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TPP「サブミナル記事」の勇み足 ~ 日本は主要国で「最も開かれた国」である

「成長政策の王道は環太平洋経済連携協定(TPP)のような貿易自由化の加速や、法人税率引き下げなどによるビジネスコストの低減である」

毎度のことながら、日本経済新聞のTPPに関する報道姿勢には異常なものがある。安倍総理が「人類史上歴史的な取り組みだ」と表現する「10年以上にわたるデフレからの脱却」を図るのに、「王道」も「邪道」もあったものではない。そもそも「10年以上にわたるデフレ」を放置して来たことが、「人類史上歴史的」。また、そうした間違った政策を批判するどころか、旗振り役を務めて来た日本のメディアこそ、もしかしたら「人類史上歴史的」なのかもしれない。

「アジア重視を掲げるオバマ政権は安倍政権のTPPへの対応を注視している。米国が主導する自由貿易の枠組みを作り、中国の台頭をけん制する狙いだ。日本の参加は『極めて重要』との立場だが、政府・与党の方針は定まらない」

TPP亡者の日本経済新聞にかかると、日米首脳会談が2月以降で再調整になったことも、「TPPへの参加判断を先送りし、早期の決断を期待する米政権との溝は埋まっていない。TPPが首相の訪米日程にも影を落としている」という、安倍政権が交渉参加を「決められない」ことが原因であるかのような報道になってしまう。

「一部の新興国の間で強まっている保護主義政策が世界貿易を年間6500億ドル(約57兆円)縮小させる悪影響を及ぼしていることが世界貿易機関(WTO)の試算でわかった。年間貿易額の3.5%を占める規模で、各国の輸出入の抑制要因になっている。WTOの調整機能が低下する中、自由貿易の新しいルール作りが急務だ」

同じ9日付日本経済新聞には、「保護主義で57兆円縮小 自由化拡大枠組み急務」という見出しで、「WTOの調整機能が低下する中、自由貿易の新しいルール作りが急務だ」という日本経済新聞の主張が掲載されている。ここでいう「自由貿易の新しいルール」というのがTPPを指していることは明白。要するに「TPP」という文言は使っていないものの、TPP推進の必要性を読者に印象付けるための洗脳記事である。

TPP交渉参加に必ずしも積極的ではない安倍政権が誕生して以降、日本経済新聞は、今回のようなTPP交渉参加が必要不可欠であるかの印象を植え付けるための「サブミナル記事」を増やして来ているようである。

しかし、この「保護主義で57兆円縮小 自由化拡大枠組み急務」という「サブミナル記事」は、TPP推進論者にとって、「勇み足」だったかもしれない。

「WTOによると、G20がリーマン・ショック後に導入した貿易制限措置873件のうち、12年10月までに撤廃した措置は21%にとどまる。一方、12年5月から10月までに71件の貿易制限が新たに導入され、合計690件の保護主義政策が残る」

この「サブミナル記事」の中で興味深いのはこの部分と、掲載されている「主要国の保護主義的措置」というグラフである。
保護主義的措置(日経)

掲げられているグラフから明らかなことは、「主要国」の中で日本が最も「保護主義的措置」が少ない国、つまり、日本が最も「開かれた国」だということである。主要国の「保護主義的措置」の件数は明確に示されていないが、グラフから推計すると、日本21件、米国31~32件、EU42件、といったところ。日本の「保護主義的措置」の件数は、米国の3分の2、EUの半分なのである。

日本経済新聞は、「成長政策の王道は環太平洋経済連携協定(TPP)のような貿易自由化の加速や、法人税率引き下げなどによるビジネスコストの低減である」と主張するが、日本より「保護主義的措置」の件数が多い米国が、日本よりも成長していることについて、どのように説明するのだろうか。

「主要国」の中で最も「開かれている国」日本が、「米国が主導する自由貿易の枠組み」を構築するために「例外なき関税撤廃」に向かうことが国益なのだろうか。

世界の主要国の中で「最も開かれた国」である日本が、「日本より開かれていない国」米国が主導する「非常に高いレベルでの貿易や投資の自由化を求めるTPP」の交渉に参加し、「日本より開かれていない国々」の要求に応じて「例外なき関税撤廃」に突き進む姿は、「大坂冬の陣」で外堀だけでなく内堀も埋められた豊臣家を見るようである。

「非常に高いレベルでの貿易や投資の自由化を求めるTPP」が世界経済にとって不可欠な枠組みであるならば、日本が「例外なき関税撤廃」に向かうより先に、米国に対して日本並みに「開かれた国」になることを求めるのが当然のはずである。

TPP推進論者が盲目的に主張する「国を開く」という主張は、必ずしも正確なものではない。日本は既に世界の主要国の中で「開かれた国」なのだから。

「保護主義で57兆円縮小 自由化拡大枠組み急務」という「サブミナル記事」は、TPP推進論者の根拠が極めて曖昧なものであることを露呈したものとなった。日本が「人類史上歴史的な失政」を犯さないためには、まずは事実に基づいた客観的な議論から始める必要がある。歪めた事実に基づく洗脳は、「人類史上歴史的な失政」に繋がるものである。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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