より重要になる政府と日銀の距離感 ~ 「次元の違う金融緩和」の「入口」に立つ日本と、「出口」を考え始めた米国

「2%の物価目標、為替については、日銀の金融政策が決定的に重要であります。日本銀行に責任を持って対応してもらわなければなりません」

4日、安倍総理大臣は伊勢神宮参拝後に行った年頭記者会見でこのように述べ、「デフレから脱却をして、円高を是正させ、さらに経済を成長させていく」ことへの強い決意と、そのために日銀にプレッシャーをかけ続ける意思を改めて表明した。

こうした安倍総理の決意を先取りする形で、2013年の株式市場は久しぶりに幸先の良いスタートを切った。懸念されていた米国の「財政の崖」が取りあえず回避されたことを受けて米国市場が年明け後大きく上昇したことに円安も追い風となり、4日の東京株式市場は日経平均株価の上げ幅は292円と大発会としては2002年の328円高以来11年ぶりの大幅上昇。東証第1部の売買代金も1兆9516億円と、大発会が終日取引になった2010年以降では最高となり、「巳年で商売繁盛の年」に相応しいスタートとなった。

為替もNY市場で雇用統計発表直後一時的に円高に振れるなど、一瞬乱高下したものの、88円台に戻して取引を終え、円安圧力の強さを示した。ドルは対円では2010年7月以来の高値と、安倍総理の初夢が早くも実現したかのような展開。

野田前総理が解散表明をした11月14日に79円90銭近辺であった円は、僅か一か月半強で約10%下落。民主党政権なら「投機的な動きや過度な変動に対しては断固たる措置を取る」と言いかねない速度で円安が進んで来ている。

「85~90円ぐらいにどう収めるかを考えなければいけない」

先月21日、石破自民党幹事長は「円は安ければ安いほどいいかといえば、日本の産業構造上、そうではない」と、輸入に依存する原油の価格上昇をもたらすなど円安の負の側面も指摘し、適正な為替水準についてこのように発言したが、ここに来て円安ピッチが速まったことによって、あっという間にこうした心配をしなくてはならない状況になっている。円安・ドル高に歩調を合わせるかのように、80ドル台後半で推移していた原油先物(WTI)も93ドル台まで上昇して来ている。

気を付けなければいけないことは、FRBが3日に公表した昨年12月11、12日に開催されたFOMC議事録で、FRBが実施している毎月850億ドルの債券購入を2013年中に終わらせる可能性があることが示されたこと。

先週末に発表された米国の失業率は7.8%と、バーナンキFRB議長が先月12日に事実上のゼロ金利政策を継続する条件として示した6.5%まで低下するにはまだまだ時間が必要な状況に変わりはないうえ、2013年のFOMC投票権を持つメンバーがハト派で占められることになったことから、実際にゼロ金利政策が見直される可能性は昨年より低くなっている。しかし、金融市場に「FRBは実質上のゼロ金利政策の出口を検討している」という意識が芽生えたことには注意が必要である。

円安・ドル高の流れが顕著になって来た中で、中央銀行が円キャリートレードの促進を図るなど「次元の違う金融緩和」の「入口」に立とうとしている日本と、機関無制限のQE3実施に踏み切ったものの「出口」を意識し始めた米国。日米の政策的方向感は、昨年までとは若干違って来ていることには留意が必要である。

「85~90円」という具体的な為替水準に言及してしまった安倍政権。この水準を超えて円安に振れた場合、どのような対応を示すのか。期待先行で動き出した市場を上手くコントロールしないと、「2%の物価目標」という「初夢」は正夢にできても、「経済を成長させていく」という目標は「見果てぬ夢」に終わってしまう可能性はある。安倍総理が日銀に対する強硬姿勢を示して来た効果が既に現れて来ていることで、今後の政府と日銀の関係の距離感がより一層重要になって来ている。
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