円相場2年7か月ぶり90円台回復 ~ ここまではラッキー、ここからが安倍政権の実力が問われる局面

「日銀は21~22日に開く金融政策決定会合で追加の金融緩和を実施する方針を固めた。昨年12月の前回会合でも緩和しており、2003年5月以来、約9年半ぶりの2回連続緩和となる。政府と日銀は17日、デフレ脱却に向けた政策連携の枠組みとなる共同文書の内容で大筋合意した。日銀が2%の物価上昇率目標を採用することを明記し、日銀総裁はその進捗状況を定期的に政府に報告する責任を負う」

日銀が9年半ぶりとなる2回連続緩和に踏み切ることが確実になったことで、円は2010年6月以来となる1ドル=90円台を付けた。ここ数日「閣僚や自民党幹部の発言」によって市場に絶好の押し目を提供したことが、新しくもない「日銀の2回連続緩和」というニュースに為替市場が反応する余地を作った格好。

安倍政権の足元の円相場に対する公式見解は、「依然として行き過ぎた上昇の修正局面にある」というものであるが、おさめるべき円相場が「85円から90円ぐらい」とした「石破ライン」の円安上限に達したことで、国内外で様々な反応、影響が出て来ている。

「『米自動車政策評議会』(AAPC)は、円相場の押し下げを狙った日本の政策に抗議し、オバマ大統領は報復も辞さない姿勢を明確にするべきだ」と訴えたほか、ロシア中銀筆頭副総裁は16日、「日本は円相場を押し下げている。他の諸国も追随する可能性がある」と語り、世界の主要国・地域は「通貨戦争」の瀬戸際にあると警告。その前日の15日にはユーロ圏財務相会合のユンケル議長が、ユーロは「危険なほど高い」水準にあると発言。海外から円安に繋がる「次元の違う金融緩和」政策に警戒論が示されて来ている。

また、国内でも18日付日本経済新聞が「円高修正 家計には影 ガソリン150円台 ■ 輸入家電も値上がり」という見出しで報じている通り、「円安による輸入物価の上昇が家計に及び始めている」。

円安の一次的効果は輸出企業にもたらされ、円安によるデメリットは広く、早く一般国民に及ぶ。日銀は政府からの強い要請を受け「日銀が2%の物価上昇率目標を採用することを明記」する方針だが、「85円から90円ぐらい」とした「石破ライン」を大きく突破して円安が進んだ場合、予定より早く「2%の物価上昇目標」に達してしまう懸念も出て来た。もともと物価は、原油価格の上昇や輸入物価の上昇と、それを理由に政策当局が公共料金の値上げを認可すれば簡単に上昇させることが出来るものであり、中央銀行にその責任を負わせるべき責務として相応しいとは言えないもの。中央銀行が負うべき物価の責任は、インフレを抑制することであり、物価上昇を演出するものではない。

おそらく、安倍政権も、民主党政権が「断固たる措置」を繰り返しても抑え込めなかった円高傾向を、こんなに早く転換できるとは思っていなかったのだろう。報道では「アベノミクスへの期待」という表現が使われているが、これだけ短期間に円安に振れたのは、安倍総理が、ファンダメンタルズの変化や、金融市場独特の季節要因に気付いていなかったことの証左でもある。

ファンダメンタルズの変化とは、日本の貿易収支の赤字化や米国FRB内での「出口論」の台頭であり、季節要因とは、米国の多くの金融機関にとって新年度入りし「January Effect(1月効果)」というアノマリー(合理的に説明が出来ない市場の現象)が起こりやすい時期であったということ。市場内にそうした円安転換への下地が整いつつあるところに、日本で「財政再建原理主義」から「リフレ政策」へ180度方針転換を訴える安倍政権が誕生し、金融市場に火をつけたというのが実態ではないだろうか。

安倍政権が「次元の違う金融緩和」を掲げて「通貨安戦争」に打って出ても、FOMC内では「出口論」が検討され、ECBが既に「無期限、無制限の金融緩和」をしてしまっているなかでは、有効な対抗策がないという現実もある。

もともと、「デフレ」という現象は、景気低迷の結果であって、デフレが原因で景気低迷している訳ではない。そうした中で「2%の物価目標」という「結果」だけを強く求め過ぎれば、副作用が出てくるのは当然のこと。

安倍政権の想定を超え、予想外のピッチで進行した円安。このままでは実体経済に好影響が及ぶ前に、スタグフレーション(不況下の物価上昇)になりかねない。

90円台に達した円安を、「アベノミクスへの効果だ」と舞い上がることなく、真水10.3兆円という大規模な補正予算が世の中に行き渡る(行き渡せる)まで、どのように「85円から90円ぐらい」という「石破ライン」におさめられるか、ここからが安倍内閣の本当の実力が問われる局面である。
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