「強い経済を取り戻す」ことを目指す安倍新政権~大型補正予算編成のボトルネックは「財源」ではなく「人手」である

「強い経済は日本の国力の源であります。強い経済の再建なくして財政再建も日本の将来もありません」

「1丁目1番地でやらなければならないのは景気対策だ」と「強い経済を取り戻す」ことを最重要課題として掲げる安倍新自公連立政権がスタートした。

「2%のインフレ率」「名目で3%以上の経済成長」という「強い経済を取り戻す」という目標を達成するための方策の柱の一つは、自公連立合意文書に記された「本格的な大型補正予算を2013年度予算と連動して編成」すること。

大型補正予算の規模は10兆円と、2011年度の公共事業費6.2兆円(補正込)の約1.6倍。これが言われている通り「真水」だとすれば、単純計算ではこれだけで約500兆円である日本のGDPを2%押し上げる効果がある。

公共事業を中心とした大型補正予算に対して付きまとう議論は、その財源である。10兆円規模の補正予算を編成するとなると、民主党政権が定めた「新規国債発行44兆円以下」という財政健全化方針を凍結することになるというもの。

しかし、「新規国債発行44兆円以下」というのは、単なる民主党政権が定めた方針であり、資金調達面でボトルネックがあるわけではない。安倍新政権誕生に対する期待を背景に、日経平均株価は26日には3月27日以来、約9カ月ぶりに1万0200円台を回復したが、10年国債の利回りは0.78%と、1%前後であった3月に比較してまだまだ低い水準にある。これは、市場が大型補正予算の財源となる新規国債発行に応じる用意があることを示したものでもある。

「財政規律」や「財政健全化方針」という、言葉上の問題があったとしても、現実問題として新規国債発行は大型補正予算編成のボトルネックではない。大型補正予算の現実問題としてのボトルネックは、「公共事業の消化能力≒人材不足」である。

26日付日本経済新聞は、「復興需要『来年ピーク』 『人手不足』88%、工事遅れ懸念」、という見出しで、日本経済新聞社が10月下旬から12月上旬に行った全国建設関連企業に対するアンケート調査結果(回答社数156社)を報じている。その記事の中で、「回答企業の88%は人手不足を感じており、工事の進捗や工事費に影響する懸念がある」と報じ、「人材不足」が復興需要のボトルネックとなる可能性があることを指摘している。

問題は、こうした「人手不足」は、一時的な現象ではないというところ。公共事業費は1999年度の14.9兆円から2011年度は6.2兆円(共に補正込)へと、10年ちょっとの間に大幅に削減されてきた。こうした、長年にわたる公共事業費の削減に伴って、建設業就業者総数は1997年の685万人をピークに毎年減り続け、2011年には473万人(2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く)まで、200万人以上減少して来ている。つまり、復興需要における「人手不足」は、就業者減少という供給サイドの問題で顕在化しているのである。

こうした状況下での問題は、大型補正予算によって公共事業を大幅に増やした際に、それを消化できるだけのマンパワーが残っているかである。今回の「人手不足」は、大型補正予算による需要増で短期的に解決出来る問題ではない。例え、短期的に公共事業費を増やしたところで、それが「一時的需要」であることが分かっていれば、建設業を目指す人材は増えないだろうし、雇用を増やす企業も限定的になることは当然である。

復興需要で顕在化して来た「人手不足」は、復興需要という需要の急増による需給バランスの崩れによってもたらされたものではなく、長年公共事業を減らし続けて来たという、構造的需給バランスの崩れによってもたらされたものである。

「強い経済を取り戻す」ために、大型補正予算の編成を目指す安倍政権にとってのボトルネックは、「財源」ではなく、「人手」である。そして、その「人手不足」を解消するためには、補正予算という一時的な需要を付けるのではなく、今後公共事業が増える、或いは一定規模以上で安定するという見込みを社会に植え付ける必要がある。

「強い経済を取り戻す」ことを掲げる安倍新政権が為すべきことの一つは、これまでの行き過ぎた「公共事業罪悪論」を撤回し、今後は必要な規模の公共事業を確保する方針を示すことである。南海トラフ地震など、今後も大きな災害が見込まれる中、その被害を少なくするためにも、また災害が起きた際に迅速な復興を成し遂げるためにも、盲目的な公共事業費削減という方針を見直すべき時期に来ている。
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