「供給側」から「需要側」へ ~ 安倍新政権に求められるのは「次元の違う金融緩和」に加え「次元の違う経済対策」である

日経平均株価、8か月半ぶりに10,000円回復。円が年初来安値圏。

市場の反応だけから言えば、「脱野田政権」が最も簡単で低コストの「円高、株安政策」だった。

「総理大臣をコロコロ変えるのはよくない」という意味不明の価値観で、国民の審判を受けない野田政権を1年3か月余も存続させたことが、国民にも、民主党にも高くついた格好。「売り家と 唐様で書く 三代目」という諺を地で行くように、前回の総選挙で308議席を獲得した民主党は、三代目の野田総理の暴走によって、今回の総選挙では議席数を57までに減らし政権を手放しただけでなく、党存亡の危機に立たされた。

景気悪化局面での緊縮財政に「不退転の決意」で突き進んで来た野田政権に国民が「No!」を突き付けるという「決断」をしたことによって、「次元の違う金融緩和」と「大規模な補正予算」による「景気回復重視」を訴える安倍新政権が誕生することになった。

こうした「変化」を金融市場は好意的に受け止めているが、問題はその持続性にある。安倍新政権が訴えるように、日本経済を立ち直らせるために財政出動は必要不可欠である。しかし、従来型の思考の延長線上での財政出動で金融市場を味方にし続けられる保証はない。

「企業など供給側に働きかけ、活力を引き出す政策が重要だ。需要を刺激する政策は日本は財政も金融もかなりやっている」

19日付日本経済新聞は、「新政権私の注文」という特集記事の第1回目で、伊藤元重東大教授のこうした主張を掲載している。しかし、こうした「供給側」に立った考えこそが、金融市場を敵に回しかねない危険な思想である。

内閣府発表の7-9月期の需給ギャップがGDP比▲2.7%、年換算した需要不足額が15兆円とされるなかで、「供給側に働きかけ、活力を引き出す政策」は、単に需給ギャップを拡大してデフレ圧力を高めるだけの愚かな政策でしかない。

「需要を刺激する政策は日本は財政も金融もかなりやっている」という主張は、エコカー減税や金融緩和のことを指してのものだろう。しかし、ポイントは「需要を刺激する政策」というところ。重要なのは「需要を刺激する」ことではなく、「有効需要を増やす」ことである。所得が伸び悩み、貯蓄に頼った消費活動を強いられる限り、いくらエコカー減税などで「需要を刺激」しても、それは単なる「需要の先食い」でしかない。

重要なことは、所得というフローで十分消費活動が出来る経済状況を作り出す政策であり、「需要の先食い」をさせる政策ではない。こうした難しい経済学など駆使しなくても理解できる単純なことを、東大教授たる専門家が気付かない、或いは別の方向に無理に誘導しようとするところに、このメディアと教授の悪意を感じずにはいられない。

安倍次期総理は、民主党政権時代に設置されなかった経済諮問会議を復活させ、マクロ政策の司令塔に据える方針を示している。経済財政諮問会議の復活自体は好ましいことかもしれないが、重要な点は諮問会議のメンバー構成、なかでも、民間有識者の議員として誰を選出するかが注目である。

経済財政諮問会議は、「民間有識者数を議員の4割以上確保すること」が法により定められており、これまで民間議員は財界から2名、学界から2名が選ばれている。この慣例に従って、「供給側」の代表である財界人に加え、前述のような「供給側の代弁者」である学者を選んでしまっては、議論が「供給側」の理屈に沿って進められることは火を見るよりも明らかである。

2000年代の経済財政諮問会議の功罪については様々な指摘がなされているが、根本的な問題は「供給側の立場に立った聖域なき構造改革」だったという点である。15兆円ともされる需給ギャップ(需要不足)が指摘される中で、「供給側」の立場での議論をいくら繰り返しても、有効な結論が導き出されるとは思えない。復活される経済財政諮問会議で、「需要側」の立場から議論がなされるかが重要なポイントである。

「次元の違う金融緩和」と共に必要なのは、「これまでの『供給側に軸足を置いた政策』とは次元の違う景気対策」である。

安倍新政権が、自民党、民主党を問わず、過去の政権が行ってきた「需要側」を軽視し、「供給側」に立った議論を踏襲するのだとしたら、金融市場とのランデブーは長くは続かず、市場は再び牙をむいてくることになるはずである。市場を味方につけておくためには、これまでの「供給側」に軸足を置いた自民党とは違って、「需要側」に軸足を置いた経済対策を打ち出す姿勢を見せることが必要である。

今回の総選挙期間中、安倍新政権と経団連の間にはすきま風が吹いていた。そのせいか、米倉会長は、安倍総裁が総選挙勝利後に参加した18日の経団連の朝食会を欠席している。こうした安倍総裁と財界との微妙な対立が、従来の「供給側に重心を置いた政治」から「需要側に重心を置いた政治」への転換の契機になれば、日本復活も夢ではない。
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