「危険運転致死傷罪」は「無免許運転の勧め」?~ 「無免許」よりも、免許を持った「未熟運転」の方が罪が重くなる?

「被告に対して求刑通り処断刑の上限をもって不定期刑の上限とすることは事故の重大性を十分考慮してもなお躊躇せざるを得ず、懲役8年をもって上限とするのが相当であると判断した」

驚きの判決である。京都地裁は19日、昨年4月、京都府亀岡市で集団登校中の小学生ら10人が無免許運転の車にはねられ死傷した事故で、無職少年(19)に懲役5年以上8年以下の不定期刑を言い渡した。

この判決に対しては、「刑が軽すぎる」という意見が大半を占めているようである。法律の専門家ではない筆者には、量刑に関して軽々に断ずることは出来ないが、報道される判決理由等を見る限り、この判決に至るロジックには大いなる疑問がある。こうした疑問のあるロジックによって導き出された「5年以上8年以下の不定期刑」という今回の量刑を、多くの人が適切な判決だとは感じないのは当然のことである。

この裁判は、被害者遺族側が、より罪の重い「危険運転致死傷罪」の適用を望んだのに対して、検察側が「自動車運転過失致死傷罪」を適用した時点から、市民感覚からずれ始めていた。検察が「危険運転致死傷罪」の適用を見送ったのは、構成要件に「未熟な運転」は含まれているが、「無免許運転」は含まれていないという条文上の問題と、「危険運転致死傷罪は、事故の加害者に重罰を科すため、範囲を厳格にとらえるべきだ」という現行法上の考え方を重視したからだったようである。

蛇足であるが、山口県警察のHP内の「危険運手致死傷罪」を紹介するページでは、「危険運転致死傷罪が適用される行為(例) 」として、 「無免許などのため、コントロールできないのに車を走行させる」ことが挙げられている。
山口県警察

「少年は無免許運転を繰り返し、運転技能があったとみられる」と京都地検に判断され、「危険運転致死傷罪」の適用が見送られ、裁判でも「常習的な無免許運転が事故を招いた点で無関係ではないが、事故原因の居眠り運転との因果関係はない」と判断された。
「事故の加害者に重罰を科すため、範囲を厳格にとらえるべきだ」とする法の精神は理解出来るものの、無免許運転を繰り返せば運転技能があったとみなされ、「危険運転致死傷罪」の適用を免れるという論理構成は、市民感覚からして本末転倒である。

こうした論理構成が成り立つのであれば、無免許運転の常習犯より、正式に免許を取得している運転が未熟な人の方が重い罪を背負う可能性があるということ。これでは、「危険運転致死傷罪」の存在が、「無免許運転の勧め」になってしまう。免許の取得が「運転技能があること」の唯一の証明手段でなければ、免許制度など成り立たない。

この事故から4カ月余りが経過した昨年9月、滝実法相(当時)が法制審議会に罰則の整備を諮問したが、法務省は今年1月、「無免許が人の死傷に関して直接の原因とならない場合がある」などとして、「危険運転致死傷罪」の対象に「無免許」を加えることを見送る方針を固め、法制審の部会も2月に取りまとめた要綱案で追認している。

民主党政権の鬼門でもあった法務大臣が、罰則の整備を法制審議会に諮問したにもかかわらず、自民党政権になって「危険運転致死傷罪の対象に無免許を加えることを見送る方針」が決定されていたというのは非常に残念なこと。野田政権を追い込みながらも自民党総裁選で敗れ、すっかり影の薄くなってしまった谷垣法相。アベノミクスに倣い、「危険運転致死傷罪」に対しても「大胆な見直し」をしてもらいたいものである。

「無免許運転=危険運転」というのが、通常の市民感覚であり、「危険運転致死傷罪」が「無免許運転の勧め」になってしまいかねない状況を放置することは許されない。
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