産業競争力会議始動 ~ 「規制社会」の成功者達で「規制改革」が可能なのか

「弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる」

アベノミクスの効果が、早速「月例経済報告」に反映された。甘利経済財政・再生相は23日、1月の「月例経済報告」を関係閣僚会議に報告。自動車を中心に企業が増産を計画しており、円安・株高で業況判断にも明るい兆しが出てきたことに基づいて、足元の総括判断を、前月までの「弱い動き」に新たに「一部に下げ止まりの兆し」との表現を加えて8カ月ぶりに上方修正した。

また、政府との連携強化を打ち出した日銀も、同日、1月の金融経済月報で、景気の現状を「弱めに推移している」とし、昨年12月の「一段と弱含んでいる」から景気の基調判断を上方修正し、早速「連携強化」を印象付けた格好。

「上方修正」といっても、政府、日銀ともに景気の基調は「弱い動き」「弱めに推移」としており、経済状況が弱いことには変わりがない。「一部に下げ止まりの兆し」が出て来たことや、「円安・株高で業況判断にも明るい兆しが出て来た」という、「兆し」にフォーカスした上方修正。「兆し」というまだ実現していない「気配」を根拠に上方修正されたということは、まさに「景気は気から」を地で行くもので、悪く言えばアベノミクスによる成果を必要以上に強調する「景気は洗脳から」というもの。

同じ23日、アベノミクスの「三本の矢」の「成長戦略」の具体策を検討する産業競争力会議の初会合が開かれた。産業競争力会議の目的は、マクロ経済政策の司令塔となる経済財政諮問会議や、規制改革会議などと連携しながら成長戦略の検討を進めること。そのために、10人の民間有識者議員のうち、「現場感覚を重視」する目的で現役の企業経営者8名が選出された。

「現場感覚を重視する」という理由で、現役の企業経営者中心で議論することは、それはそれで尤もな判断である。しかし、それは偏った議論になりかねないリスクを孕んだものでもある。

先に開催された経済諮問会議は、経済の自律的成長を目指すための課題として7項目を挙げている。その中には「産業の供給過剰構造を解消して新陳代謝を活性化するため、構造問題を抱える分野からの退出や新規分野への参入を促すメカニズムの検討」というものが含まれている。

日本経済の成長力を高めるには「規制改革が一丁目一番地で重要」との認識を示した産業競争力会議の民間議員である竹中慶大教授。竹中教授は言わずと知れた、小泉内閣の経済政策の中心的な役割を果たしてきた人物である。もっと言えば、今から15年前の1998年、小渕内閣の経済戦略会議委員に就任後、自民党政権で長年ずっと経済政策に携って来た人物である。その功罪は別として、激動の15年間、同じ人物がずっと自民党政権の経済ブレインを務めているというのは、政府の民間議員の選出方法、或いは学会で「新陳代謝」が進んでいないことの証明でもある。

政府が本気で「新陳代謝の活性化」が必要だと認識しているのであれば、15年前と同じ人物に頼るのではなく、新しい若手学者を登用すべきであった。国民の間でイメージが定着している人物の登用は、登用する側には「安心感」があるかもしれないが、国民から見れば「またか」という印象で、「変化」を感じ難い人選だと言える。15年間見続けてきた学者に「規制改革」による「新陳代謝の活性化」の必要性を問われても、納得感が高まるとは思えない。

同様のことは、「現場感覚を重視する」という理由で登用した現役の企業経営者にも当てはまる。それぞれは立派な経営者であり、成功者であることは間違いないと思われるが、問題は全員が「規制緩和が必要だ」とされる現状の国の仕組みの中での成功者であるということ。

「規制緩和が必要」と言われる現在の「規制社会」で成功して来た企業経営者、ある意味政府のステークホルダー(利害関係者)の「現場感覚」が、「規制改革が一丁目一番地」であるという産業競争力会議の主旨に合うものなのだろうか。

「規制社会」の中でも成功した経営能力は大いに評価されるべきものであるが、既に成功を成し遂げた経営者が、ライバルを増やす「産業の供給過剰構造を解消して新陳代謝を活性化するため、構造問題を抱える分野からの退出や新規分野への参入を促すメカニズムの検討」を本気で行うことが実際に可能なのだろうか。理想論はともかく、現実論として、議論が自分たちの地位が危険に晒されることのない分野、課題に偏ってしまう、誘導されてしまうことは十分に想像されること。政府にはこうした「兆し」にも十分な配慮をして会議の運営を図ってもらいたいものである。

政府は成長戦略で「健康」「エネルギー」「次世代インフラ」「農林水産業」という4分野を掲げている。正直、これらの分野が今後の日本経済の成長を支える分野であるというのは「???」である。これらの4分野の共通項は、産業競争力会議の民間委員となった企業経営者達の本業とバッティングしない、或いは、新たな事業機会を生むかもしれない分野であるということ。

本当に「規制改革」による「産業の新陳代謝」が必要だというのであれば、規制が存在する「規制社会」の中で成功して来た企業経営者だけの「現場感覚」に依存するのでなく、分野に限らず、今ある規制で成功を阻害されて困っている経営者の「現場感覚」も利用する機会を設けるべきではないだろうか。

「公務員給与の削減」、「国会議員の歳費見直し」や「定数の削減」など、政府には「身を削る改革」が求められている。こうした「身を削る改革」は、産業競争力会議の民間議員達にも同様に求められるべきもの。政府と産業競争力会議の民間議員達と「身を削る改革」という認識を共有できるのかどうか、これは政府と日銀の認識の共有化以上に重要な課題である。
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