アベノミクスは本気で「デフレ脱却」を目指すものなのか? ~「次元の違う」金融緩和と、「先祖帰り」する経済戦略

「政府は28日午前、最重要課題と位置付けるマクロ経済政策の司令塔となる経済財政諮問会議の民間議員を発表した。東芝の佐々木則夫社長、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長、伊藤元重東大教授、日本総合研究所の高橋進理事長の4人を起用する。来年1月上旬に初会合を開く。経済成長を重視する顔ぶれで、デフレ脱却への道筋を確実にしたい考えだ」

安倍政権の経済政策の司令塔となる経済財政諮問会議の民間議員が明らかになった。慣例通り、財界から2名、有識者から2名の計4名が起用される。注目されるその顔ぶれは、「経団連副会長」を出している東芝の佐々木社長、「経団連ヨーロッパ地域委員会 共同委員長」を務める三菱ケミカルホールディングスの小林社長に、経済学者の伊藤元重東大教授、エコノミストの高橋進日本総合研究所理事長といった面々。

今回のこの人選について、日本経済新聞は「諮問会議 成長重視の布陣」という見出しで好意的に報じている。しかし、本当に今回の人選が「成長重視の布陣」と言えるのかは甚だ怪しい限りである。

今回の人選の特徴は、想定されていたことではあるが、民間議員が全て「生産・供給サイドの代弁者」で占められることになったこと。こうした面子から想像されることは、経済再生へのアプローチが、従来型の「生産・供給サイド」からのものになる可能性が高いことである。

需要不足による15兆円にも及ぶとされる需給ギャップがデフレの要因だとされている今の経済状況を、「生産・供給サイド」に立つ人達が、「生産調整」という縮小経済以外の方法で「デフレ脱却への道筋」を付けられるのだろうか。この人選では、「有効需要の増加」を通して需給ギャップを埋めて行く有効な方策が生み出されることを期待することは難しい。

この「生産・供給サイド」を代表する顔ぶれから伺われる方向性は、「消費増税による財政再建」「法人税減税よる競争力強化」「規制緩和」「TPP交渉参加」というもの。

これらは、1997年の消費増税実施以降、長きに渡って日本経済を苦しめて来たデフレを加速しかねない危険な方策でもある。そして、これらの方策が導く日本経済の将来像は、「有効需要不足下での過当競争による物価下落圧力の上昇」であり、「企業と消費者間の格差拡大」である。

「生産・供給サイドの代弁者」である民間議員達が、こうした経済政策によるデフレ圧力を緩和するために、「次元の違う金融緩和」を声高に主張する姿が、今から目に浮かぶようである。

また、ミクロ政策を立案する日本経済再生本部に置く「産業競争力会議」のメンバーに、竹中平蔵慶大教授、楽天の三木谷浩史社長らを充てることが報じられていることも注目されるところ。

「脱デフレの司令塔」とされる日本経済再生本部の主要メンバーに、「自民党をぶっ壊す」と明言して日本に「行き過ぎた競争原理」を持ち込み、「日本経済をぶっ壊した」小泉内閣時代の経済財政政策の中心人物であった「デフレ経済の生みの親」である竹中教授を据えるというのは、完全な「マッチポンプ人事」。

安倍新政権の顔触れについて、一部では「先祖帰り」という批判も出ているが、顔触れに関する限り、閣僚以上に、経済諮問会議や日本経済再生本部のメンバー構成は、「先祖帰り」色の強いものとなっている。これは、政策面でもこれまで効果を生むどころか、デフレを加速して来た政策への「先祖帰り」を想像させるもの。金融政策においては「次元の違う金融緩和」を推し進める安倍政権の政策も、経済政策においてはこれまでと「同じ次元の政策」にとどまりそうだ。

経済財政諮問会議の民間議員選出の「先祖帰り」傾向をみる限り、安倍政権が本当に「デフレ脱却への道筋を確実にしたい」という強い意思を持っていることは伝わって来ない。そうした観点から、今回の経済財政諮問会議の民間議員の選出は「喝!」である。もし、安倍総理が「デフレ脱却への道筋を確実にしたい」ということで、敢えて「デフレ経済の育ての親」である経団連や「供給・生産サイド」の有識者を選び、彼らの主張と正反対のことを政治主導で実施するという「次元の違う政治」を考えているのであれば「大あっぱれ!」であるが…。
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