「決める政治」の第一歩 ~ 「財政再建」から「景気対策」へと変化した時間軸上の優先順位

「16日の衆院選は、自民党が定数(480)の6割を超える294議席を確保する圧勝で終わった。しかし小選挙区で自民党候補の名を書いたのは全有権者の約四分の一、比例代表に至っては15.99%だった」(18日付東京新聞)

16日の総選挙結果に対して「自民 民意薄い圧勝」という選挙分析結果と選挙制度に対する批判が繰り広げられるなか、自民党圧勝を先取りして動き出した金融市場に呼応する形で、安倍新政権が実質的に動き出た。

18日には、日銀白川総裁の表敬訪問を受ける形で日銀に対して「2%のインフレターゲット」という政策アコードを結ぶことを要請したことに加え、公明党との連立協議を本格化し、「10兆円規模」と言われる2012年度補正予算案を編成する方針で合意した。

「2%のインフレターゲット」「次元の違う金融緩和」に対しては賛否両論あるものの、FRBとECBが「無制限」「無期限」の金融緩和に向かう中では、「円高阻止」を掲げる政権として「金融緩和」は必要条件で、採らざるを得ない現実的選択肢。

金融市場の雰囲気を変えたのは、「大型補正予算編成」。「コンクリートから人へ」という空しいスローガンのもと、財政支出を伴う財政政策に消極的であったこれまでの野田政権から、完全な方向転換。同時並行的に解決することが出来ない「財政再建」と「景気対策」という課題に対して、安倍新政権は「景気回復」に取り組む姿勢を見せ、時間軸としての優先順位を「景気対策」にすることを明らかにした。

金融市場が好感しているのは、これまで民主党政権で効果が全く出なかった政策から決別し、「不退転の決意」で臨む対象を「財政再建」から「景気対策」へと移したこと。過去の誤った政策からの政策転換こそが「決断する政治」の第一歩。

安倍総裁の追い風になったのは、米国が年度末を迎えて来ていること。投資銀行やヘッジファンドの多くが11月と12月に決算期を迎え、これまでのポジション調整や、新年度に向けての新たなポジションづくりに専念するこの時期は、季節的にもマーケットは動き易い。

また年度末が迫ったことで、懸念されてきた米国の「財政の崖」問題も動き出し、オバマ大統領と共和党の間で危機を回避するための妥協が為される可能性が高まって来たことも、安倍総裁にとっては追い風となっている。

金融市場が良い方向に動き出した背景には、資金調達には問題のない日米で「緊縮財政」を回避する動きが鮮明になって来たことがある。

過去1~2年間、欧州危機によって、世界は「緊縮財政+金融緩和」という政策ミックス、言い換えれば金融政策による片肺飛行を強いられて来た。今年になってIMFなどもたびたび言及して来た「資金調達に支障を期待していない国による景気重視政策」。それが選挙を経て、「資金調達に支障を来していない日米」が「脱緊縮財政+さらなる金融緩和」という政策ミックスに舵を切ることによって、ようやく実現方向に向かい出した格好(米国自体は「財政の崖」という目の前の危機を回避しただけで、「緊縮財政」から脱したわけではないが)。

「スペインなど南欧諸国が2012年の財政赤字削減目標を達成できない公算が大きくなってきた。増税や歳出減などで財政健全化を進めるが、景気低迷で十分な税収を確保できないためだ。13年も低成長が続き、厳しい財政運営を迫られる」

19日付日本経済新聞は、「南欧諸国、赤字削減が達成できぬ公算 景気低迷」という見出しで、財政危機に見舞われ緊縮財政を強いられている南欧諸国が、緊縮財政による税収減によって、財政赤字削減目標が達成できない公算が大きくなって来ていることを報じている。

必ずしも民意を反映しないと批判される選挙制度下での自民党の地滑り的勝利によって、日本は南欧諸国のような「緊縮の悪循環」から脱するきっかけを得たのは不幸中の幸い。

株高+円安。「景気対策」に不退転の決意で臨むことを明言している安倍新政権誕生への期待を反映して、金融市場は久々に明るい方向に動き出している。こうした動きを「追い風参考記録」にしないためにも、新政権には「財政再建原理主義者」から発せられる雑音に臆することなく、「景気重視政策」を推し進めて貰いたいものである。「財政再建原理主義」は南欧で全く成果を上げていない政策であるし、日本の10年国債の利回りは直近の最低水準からは上昇して来ているものの、その水準はまだ0.8%にも満たない水準であるのだから。
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