大の障壁になっている。

まず「政党」と「マニフェスト」。前回の「政権交代選挙」時の政党数は7政党であった。それが、今年の年初には11政党へ、そして瞬間的には16政党にまで増え、衆議院解散後、ようやく今の12政党に落ち着いた。これだけ政党数、政党名が変動すれば、一般の有権者にとって、政党の名前を覚える時間すらない。政党や候補者の名前すら覚える時間が足りない上に、民主党が「マニフェスト不信」を植え付けた中で、12党の政権公約などを訴えられても、その違いを理解する時間は全く足りないというのが有権者の本音のはずである。これが「政策」よりも「非難中傷」という選挙戦を招き、結果、第三極の支持拡大の障害の一つとなっている。

また、「候補者」と「総裁候補」が分かり難いことは、第三極と言われる勢力が抱える固有の問題点である。第三極の中心にいる日本維新の会。石原代表と橋下代表代行という、強烈な個性の持ち主をリーダーに据え、知名度は抜群であるが、肝心の党の候補者の殆どは、政治家としての理念も資質も不明な「リーダーの個性にすがる候補者達」でしかない。

さらに、橋下代表代行が総選挙に立候補していない日本維新の会は、国会の首班指名で石原代表を指名するのか、平沼国会議員団代表を指名するのか、定かではない。そして、同じく嘉田代表が立候補していない日本未来の党も、誰を首班指名するのかが有権者に全く分からない状態である。野田総理に代わる総理を選ぶ選挙で、第三極の中心となるはずの政党が、「総裁候補」を明確にしない状態で選挙戦を続けるのは、戦略的失敗と言える。

こうした「分かり難さ」のオンパレードが、結果的に、「民主、自民以外の政党が中心の政権」を多くの有権者が望む中で、新党の支持は広がらず、「昔の名前で出ている」自民党が、漁夫の利を得るという構図を招いている。

一方、多くの有権者が「民主、自民以外の政党が中心の政権」を望む中、自民党が圧倒的優位な情勢であることは、多くの有権者が新政権に「景気対策」を期待していることを反映したものだという見方も出来る。

民主、自民、日本維新の会、という三強の中で、「景気対策」という点においては、自民党の政策が相対的に「分かりやすい」もの。

「来年4~6月の経済の動向を見ながら判断する。その数値が出るのは8月だから、それを受けて秋に判断する。何が何でも上げろということではない」

自民党安倍総裁は、「選挙の前だから、おびえているとしか思えない」と野田総理から批判を受けながらも、景気状況によっては、消費増税を見送る可能性に言及している。消費増税実施の先送りは、「景気対策」という点においては、最も安上がりな政策であり、有権者に分かりやすい政策。

野田総理は、この安倍発言に対して、「消費税の話は3党合意があるのに、安倍さんははっきりしない態度だ」「あの態度を見ると、(衆院議員の)定数削減も守ってくれるか分からない」「一体改革も定数削減も皆の前で約束したことだが、破られる可能性がある」などと述べ、安倍氏への批判を繰り返しているが、マニフェストを反故にして「君子豹変」した野田総理が、安倍総裁の「君子豹変」を批判するのは筋違い。

株価の下落と円高に一旦歯止めがかかったこともあり、「次元の違う金融緩和」「公共投資増額」という「分かりやすい安倍ノミクス」に対して有権者が期待を抱くのは当然でもある。「分かりやすい安倍ノミクス」の問題は「規模」にこだわり過ぎていて、「効率」をどのように高めていくかについて何も示されていないこと。財政規模に制約がある以上、財政政策には金融政策以上に「効率」が求められるのだから。

安倍総裁は、金融政策について「日銀が建設国債を市場から購入する」という「次元の違う誤った発言」もしており、金融政策に関しては、「まぐれ」を除けばあまり大きな期待はしづらいところ。しかし、既に金融政策による景気浮揚効果は、短期的な為替の変動を除けば限界に近付いており、中長期的には財政政策の効率性の方が日本経済に大きな影響を及ぼすことを考えると、金融政策に対する無知ぶりは、許容範囲(直ちに日本経済に打撃を与えない)と言えるのかもしれない。

昨日発表された7-9月期のGDPも、公共投資の予想以上の落ち込み(前期比1.5%増と、速報値の4.0%増から下方修正)で、予想を下回る結果となった。日本の内需の底割れを防いでいる公共事業を減らして、消費増税で民需抑制する「需給ギャップの拡大政策」を突き進めば、デフレ経済がより深刻になっていくことは明らか。安倍総裁の「目的は税率を上げることではなく、税収を上げることだ」という主張は、全うな主張である。

「2013年以降の日本の針路について、前に進むのか後戻りするかを決める大事な戦いだ」

野田総理は連日このように繰り返し、「自民党政権=古い既得権益の政治」という印象を有権者に植え付けようとしている。しかし、世論調査結果から見えて来るものは、野田政権継続という「後戻り」だけはしたくないという、有権者の強い意思である。

残り1週間を切った選挙戦。第三極には是非「総理候補」を有権者に明示して、選挙戦を戦ってもらいたいものである。このまま「総理候補」が曖昧なままでは、「分かりやすい自民党」が漁夫の利を得ることになる。
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