緊急経済対策と、「雇用」にも責任を課せられた日銀 ~ 成果は政府、責任は日銀

「日銀は実体経済にも責任をもってほしい。それは雇用だ。つまり雇用を最大化することも頭に入れてもらいたい」

安倍総理は10日の日本経済新聞のインタビューで、デフレ脱却が実現するまで日銀の金融政策への関与を続ける姿勢を示した。

安倍総理が、改めて日銀の金融政策に対して影響力を強める姿勢を示したことを好感し、為替市場で円は2年半ぶりに対ドルで89円台まで下落、日経平均株価も1年10か月ぶりに18,000円台に乗せた。

安倍総理が日銀に「雇用」の責任を課そうとしているのは、アベノミクスの副作用の一つとして、円安による「輸入物価の上昇」、それに伴う「物価上昇」が「雇用創出」よりも先に現れることを、安倍総理自身が想定しているからに他ならない。

日銀の責務を「物価の安定」だけにしておくと、「雇用創出」が果たされる前に「物価上昇」を理由に日銀が量的緩和解除に踏み切った2006年3月の二の舞になりかねない。日銀が「物価上昇」を理由に金融緩和解除に走る、或いは金融市場が勝手に「出口論」をテーマに動き出す可能性を、日銀に「雇用」に責任を持たせることによって封じようとしているのだろう。欧米の経験などから、金融緩和が「雇用創出」に繋がらないことは金融市場では周知の事実。金融市場にとって重要なことは、日銀が「物価の安定」だけに責任を持つ時に比べて、「雇用」にも責任を持たされれば、金融緩和の「出口」はそれだけ遠くなるということ。

「規模の面では、補正予算による財政支出は13兆円、事業規模は20兆円を超える、リーマン・ショック時の臨時、異例な対応を除けば、史上最大規模となります。この対策によって実質GDPを概ね2%押し上げ、約60万人分の雇用を創出して参ります」

11日安倍総理は緊急経済対策を閣議決定した後で行った記者会見で、このように述べた。「日銀が供給したお金を使うには政府が率先して需要を作り、景気の底割れを防がなければならない」という拡大均衡を目指すというところが、悪化する財政事情に合わせて縮小均衡を目指した野田政権との大きな違い。

気に掛かる点は、「この対策によって実質GDPを概ね2%押し上げ、約60万人分の雇用を創出して参ります」という部分。この「約60万人分の雇用を創出」というのが、政府の「雇用ターゲット(数値目標)」なのかについては全く触れられていないが、こうした発言は、政府が「雇用創出」に責務を負っていることを暗に示したもの。

日銀の抜け駆けを許さないために日銀に「雇用創出」の責務を課すと同時に、政府が「雇用創出」をすることを高らかに宣言した安倍総理。総理の思惑通り「雇用創出」が達成出来れば安倍政権による「次元の違う経済対策」の成果となり、「雇用創出」という目標が達成出来なければ、その責任の一部は日銀が担うことになる。これは、安倍内閣にとっては損のない取引であり、日銀にとっては余り得の無い取引である。

「昨年11月中旬から始まった株高と円高修正が、企業年金の運用改善につながっている。主要年金の10~12月の平均的な運用利回りはプラス5.8%と、3四半期ぶりの水準を確保した。現在の相場が続けば年度を通してもプラスが見込まれ、運用悪化に苦しむ年金にとってはひとまず一息つくことになる」

野田総理の退陣、安倍政権の誕生を契機に、金融市場が円安・株高に転じたことで、企業年金の運用利回りが急速に改善して来ている。短期的な運用利回りの改善によって、年金が抱える諸問題が全て解決されるわけではないが、日本社会は「インフレを前提とした制度」の上に成り立ってきたということを改めて感じさせる出来事である。年金基金の運用利回り改善が企業収益の下支えとなり法人税収が増え、年金不安が減ることで個人消費が活発化していくことになれば理想的である。

アベノミクスで打ち出される個々の政策の効果や実効性に関しては多くの異論があること、副作用が出てくることも間違いない。しかし、日本社会が「インフレを前提とした制度」の上に成り立ってきた現実に立てば、日本が「失われた20年」から脱出するためには「脱デフレ」以外に選択肢はない。アベノミクスで矢継ぎ早に繰り出される個々の政策自体には効果の疑わしいものが多々あるのは事実だが、目指す方向としては正しい方に向き始めたと言えそうである。
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