TPP交渉参加へ~「聖域なき関税撤廃を前提としない交渉に参加する」へ舵を切った安倍政権

「私は速やかに交渉参加すべきだと思っています」

「いざ、総理が交渉参加を決めれば、私は必ず賛成派、反対派、一つになれると思っているんです。何故なら、交渉が始まれば、交渉のテーブルに付けば、その交渉の中で最大限日本の国益を勝ち取ろう、これは賛成側、反対側、共有している思いだからです」

「自民党の公約でもありますが、『聖域なき関税撤廃を前提にする限り反対だ』 と。私、これも『聖域なき関税撤廃』 ということも、これも一部誤解があるなと思うんです。今11か国が交渉のテーブルについていますよね。仮にこれが、『聖域』 がないとしたら何のための交渉なんですか。それぞれ各国が守るべき『聖域』 を作り上げようと思っている場だから、交渉をするんじゃないですか」

12日の衆議院予算委員会において、「私は与党の側で、TPP交渉すべきという立場で、総理の決断を期待したい」という観点から安倍総理にTPP早期交渉参加を促した小泉進次郎議員。自民党最大派閥の町村派79人を上回る、82人の自民党青年局を率い、国民的人気の高い小泉進次郎議員のこうした後押しを受けたことに勇気付けられたのか、「自由な貿易環境、これは国益だ」と明言し、「自由貿易論者」を自認する安倍総理は、TPP交渉参加に傾き始めたようだ。

「日米関係の焦点である環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐり、安倍晋三首相が交渉参加へ動き出した。自民党調査会が13日まとめた『聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対する』 との基本方針は、例外品目の設定を条件に交渉参加に余地を残している。首相は日米首脳会談で『聖域』 容認を引き出せれば3月にも交渉参加表明に踏み切る方針で、オバマ大統領に譲歩を迫る」(14日付日本経済新聞「TPP参加へ首相動く」)

「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対する」 という公約は、「一つでも『聖域』 が存在すれば交渉に参加する」ということを意味するもの。「『聖域なき関税撤廃を前提にしない』 なら『交渉参加する』」というのは、「『聖域なき関税撤廃を前提にする』 限り『交渉参加しない』」という命題の「対偶」といわれるもので、「元の命題が真ならばその対偶も真になる」。

「聖域なき関税撤廃を前提とする限り交渉参加しない」という自民党の選挙公約は、実質「聖域なき関税撤廃を前提としないのなら交渉参加する」ことと同義である。そして、「聖域なき関税撤廃を前提とする」という条件は、一つでも「反例(例外)」を挙げれば否定出来るもの。その際、「反例」として挙げられたものの重要度は関係がない。

「今までずっと事前協議を行っています。その事前協議の中で、様々な感触も得ていますよ。でもその中において、私は、日本の代表として米側のトップのオバマ大統領との間の首脳会談においてこの我々の約束、国民との約束を違えることにはならないという感触を得ることが出来るかどうか、が重要な点であります。その感触を得ることが出来た後にですね、様々な影響等を考えて、参加するかどうかという最終的な判断を私はしたいとそのように思っております」

衆議院予算委員会における冒頭の小泉進次郎議員の質問に対して、このように答弁した安倍総理。この答弁のポイントは、オバマ大統領による「コミットメント(確約)」ではなく、安倍総理が感じる「感触」である点。日米首脳会談において、安倍総理がオバマ大統領から「反例」を一つでも挙げられる「感触」を得られれば、論理上、安倍総理には「国民との約束を違えることなく」、「聖域なき関税撤廃を前提としないから交渉参加する」という道筋を開けることになる。

TPP交渉参加の議論において気になる点は、「聖域」、言い換えれば「品目」に目が向けられ過ぎている点。「聖域」と同様に重要なのは、「経済連携した国の間で投資に関して不利益を被った場合、国や投資家が相手国に訴訟を起こせる権利」を定めている「ISD条項」などを含む「毒素条項」、つまり、「内容」である。

「品目」の議論は一つでも「反例(例外)」を挙げれば「聖域なき関税撤廃を前提としない」という論理展開が可能かもしれない。しかし、2012年3月に発効した米韓FTAに盛り込まれている12項目に及ぶと言われる「毒素条項」に関して「聖域」を設けるか否かの議論が余りにも少ないという「感触」は拭いきれない。

実際、米韓FTAが発行から僅か8か月後の昨年11月。米投資ファンドのローンスターは「ISD条項」に基づき、韓国政府を相手取り、 2012年の韓国外換銀行売却に関連し、韓国政府 の対応により損失が発生したと主張し、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を提訴している。

日本でのTPP関連報道は、「聖域=品目」に偏り過ぎている。これは、日本がTPP交渉に参加していないことによる情報不足から来るものなのか、反対派である「農業」や「医療」を、国民に分かりやすい「抵抗勢力」に演出するための賛成派による策略なのかは定かではない。

「聖域なき関税撤廃を前提とする限り交渉参加しない」という公約を掲げた自民党が、「聖域なき関税撤廃を前提としていないので交渉参加する」方向に舵を切ることが明らかになった以上、今後は「賛成派」「反対派」に色分けすることよりも、交渉内容自体に議論の軸足を向けて行くべきである。
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