「アベノミクス」の特徴を反映する金融市場 ~ 恩恵が企業に及びやすく、個人に及び難い政策

「金融市場で株価上昇と長期金利の低下(債券相場の上昇)が同時に進んでいる。一般に株と債券は逆方向に動く。景気回復への期待が高まれば安全資産の債券が敬遠され、高い利益を狙える株が買われる。日本で今起きているのは株高なのに債券も買われる現象。債券投資家は、安倍政権の掲げるデフレ克服を悲観的にみている」

財政規律の低下や物価上昇に伴い長期金利が上昇するなどの「副作用」が叫ばれてきたアベノミクス。しかし、金融市場では急ピッチで円安・株高が進む一方、国債利回りは殆ど上昇していない。

日本経済新聞は、株価の上昇と長期金利の低下が同時進行していることについて、「債券投資家は、安倍政権の掲げるデフレ克服を悲観的にみている」と説明を加えている。しかし、これはおかしな説明である。アベノミクスの「機動的な財政出動」が景気回復、デフレ克服に効果を発揮しないということは、財政赤字だけが増えるということ。だとするとこの新聞お得意の「財政破綻論」に基づけば、金利は急上昇するはずである。

世界の長期金利の指標でもある米国の10年国債利回りが、11月の1.65%付近から2%前後へと上昇する環境下でも日本の長期金利が上昇する気配を見せないというのは、現時点で「財政破綻論」は非現実的であるということが金融市場の共通の認識であるということの証左である。消費増税を中心とした財政再建実現を目指す一部の勢力が煽り立てる「日本の財政危機説」。皮肉なことに、「機動的な財政出動」を掲げるアベノミクスによって、その論理的非現実性が浮き彫りになった格好。

それにしても「債券投資家は、安倍政権の掲げるデフレ克服を悲観的にみている」と、自ら主張し続けてきた「日本の財政危機説」を否定するかのような解説を加えるこの新聞の論理展開はお粗末極まりない。自らが主張する「日本の財政危機説」の正当性を維持するのであれば、株価の上昇と長期金利の低下が同時進行することに対して、「債券投資家は、安倍政権の掲げるデフレ克服を楽観視し、消費増税が実現することで財政の健全化が進むことに期待している」と説明すべきである。

それにも拘わらず「債券投資家は、安倍政権の掲げるデフレ克服を悲観的にみている」と平然と解説しているところを見ると、この新聞は確固たる論理構成をもって「財政危機説」を唱えているのではなく、実際の経済や金融を理解せずに単に「財政危機説」を煽っているということ。安倍総理の言葉を借りれば「もう少し勉強してもらいたい」。

株価の上昇と長期金利の低下が同時進行するのは、アベノミクスが企業の収益拡大を図ることで雇用や給与の引上げを目指すという、「企業先行、個人遅行の政策」になっているなかで、市場は「企業にもたらされた収益は個人に還元されない」と見込んでいるからである。

株価はミクロ(企業収益)をより強く反映し、債券はマクロ(主役は個人消費)をより強く反映するものである。そして、アベノミクスの特徴は、その恩恵がミクロ(企業収益)に及びやすく、マクロ(個人消費等)には及び難いということ。

日本経済がデフレに陥っている根本的な原因が「有効需要の不足」であるなか、「有効需要」の主役である個人への恩恵がすぐには及ばないとなれば、債券投資家が日本がマクロ的に急回復することは難しいと判断したとしても不思議ではない。

日本で株価の上昇と長期金利の低下が同時進行しているのは、こうしたアベノミクスの特徴と、現在の「有効需要不足経済」を反映したものである。「一般に株と債券は逆方向に動く」ようになるためには、ローソンのような「社員の年収を増やす企業」が増えて行くかに懸かっている。
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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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