景気は「気」から ~ でも景気が上向きになると金利が上昇する…

「日本経済が低迷しているのは、バブル崩壊後の調整で苦しんでいるからではない。デフレマインドにどっぷり浸かって、家計も企業も支出を増やそうとしないから景気が悪いのだ。まさに景気は『気』からなのである。資金はジャブジャブにある」

経済諮問会議の民間メンバーである伊藤元重東京大学教授は、13日付の産経新聞に「2013年の経済はどうなるだろうか。足元は大変に厳しい状況だ。しかし大切なことは、厳しさを嘆くことではなく、その先にある明るい可能性に目を向けることである」という書き出しで始まるコラムを寄稿し、このような主張をしている。日本のマクロ経済政策の司令塔となる経済諮問会議のメンバーである著名な経済学者による、「景気は『気』からなのである」という主張は、らしくない何とも微妙なもの。

一方「資金はジャブジャブにある」という指摘は、如何にも経済学者らしいもの。マクロ経済上は「資金はジャブジャブにある」という「量」が重要かもしれないが、現実の経済は「ジャブジャブの資金がどこにあるか」という「場所」によって大きく変わって来る。「ジャブジャブにある資金」のポートフォリオを考えた場合、一部の企業、一部の個人に資金が「偏在」しているよりも、多くのところに「分散」されている方が安定的なことは「分散投資」と同じ概念。現状は「資金はジャブジャブにある」が、それは「偏在」しており、ポートフォリオとしての安定性に欠ける状況にある。

「仮に景気が少し上向きになって企業貯蓄が投資に回るようだと、国債金利が上昇してしまう。1000兆円を超える公的債務を抱える政府にとって、金利上昇は財政運営に非常に大きな打撃を与えるだろう」

「景気は『気』から」と曖昧な主張する東大教授は、別の媒体ではこのように、景気が少し上向きになって「ジャブジャブにある資金」が投資に回るようだと、「国債金利が上昇し、財政運営に大打撃を与える」とも述べている。

日本のメディアや有識者達は、「景気は気から」という「根拠の乏しい精神論」をよく使う一方、「何かのきっかけで国債金利が上昇し、財政が破綻する」という「マイナスの気」を常に発し続けている。経済学では、「気」に景気を解決出来るほどの力があるが、金利上昇による財政破綻を防ぐほどの力はないということなのだろうか。

「家計も企業も支出を増やそうとしないから景気が悪いのだ」と主張する一方で、「景気が少し上向くと財政運営に大打撃を与える」と指摘する経済学者。 家計も企業も支出を増やしたくなる程度で、国債金利が上昇しない程に景気が上向くような「微妙な気」を持つことは、経済学者なら出来るのかも知らないが、大多数の一般人には事実上困難である。

国内で尤もらしく語られている国債暴落論には、現実的な点が見過ごされている。南欧諸国がソブリン危機に見舞われたのは、資金調達の多くを外国に頼っていたからである。これに対して、日本国債の外国人の保有比率は、ジリジリと上昇して来ているといっても9.1%(2012年9月末)である。日本が南欧諸国と同様にソブリン危機に見舞われるとしても、それより前に、日本国債の外国人投資比率上昇局面が先に来て(この局面では金利は安定)然るべきである。

また、「景気が少し上向きになった」ことを要因とする金利上昇は、例えばFRBが行っていたようなオペレーションツイスト(短期国債を売り、長期国債を購入)などを利用して、ある程度中央銀行がコントロール可能なものである。

ここ数年、著名な経済学者やエコノミストが警鐘を鳴らす国債暴落が日本で起きないのは、こうした現実を無視したフィクションであるからである。日本で将来に渡って国債暴落が起きないと断定は出来ないが、現状は国債暴落が起きる条件はまだ揃っていない。

経済学の専門家が描く日本経済の理想形は、アジアの成長力を取り込む外需主導型で企業活動を活発化させつつ、国債の金利上昇を伴わないように、消費増税によって内需を冷やし財政再建を図っていく。購買力の落ちた国民にはTPPで国を開く成果として国内物価を下げ、実質的(計算上)の購買力を保ち、「その先にある明るい可能性」という淡い期待を抱き続けさせるというものなのかもしれない。「その先にある明るい可能性」が、こうした日本経済の姿だとしたら、「気」を発しようとする国民が増えることは期待薄である。
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近藤駿介

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