聞き覚えのある所信表明演説 ~ 6年半前と同じ政策を掲げて「経済再生」を図る安倍内閣

「我が国にとって最大かつ喫緊の課題は、経済の再生です」

安倍首相は28日の所信表明演説で、当面の政権運営は経済を最優先する方針を鮮明にした。2006年の第1次安倍内閣の所信表明演説と比較すると、文字数は8381字から約4700字へとだいぶ減ったものの、掲げた目標は「美しい日本」という抽象的なものから、「経済再生」へと、より具体的になった。

目的がより明確になったのは、それだけ日本が置かれている状況が厳しさを増して来ていることを表したものでもある。

「成長に貢献するイノベーションの創造に向け、医薬、工学、情報技術などの分野ごとに、2025年までを視野に入れた、長期の戦略指針『イノベーション25』を取りまとめ、実行します」

「アジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むため、お互いに国を開く経済連携協定への取組を強化するとともに、WTOドーハ・ラウンド交渉の再開に尽力します」

「新たな日本が目指すべきは、努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化せず、働き方、学び方、暮らし方が多様で複線化している社会、すなわちチャンスにあふれ、誰でも再チャレンジが可能な社会です」

「地方を支える農林水産業は、新世紀にふさわしい戦略産業としての可能性を秘めています」

「NPOなど『公』の担い手を支援し、官と民との新たなパートナーシップを確立します」

これらは、今回の所信表明演説ではなく、2006年9月に発足した第一次安倍内閣の所信表明演説の中身である。政権が掲げる目標は、抽象的なものからより具体的なものに変化しているが、その中身は「経済連携協定への取り組」に違いがあるものの、6年半前と大きくは変わっていないことが分かる。掲げる政策が6年半前と同じということは、6年半前に掲げられた政策が、効果のないものであったか、実行されなかったかのどちらかである。

第一次安倍内閣と第二次安倍内閣の掲げる政策の違いは、日本の置かれた状況が一段と厳しくなったことで「大胆な」「次元の違う」という修飾語が付けられたことと、日銀に対する姿勢である。

第一次安倍内閣が誕生したのは、日銀が量的緩和を打ち切った2006年3月(同時に0金利政策も解除)から半年後であった。安倍総理が日銀に「次元の違う金融緩和」を求めると同時に前回とほぼ同様の政策を掲げるということは、安倍総理が6年半前に政策効果表れなかった原因を、日銀の金融政策にあると考えているということ。そして、日銀との政策協定が成立した今回、安倍総理の政策には言い訳がなくなった。安倍政権が一つ一つの政策効果を吟味することなく、矢継ぎ早に政策を打ち続けているのも、日本経済と同様に安倍総理にも退路がないからである。

「私が何故、数ある課題のうち経済の再生に最もこだわるのか。それは、長引くデフレや円高が、『頑張る人は報われる』という社会の信頼の基盤を根底から揺るがしていると考えるからです」

安倍総理は、今回「経済の再生」を「最大かつ喫緊の課題」だとした理由をこのように述べた。しかし、「頑張る人は報われる」という美しい言葉が通用するほど日本経済の現状は甘くない。日本を始め世界的に問題になっているのは国民の「頑張る場」が年々失われていることなのだから。

大学卒業しても就職できずにいる学生や、人生を賭けて司法試験や公認会計士試験に合格しても就職口が見つからない若者、倒産やリストラで職を失った人達に「頑張る場」をどのようにして提供していくか。これが、安倍内閣の重要課題である。

「『強い日本』を創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です」

安倍総理は、国民にこのような言葉を投げ掛けて、所信表明演説を締めくくった。安倍総理に忘れて欲しくないことは、国民に「頑張る場」を提供して「強い日本」を作れるのは、日銀による「次元の違う金融緩和」ではなく、政府の「大胆な政策」だということである。
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近藤駿介

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