自民党地滑り的勝利 ~ 将来を待てなくなった国民による現実的選択

12党が乱立した総選挙は、蓋を開けてみれば、各社の世論調査通り、「老舗」の自民党の圧勝という結果となった。投票率は59.32%(前回比▲9.96%)と、世論調査段階で3、4割存在していた「投票先を決めていない」としていた無党派層の多くが棄権に回った可能性が高く、第三極が期待した風は吹かなかった。

顕著であったのは、多数の離党者を出した民主党に対する国民の「懲罰的投票」。

「3年前の衆院選以降に民主党を離党し、今回の小選挙区に立候補した前職や参院議員のうち、小選挙区で勝ったのは日本未来の党の小沢一郎氏だけで、1勝70敗の戦績だった。比例代表での復活も10人にとどまった」(日本経済新聞)。有権者は、消費増税という政策の是非ではなく、政局の混迷を招いた責任を強く糾弾、民主党に残った政治家に対しても、離党して出て行った政治家に対しても、「喧嘩両成敗」という厳しい審判を下した格好。

「喧嘩両成敗」という厳しい審判を受け、民主党がその離党組と共に葬られることで浮かび上がって来た第三極。その注目点は、54議席を獲得し比較第三党になった日本維新の会の、内部不協和音がどこまで大きくなるかである。総選挙後すぐに、特別国会で誰を首班指名するのかで、石原代表と橋下代表代行との間の意見の違いが表面化。総理候補を掲げることを「先送り」してきたツケが早くも露呈して来ている。日本維新の会が民主党化するのか否か。もし民主党化してしまえば、かつての自民党一党支配の構図が再現しかねず、政権交代可能な「二大政党制」など夢物語となってしまう。日本維新の会は、獲得議席数以上に重い責任を負うことになったとも言える。

民主党に対する「懲罰的投票」が色濃く出たことによって、「政策の選択」という部分は相対的にかなり薄れてしまった。

脱、縮、卒…。毎週金曜日に首相官邸周辺で大規模な「反原発集会」が開催され、今回の総選挙の大きな争点だといわれて来た原発問題。しかし、橋下日本維新の会代表代行が指摘した通り、「総選挙の争点」にはならなかった。脱原発、卒原発を掲げた政党は多くの議席を失い、長年原発を推進し、原子力村を形成して来た自民党の圧勝を招くという、何とも皮肉な構図となってしまった。首相官邸周辺での「反原発集会」は、単に野田総理に対する「懲罰的行動」だったということなのだろうか。

原発問題とともにマスコミが争点として挙げて来た消費増税、TPPも同様に有権者の投票行動に大きな影響を及ぼしたとは言えない結果となった。民主党分裂の最大の要因となった消費増税。これに対しても、消費増税反対を明確に掲げる政党で議席を伸ばしたのは「みんなの党」くらいであった。

マスコミが挙げて来た「原発問題」「消費増税」「TPP」の「政策的是非」が有権者の投票行動に大きな影響を与えることはなかったのは、投票した有権者が現実的な判断をせざるを得ない状況に追いやられていたことも一つの要因である。

圧勝した自民党の掲げた政策の特徴は、「原発再稼働の可否、順次判断~10年以内に持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立」「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限りTPP交渉参加に反対」「消費増税は、来年4~6月の(国内総生産の)数字を見て、デフレから脱却できる状況かを総合的に判断して決める」という、他党の賛成、反対を明確にした「デジタル的」なものとは若干異なった、「アナログ的」なものだったこと。

「郵政民営化の是非」「政権交代」という賛成、反対を問う「デジタル選挙」で痛い目にあったトラウマを抱える国民は、「原発反対」「消費増税反対」「TPP交渉反対」という「デジタル公約」を掲げた政党を避け、「アナログ公約」を掲げた自民党に流れた格好。

さらには、安倍総裁が訴え続けた「大規模な補正予算編成」、「次元の違う金融緩和」。野田政権下で散々問題にされた国の財政問題や、マスコミ等が指摘する日銀の独立性などが懸念される中で、足元の景気悪化に苦しめられている国民が、「無いに越したことのない原発」や、「将来問題になりかねない国の借金」よりも、「まず景気回復優先」という自民党の掲げる政策を選択したのは、いかに現在の経済状況に苦しめられているかを示したものでもある。

「将来にツケを回すな」

歴史的敗北を喫した野田総理は、こうした空虚なキャッチコピーを掲げて、「現在に生きている国民」に我慢を強いる政治を目指して来た。総理になって街頭演説を止め、「現在に生きている国民」の我慢が限界に来ていることを感じる機会を失ってしまった野田総理は、「現在に生きている国民」への対応を「先送り」して来た。消費増税実施によって歴史に名を残そうとした野田総理は、今回の総選挙で「歴史的大敗を喫した総理」として歴史に汚名を残すことになった。

新政権にはこうした野田総理の失政を他山の石として、「現在に生きている国民」への対応に全力を注いでもらいたいものである。「将来は現在の結果であり、延長線上にある」のだから。
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近藤駿介

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