アベノミクスの副作用~利払い費を小さく見せるお化粧、財政危機を不必要に煽るための厚化粧

安倍政権誕生後初となる国会論争が始まった。全く盛り上がらない国会で、論点の一つとなっているのは、アベノミクスの副作用。そして、アベノミクスの副作用として挙げられているのが、「物価上昇により実質賃金の引下げ」と、「国債増発による金利の上昇」である。

日本経済新聞も2日付で「検証安倍予算(下)~市場の信頼保てるか 苦肉の策で国債抑制」という記事を掲載、その中で「市場の信認をどう保つか。正念場はこれからだ」と、何時も通り国債増発という観点からアベノミクスに警鐘を鳴らしている。

国債増発に伴う長期金利の上昇懸念を煽る「オオカミ新聞」がこの記事で問題視していることは、「国債整理基金の取り崩し」と「利払い費の計算に使う想定金利の引下げ」により、国債発行額を少なく見せているということ。

しかし、「国債整理基金」というのは欧米諸国には存在しないものであり、これが取り崩されることで日本国債の信認が低下するというのは、説得力のない理屈である。また、2013年度の新規発行額が約170兆円、発行残高約855兆円に対して、「国債整理基金」の規模は取り崩す前で約10兆円と、有事の場合には「焼け石に水」であり、これがどれほど日本国債の信認度上昇に寄与して来たというのだろうか。

また、この記事は、「利払い費の計算に使う想定金利を12年度の2.0%から1.8%に下げた」ことを問題にしているが、為替で92円台まで円安が進み、株価が約30%上昇して来た足元でも、10年国債の利回りが0.8%を下回る水準で推移していることを考えれば、1.8%でも高過ぎる位である。

もともとこの「想定金利」は、明確な根拠もなく、市場の実勢レートから必要以上に高く(10年債流通利回りから1%程度)設定されて来ており、一部から批判も上がっていた代物。見方によっては、「利払い費」を多額に見せることで、日本の財政危機を煽る道具に使われてきたものである。

消費増税による財政再建至上主義者であった藤井元財務大臣も、、2009年11月の参議院本会議で「国債市場の不足な混乱をもたらすことのないようにやや十分にとってあるということは、これは事実だと思います。」「国債の利払い費については、……やや大きめで、不足が生じないような対応をしてきたことは間違いありません」と、「想定金利」に明確な根拠がないことと、財政危機を煽るための「お化粧」に使われて来たことを認めている。

この記事は「早期のデフレ脱却を見込むなら想定金利は上げるのが自然なのに、財務相は逆に下げた。透けて見えるのはアベノミクスと矛盾してでも利払い費の増加を小さく見せたいとの思惑だ」と、「想定金利の引下げ」を厳しく批判している。しかし、根拠もなく、不自然に「想定金利」を高く設定するということは、それだけ「利払い費」に充当する国債発行額を多くする必要があること。こうした不必要な操作こそ、日本国債の信認度を低下させるものであり、それを是正することこそ「自然」。

政府の国債政策で疑問なのは、「政府は来年度国債発行計画で2008年度から発行停止となっている10年物の物価連動国債を数千億円発行する方針を固めた」こと。物価連動債は、「物価が上昇すると元本が増えるように設計された国債」。政府は「市場のニーズにこたえる」としているが、「物価が上昇すると元本が増えるように設計」されているということは、安倍政権が目指す「2%の物価上昇」が実現した暁には、国債の償還額がそれだけ増加する、要するに財政負担が増えるということ。

発行規模が少額である限り、国家財政に大きな負担を加えるものにはならないが、「早期のデフレ脱却を見込むなら想定金利は上げるのが自然」と主張する「オオカミ新聞」が、「早期のデフレ脱却による財政再建を見込むなら、物価連動債を発行して将来の財政負担(償還金)を増やすのは不自然」という指摘しないことの方が「不自然」。

物価連動債が再発行されるのは、2%という安倍政権が掲げるインフレターゲットを計るツールとして必要だからにすぎない。将来の財政負担を増やすというコストをかけてまで物価連動債を発行する必要があるのかは、日銀に2%という物価上昇の責任を負わせることの是非とともに議論が分かれるところ。

こうした問題には全く触れずに、「オオカミ新聞」は、「国債整理基金の取り崩し」と「想定金利の引下げ」が、「国債発行額を少なく見せるためのお化粧だ」という主張をしているが、実際は「財政危機を必要以上に演出するために施されてきた厚化粧」を薄くして、あるべき姿に近づいただけで、批判に値しないもの。

「オオカミ新聞」の「日本を代表する経済紙」という「厚化粧」が剥げ落ちるのも時間の問題のようである。
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近藤駿介

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